王都へ
本日はリカさんの部屋にベッドが持ち込まれ、そこで寝ることになった。
昨夜より1人増えたが、今更1人増えたぐらいでどうなる俺ではない。
というか、エンシェントヒューマンに進化してから、性欲も増したような気がするんだよな。
なにせ6人相手にしても、全然余裕だからな。
もっともそれは、エンシェントフォクシーに進化してるプリムも同じみたいで、最後まで起きてるのはだいたいプリムだ。
よく全員から責められてるから、ヘロヘロになることも多いんだが。
「それじゃ大和君。王都までよろしくね」
「と言っても、行きはグランド・ハンターズマスターのトラベリングですから、特に護衛が必要とも思えませんけどね」
「こういうのは気持ちの問題じゃないかしら?」
王都に向かうのは10時だが、既にあちらでは、オーダーズギルドが手ぐすねを引いて待っている。
護送相手が相手だから、Sランクオーダーも多いって話だな。
今回王都に向かうのは、俺達ウイング・クレスト、リカさん、アプリコットさん、ユーリアナ姫、護衛のエスコート・オーダー、そしてオーダーズマスターのレックスさんとイリスさんだ。
レックスさんとイリスさんは報告が終わり次第フィールに戻ることになっているが、その際の足はワイバーンの予定だとか。
レックスさんはオーダーズマスターとして、アライアンスのリーダーとして報告をしなきゃいけないんだが、イリスさんはレベル50を超えてしまったため、一度王都に行かなきゃいけないらしい。
望むならロイヤル・オーダーになることも出来るそうだけど、イリスさんの夫はフィールにいるし、しかもバトラーズマスターのオルキスさんもその人の奥さんだから、さすがにフィールから離れることはないだろうが。
「そんなもんですかね。まあ、帰りは獣車だし、その時はしっかりと護衛しますよ」
いつフィールに戻れるかは分からないから、帰りは獣車を使って、陸路を進むことになっている。
さすがにそこまで、グランド・ハンターズマスターに頼るわけにはいかないからな。
俺かプリムがトラベリングを使えるようになれば解決するんだが、無茶苦茶難易度が高いから、全然使えそうな気がしないんだよなぁ。
「おはようございます、大和様」
そうこうしてると、アーキライト子爵の獣車に乗って、ユーリアナ姫もやってきた。
レックスさんやイリスさん、ミューズさん達エスコート・オーダーも一緒だ。
「おはようございます、ユーリアナ殿下」
「大和様、以前から言ってるように、そのような他人行儀な呼び方はお止め下さい」
そうなんだよなぁ。
前から愛称で呼んでくれって言われてるんだが、俺はいまだに呼べてないんだよ。
「……それは正式に、陛下から認められたらってことで」
その度にそう言って逃げております。
「確かに私はまだ妻、いえ、婚約者ですらありませんから、仕方ありませんか。ですがお父様に認められて、正式に婚約者になることが出来ましたら、愛称で呼んでくださいね」
そしてその度に、そう切り返してくるユーリアナ姫。
そりゃ正式にそうなったら、愛称で呼ぶことぐらいしますともさ。
「ユーリアナ殿下も来られたし、これで揃ったわね」
マリアンヌ王女、サーシェス、バルバトスは、護送用の獣車に乗せられている。
獣車を引いてるのはレックスさんとイリスさんが契約してるバトル・ホースだが、王都に着いてすぐに引き渡されることになってるから、獣車はレックスさんがストレージに回収し、バトル・ホース達はフィールまで送還されることになっている。
従魔の召喚、送還魔法って、マジで便利だよな。
「では、行くとするか」
昨日渡した
初めて見たが、トラベリングって
イークイッピングを含むいくつかの魔法もそうなんだが、ステータリングから使うと詠唱する必要もないし、確実に使えるから便利なんだよ。
多分トラベリングだと、行った事のある街とかが記録されて、それを選べばすぐに転移出来るんじゃないかと思う。
街には結界があるから、トラベリングでも入れない。
だけど従魔の召喚、送還が可能な場所はどの街にも必ずあるし、そこならトラベリングも使えるそうだから、今回もその場所の1つ、王都の牧場に転移することになっている。
その牧場に、俺達は魔法陣を通って転移した。
ここが王都フロートか。
「王都の牧場だけあって、ラグナルド騎獣牧場より広いな」
「そりゃ王都だしね」
「人の数は、フィールとは桁違いですから」
確かにプリムとミーナの言う通りか。
「お待ちしておりました。お帰りなさいませ、ユーリアナ殿下」
全員が魔法陣を通り抜けると、オーダーが迎えてくれた。
「ただいま戻りました、グランド・オーダーズマスター。聞いていると思いますが、罪人はあの獣車です」
「はっ」
グランド・オーダーズマスター トールマン・ブレイアルスが手を上げると、一斉にオーダーが獣車を取り囲み、グランド・オーダーズマスターと同じ鎧を着たオーダーがドアを開け、マリアンヌ王女達3人を獣車から出した。
「グランド・オーダーズマスター、罪人は3名、ライブラリーの確認も終わりました」
「わかった。では総本部までは、罪人用の獣車で運ぶ。連れて行け。ああ、アソシエイト・オーダーズマスターは残ってくれ」
「「「はっ!」」」
グランド・オーダーズマスターの命令で罪人用獣車に乗せられたレティセンシアの3人は、オーダーが脱走しないようにしっかりと見張りながら、オーダーズギルド総本部まで連行された。
というか罪人用獣車って、荷台と大差ないのな。
昔、市中引き回しの刑ってのがあった気がするが、あんな感じだったんだろうか?
「ご苦労だったな、レックス。ミューズもユーリアナ殿下の護衛の任、よく果たしてくれた」
「はっ、恐縮です」
「無事に王都までお連れすることが出来ました.。とはいえ道中で、部下を5名も失ってしまいましたが……」
レックスさんとミューズさんは、グランド・オーダーズマスターに報告してる最中か。
レックスさんとしては一安心だが、ミューズさんとしては忸怩たる思いだろうな。
「報告は受けている。ご遺族には私から伝えてあるが、遺体はお前からお返ししてくれ」
「はっ……」
「それとレックス、彼女は?」
「はっ、フィール支部のオーダー イリス・セルヴァントです。先日アライアンスで出陣したのですが、その際に活躍し、レベル52になったため、今回連れてくることになりました」
「お初にお目にかかります、グランド・オーダーズマスター。オーダーズギルド・フィール支部所属、イリス・セルヴァントと申します」
自己紹介するイリスさんだが、当初の予定じゃイリスさんは来る予定じゃなかったからな。
「レベル52だと?それにアライアンスとは……。いったい何があった?」
「簡単な報告書は用意してありますが、このような場所でお話出来ることではありません。いえ、陛下のお耳にも入れる必要がありますので、アライアンスの報告につきましてはその際にさせていただきたく」
そう答えるレックスさんだが、グランド・オーダーズマスターは訝し気な顔になり、眉間に皺を寄せている。
「この場で報告出来ないとなると、それほどの存在がいたということか。ということはレックス、お前も参加したのだな?」
「はっ、アライアンス・リーダーとして参加致しました。その際、私のレベルも上がり、現在は51です。またミューズ・クーベルをはじめとしたエスコート・オーダーも名乗りを上げてくれたため、3名が参加し、いずれもレベルが上がっております」
「事実か、ミューズ?」
「はっ。僭越ではありますが、そのアライアンスにおいて、私はレベル56となってしまいました」
ミューズさんのレベルを聞いて、さらに大きく目を見開くグランド・オーダーズマスターとアソシエイト・オーダーズマスター。
驚くよな、そりゃ。
「まさか……私達のレベルを超えてしまったというのか?」
「レベルだけは、ですが」
「いや、レベルだけでも喜ばしい。なにせ最近は、私達のレベルを超えるとなると、ハンターぐらいしかいなかったからな」
オーダーが魔物と戦うことは、滅多にない。
だからレベルに関しては、ハンターの方が上になることが多い。
実際Gランクハンターの平均レベルは53だが、オーダーは51らしいからな。
「そういうあなた方も、オーダーの手本となるために、もう少しぐらいレベルを上げても良いのではないですかな?」
「これはグランド・ハンターズマスター。この度はお手数をおかけ致しました」
そこにグランド・ハンターズマスターが話に割って入ったが、途端にグランド・オーダーズマスターとアソシエイト・オーダーズマスターが頭を下げた。
「頭を上げてくだされ。もとを糺せば、ハンターズギルドの不祥事なのですからな」
「ですがヘリオスオーブ最古のエンシェントクラスであり、最高レベルのお方に無理をお願いしたことは事実です。本当に感謝致します」
「確かにワシは彼らよりレベルは上じゃが、実際に戦えば、間違いなく負けるでしょうな。彼らにはそれだけの実力があるし、証明もしてしまっている」
そう言って俺とプリムに視線を向けてくるグランド・ハンターズマスター。
いや、巻き込まないでくれますかね?
