ステータリングの付加価値
アビス・タウルスを討伐したということで、またフレデリカ侯爵の屋敷に呼ばれた俺達だが、今回はけっこう早く解放された。
プリムがエンシェントフォクシーに進化したことは、さすがに驚かれたけどな。
もっともフレデリカ侯爵に……
「ユーリアナ殿下の許可も得られたし、あなたの子供を産ませてもらいたいんだけど、いいかしら?」
なんて真顔で聞かれたから、すげえ返事に困ったな。
プリム達は俺が望むなら構わないって言ってたが、それもそれで頭が痛い。
とりあえず、同じシングル・マザーという言葉ではあっても、地球とヘリオスオーブじゃ意味が真逆だってことを伝えて、気持ちの整理をするための時間を貰うことにしてきたが、マジでどうしたらいいのかわからん。
確かリベルターに、レイドのメンバー全員を嫁にして、さらに多くの女をシングル・マザーにしたハンターがいるんだが、マジでその人のアドバイスを聞いてみたいぞ。
それはともかくとして、結局は俺の問題だから、ヘリオスオーブで生きていくと決めた以上は、どこかで気持ちの折り合いをつけるしかない気もするんだよな。
「そうしてあげて。跡取りの問題もあるし、どうしても気になるんなら、子供が家督を継いでから結婚するって手もあるんだから」
プリムにもそう言われてるから、近日中に答えを伝えるしかないか。
実際、子供が家督を継いでから結婚するってのは、俺の頭にはなかったからな。
そんなわけでアルベルト工房に来た俺達だが、ただ遊びに来たわけじゃない。
武器の進捗状況が気になるから、最近じゃ2日に1回は来てるんだよ。
急かしてるつもりはないんだが、どうしても気になるからな。
「今日は朗報だぞ。じいちゃんが日本刀とやらの製法のコツを掴んだみたいだから、王都に行くまでには出来そうだ」
それはまさに朗報だ。
王都に行くまでまだ10日以上あるとはいえ、それまでに出来るってのはかなりありがたい。
もちろん今使ってる試作翡翠合金刀も良い刀だし、今日もアビス・タウルスを倒してるのに、魔力劣化や魔力の淀みも感じないし、それどころか細かい刃毀れの修復も問題ないから、エンシェントクラスでも問題なく使えるってのが分かってきた。
「なるほどな。だけどやっぱり、一般的なハイクラスの意見ってのも欲しいとこだな」
だがエドからすれば、俺とプリムは特殊枠になっているため、参考意見にはなるが、試験評価の対象にはなっていないらしい。
俺はエンシェントヒューマンだし、プリムもエンシェントフォクシーに進化したから、何も言えないのが微妙に辛い。
「それなら、ホーリー・グレイブに頼めば良いんじゃない?」
「そうですね。
ルディアとフラムが、ホーリー・グレイブに合金の品評依頼をしてみたらどうかと提案してきたが、確かに悪くはない気がする。
特に
ホーリー・グレイブは使ってる武器も各々違うから、品評はしやすいんじゃなかろうか?
「それは良いな。それにホーリー・グレイブはマナ様が懇意にしてるレイドだから、十分に信頼できる。さすがに俺達は手が回らないが、そこはクラフターズギルドに任せればいいだろうしな」
確かに、エドやリチャードさんが対応する必要はない。
それにクラフターズギルドだって、実際に使ってみたいだろう。
今は
「それなら、後でクラフターズギルドに行ってみるか?」
「そうするか。っと、それより聞きたかったんだけどよ、俺とマリーナ、フィーナのコートも、ウインガー・ドレイクの革を使っていいのか?」
「当然だろ。まだ十分在庫はあったはずだから、足りないってことはないだろうしな」
俺達が着ているクレスト・アーマーコートは、ユニオンの標準装備と決まっている。
だからクラフターのエドやマリーナ、フィーナの分も仕立てるになっているんだが、そろそろウインガー・ドレイクの革の在庫が怪しくなってきてるから、エドが確認してきてるんだろう。
「在庫は十分あるけど、あとどれだけ使うことになるか分からないからね」
そんなことをマリーナが言ってくるが、お前らの分を仕立てたら、当分は必要ないと思うんだが?
「ユーリ様がウイング・クレストに加入するのは、ほとんど決定だろうが」
「あー、まあ、確かにそうなんだが、そうなると足りないってことか?」
「じゃなくて、王都に行ったら大和は新しい女が増えるだろうし、ラウスだってそうなる可能性が高いから、余裕を持ってストックしときたいんだよ」
そのセリフは聞き捨てならないが、ストックを持っておきたいって考えには賛成だ。
俺はエンシェントヒューマンだから、王都に行けば貴族に言い寄られる可能性が高いと言われている。
ユーリアナ姫との関係が確定すれば減るだろうが、それでも完全になくなることはないだろうとも言われてるが。
だが、ある意味じゃ、俺より凄いことになると思われているのがラウスだ。
ラウスは俺の弟子ってことになってるし、まだ13歳だっていうのにレベル30近くまで上がってるから、将来性はかなり高い。
プリムが13歳の頃は、レベル30までいってなかったって話だし、成人前にレベル30を超えた人は全員がPランク以上になってるそうだから、これだけでも凄いってのがわかる。
さらには同じレイドってことで俺との縁もできるわけだし、恋人もレベッカだけだから、貴族からしたらかなりの優良物件に見えるみたいだな。
そういや今日のスカイダイブ・シャーク狩りで、またレベルが上がってるんじゃなかろうか?
聞いてみるか。
「ラウス、今日はレベル上がったのか?」
「え?えーっと、その……はい、レベル30になりました」
レベル30近く、じゃなくてレベル30になってたか。
他のみんなも、1つずつレベルアップしてたみたいだな。
プリムもレベル63になって、さらに進化できたが、これからはペースが落ちる気がする。
俺もレベル66になったが、上がったのは久しぶりだからな。
「あ、そうそう。大和、刻印具貸して?」
突然、マリーナがそんなことを言ってきた。
今度は何が見たいんだ?
「構わないが、今度はどんな武器や防具なんだ?」
「そっちじゃないよ。大和の世界の色がどんなのか、それが知りたいんだ」
色?
エドも首を捻ってるが、俺の世界の色もヘリオスオーブの色も、意味は同じだったはずだが?
「ああ、ごめん。説明が足りなかったね。実はカラーリングって、ステータリングと連動させて、自分が使った色を登録しておくこともできるみたいなんだよ」
色の登録ってことは、つまり今までは自分の感覚や見本を見ながら染色してたのが、これからはステータリングに登録した色を読み出すことができるようになるから、手間が大幅に減るとか、そんな感じになるのか?
「まさにそうだよ!」
嬉しそうだな、マリーナ。
登録できる色の数も多いみたいだから、今まで使ったことや見たことすらない色も、記録さえしておけば使えるわけだから、確かに便利だよな。
自分で奏上しといてなんだが、すげえぶっ壊れ魔法じゃないか?
「わかった。と言っても刻印具でわかる色にも限りがあるし、名称とかも俺の世界のものだけど、それはいいのか?」
俺の刻印具に記録されてる色名は、和名も多いからな。
「大丈夫だよ。自分の分かりやすい名前で登録できるみたいだから、むしろあたしとしても、そっちの方がありがたいかな」
そういやイークイッピングも、カテゴリー名は変えられたな。
カテゴリー1に試作翡翠合金刀、クレスト・アーマーコート、レザー・グローブ、ミスリル・ソルレットを登録してあるが、俺も何か考えてみるかな。
今更ではあるが、俺達のクレスト・アーマーコートは、ウインガー・ドレイクの革を使った、基本デザインは同じ膝下丈のロングコートだが、装甲は個人の好みが反映されているため、ぱっと見じゃ別物に見える。
男はズボン、というかトラウザー、女はスカートを標準にしているが、こっちも当然、ウインガー・ドレイクを使っているぞ。
俺のアーマーコートは瑠璃紺色で、胸部から腹部を覆う装甲と大きめの肩甲を装備している。
見た目は鎧に見えなくもないから、腹部を装甲で覆うのはやめようかと思ったんだが、トータルデザインで見るとおかしくなるから断念した経緯があるが、これはこれで気に入っている。
あとトラウザーも、
プリムのアーマーコートは緋色で、肩甲は翼を模したデザインになっている。
胸甲は俺と異なり胸だけを覆っているが、その代わりとばかりに腰部にスカート状の装甲を配している。
翼族の象徴でもある翼は魔力で作り出されているので、翼用のスリットはないが、プリムに言わせると、ちゃんと背中から、具体的には肩甲骨の辺りから生えてる感覚はあるそうだ。
スカート膝下丈だが、色は白を基調としていて、こちらには装甲はない。
フラムは露草色っていう、露草の花にちなんだ明るい薄青色が気に入ったみたいで、アーマーコートもこの色で染められている。
弓術士らしく腰に予備を含めて2つの矢筒を吊るすことができるベルトがあり、肩甲は弓を構えることを考えて、左側が大きく上腕部や左胸まで覆っている。
右側の肩甲は小さいが、それでも右胸はしっかりと覆っているため、胸甲の代わりにもなっている。
スカートは脛の真ん中ぐらいまであるロングスカートで、紺に近い色になっている。
この場にはいないが、ミーナのアーマーコートも紹介しておく。
白百合色っていう少し黄色がかった白を基調としていて、肩甲は騎士みたいなデザインで付けられているが、大きいは必要最小限だ。
胸甲は腹部から腰部まで覆っているから、見た目は完全に鎧に見える。
スカートも白百合色に染められていて、丈は膝下だから、見た目は完全に麗しの白騎士様だな。
リディアは白藍色っていう、淡い水色をした色を選んでいる。
装甲は動きを妨げないような感じの肩甲、胸甲だけだから、かなり身軽そうだ。
スカートは膝下丈で、色合いは少し濃くなっている。
ルディアが選んだ色は銀朱色。
胸甲、肩甲はリディアよりさらに小さいが、腰の周りにも装甲を配している。
スカートは太ももの真ん中ぐらいまでしかないキュロットスカートだが、スパッツと一体化しているため、安心して闘器を使えるデザインになっている。
ラウスのアーマーコートはミーナに次ぐ重装備になっているが、デザイン性は真逆だ。
装甲にはウインガー・ドレイクの牙や爪が随所に散りばめられていて、刺々しいデザインになっているんだからな。
色が紺桔梗色っていうのもあるが、暗黒騎士っていう見た目が一番近い。
最後にレベッカだが、珊瑚色のアーマーコートは同じ弓術士のフラムとは異なり、胸甲以外は左右対称だ。
胸甲はにフェザー・ドレイクの翼をあしらった意匠があるが、左側が大きく右側が小さい。
肩甲は弓を構えた際に邪魔にならないよう、最小限の大きさだ。
さらに矢筒は、近接戦の邪魔にならないように背負うことになっている。
その後、日が沈むまで、マリーナにカラーリング設定に付き合わされることになったが、俺が思ってたよりも種類があって、けっこう驚いた。
マリーナは100種類近くの色を登録できたから、かなりご満悦だったが、俺としても面白かったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます