16.文化祭レビュアーズ:後編 7


 あまりのビジュアルに思わず噴き出すふたり。


「ははは、これは、ああ、すまない、はは、そういえばキミも図書委員だったね、いやあははは」


「新田さんさぁ、ちょっと笑い過ぎだって、気持ちはわかるけどさぁ」


 メイド男子がおっとりと抗議する。


「すまないね、ちょっとあまりにもインパクトがあったものだから」


「いやぁ俺は反対したんだけどね?」


 大きな肩をすくめて視線を向けた先には彼ほどではないにせよ周りから頭ひとつ身長の抜きん出た女子生徒の姿。


「絶対メイドカフェやりたい一部男子とやるなら男子も全員参加でクラシックスタイルは譲れない女子全員が意地の張り合いで引かなくてさぁ」


「男子は全員じゃないところがミソだね」


「女子はやりたくないわけじゃないってところもね。おかげさまでこのざまだよ」


「そりゃあご愁傷様だ」


 同情の笑みを浮かべてコーヒーをひと口啜った新田が目を丸くする。


「これは美味しいな。不二くんも飲んでみたまえ」


「ええ?珍しいですね」


 普段コーヒーの味の話なんかしないですよね?そう思いつつ不二もカップに口をつけ、おお、と感嘆を漏らす。


「フタバでもインスタントや缶コーヒーよりはずっと美味しいですけど…もうひとつレベルが上っていうか、詳しくはわかりませんけど、なんか凄いですね」


 ふたりの視線を受けてメイド男子が頷く。


「実は学校近くの個人経営の喫茶店から応援に来て貰ってるんだよねえ。プロの味だよ。ちなみにケーキ類は家庭部から融通して貰ってるよ。うちは本当にメイドが給仕をしてるだけさ」


「家庭部はともかく喫茶店からの応援なんてよく通ったね」


 新田の疑問にメイド男子が声を潜めて答える。


「なんでもそこのウェイトレスさんが事情があって学校に通ったことがないとかでさぁ、イベントの手伝いでもいいから学校の雰囲気を経験させてやりたいってマスターから頼まれてね。生徒会に直談判さ。まあ、事情を話したら生徒会長も協力してくれて助かったよ」


「なるほどね。良い話じゃないか」


「そう言って貰えるとありがたいなぁ。まあそんなわけで俺はまだ仕事もあるから、ごゆっくりどうぞ」

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