「話には聞いていますが、彼がエンシェントヒューマンの?」
「もう1人は……プリムローズ様!?」
あー、さすがにグランド・ハンターズマスター、アソシエイト・オーダーズマスターともなると、プリムと面識があるのか。
「来られると聞いてはいたが、本当だったとはな。レックス、プリムローズ様の件も陛下に直接、ということだな?」
「はっ。政治的な問題もありましたので、報告することが出来ませんでした」
「だろうな。その件の報告がなかったことを問題にはしないが、陛下とともにじっくりと聞かせてもらうぞ?」
敬礼で返すレックスさんだが、オーダーズギルド総本部に報告してなかったってのは初耳だったな。
確かに手段も余裕もなかったけど、それでもアライアンス前にグランド・ハンターズマスターが王都に行ってくれたんだから、そこで頼んでたと思ってたぞ。
まあプリムが生きてたってことは、マジで政治的にもデカい問題だから、迂闊に報告出来なかったっていうのも分かるが。
「私からは以上だ。ミューズ、エスコート・オーダーを連れて総本部に戻り、体を休めるといい。イリスは、レックスとともに登城してもらうことになるな。アソシエイト・オーダーズマスター、いや、ディアノス、私は先に戻るが、せっかく息子と娘が帰って来たんだから、少しぐらいはゆっくりしてくると良い」
「ありがとうございます」
そう言って牧場から出ていくグランド・オーダーズマスターだが、アソシエイト・オーダーズマスターは残っている。
あー、ミーナのお父様であられますね。
「父さん!」
「ご無沙汰しています」
「ああ、よく帰ってきた、レックス、ミーナ」
再会を喜ぶミーナとレックスさんだが、俺はめさめさ緊張してきております。
「手紙は受け取っている。ミーナ、Cランク昇格、おめでとう」
「ありがとうございます」
「そして、婚約したとのことだが、相手はハイヒューマンではなかったのか?」
「それなんですけど、その方はエンシェントヒューマンに進化されたんです。その、あちらにいらっしゃる大和さんが、私の婚約者です」
そういってあたくしめを紹介してくださるミーナさん。
すごーく嬉しそうな顔をされておられまするのね。
というか、お父様がこちらに来られてるんですけど!?
「君がヤマト殿か?」
「は、はい!ヤマト・ハイドランシア・ミカミと申します!」
「ハイドランシア?」
あー、俺が結婚してることは伝わってるはずだが、プリムのことは伏せてって頼んであったから、相手がプリムとまでは知らないんだった。
「あたしと結婚してるってことよ。お久りぶりです、ディアノスさん」
「お久しぶりでございます、プリムローズ様。無事にアミスターまで逃れていただけではなく、ご結婚までされていたとは驚きました。というより、プリムローズ様はご自分より弱い相手には興味がなかったはずでは?」
プリムも挨拶しているが、確かに面識があるとは聞いている。
そして、ディアノスさんの疑問もよく分かる。
俺だって決闘で何とか勝てたから、こうやって結婚出来たんだしな。
「ええ。だから大和は、あたしより強いということよ。ですよね、レックスさん?」
「父さん、プリムさんの仰る通りです。2人の決闘の審判を引き受けたんですが、あれ程の戦いは見たことがありませんでした」
「それ程か。是非とも見てみたかったものだ」
審判をしてくれたレックスさん、立ち会ってくれたローズマリーさんやグラムからも、見応えあったって言われたからな。
「なるほど、つまり彼はエンシェントヒューマンというだけではなく、プリムローズ様も認められた男ということですか」
「それだけじゃありませんけどね」
「と、申されますと?」
「お久しぶりです、ディアノス殿」
プリムに促されて、リカさんも前に出る。
「これはフレデリカ侯爵。ご機嫌麗しく」
「実は私も、彼と婚約したのよ。もちろんプリムさんやミーナ、そしてもう1人の婚約者、フラムの許可を得てね」
「は、初めまして、フラムと申します!」
そしてフラムも、自己紹介をしている。
「これはまだ決定ではありませんが、ユーリアナ殿下も彼の婚約者となるかもしれません」
「殿下も、ですか……」
「それだけの功績が、彼にはありますからね」
どんどんハードルが上がってってる気がするな……。
既にハードルじゃなく、棒高跳びのバーになってないか、これ?
「そこまでとなると、逆にミーナでは釣り合わない気もしますが……いいのか?」
「はい。色々と覚悟は決めてますから」
「というか、ミーナがいてくれないと、あたし達も困るのよね」
「そうなのよね」
うん、確かにミーナ、そしてフラムがいるから、俺はフィールを拠点に出来てるようなもんだ。
それ以前にミーナのことだって好きなんだから、釣り合うとか釣り合わないとか言われても、外野の意見なんて知ったこっちゃねえ。
「釣り合うとか釣り合わないとか、そんなことは関係ないです。俺はミーナが好きだから、こうして婚約者になってもらったんですから」
それだけは、しっかりと伝えておかないといけない。
「それの言葉が聞ければ十分だ。大和殿、娘をよろしく頼みます」
「は、はいっ!」
なんかみんなのアシストもあった気がするが、ともかくこれで、お父様への挨拶は終わったって考えていいんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます