16.文化祭レビュアーズ:後編 6
「恋愛悲劇とはなんだったのか。新訳とか斬新な解釈じゃなくて完全に有名作品のパロディバラエティだった。悪く言えば原作を流し読みしただけのタイトルにあやかりたい脚本家が作った実写映画のような酷い内容だったが、まあ、面白いかつまらないかだけで言えば面白かったよ」
「適当な理由を付けて有志の参加者に肉体系バラエティを強いる、ある意味文化祭的な舞台でしたね。一番やる気の見えないメイド長が一番出番が長かった気がします。あとろみおのがいねんがみだれる」
ふたりは演劇の終わった体育館を後にして図書室で行われているメイドカフェへとやってきた。
なかなか盛況だけれども並びがあるわけでもなく入ってしまえば席を空けろと急かされもしないようなので快適そうだ。
メイドカフェとはいえその服装はミニスカートや胸を強調したものではなく、露出の少ないクラシックスタイルだった。元が図書室なこともあって静かな雰囲気を保っている。
「もうちょっときゃいきゃいした感じの出し物かと思ったけどなんか別の意味で本格的だねえ」
「そうですね。でもまあ良かったんじゃないですか?先に回った出し物がアレとアレでしたし…」
「ああ…それもそうだね」
プロレス同好会と演劇部の出し物を思い出して生ぬるい笑みを浮かべる新田。
そこへ大きな人影がやってきてコーヒーとケーキをテーブルに並べる。
「お待たせしました。ホットコーヒーといちじくのチーズムースです」
「ありがとう」
そういえば図書委員にはやたらと背の高い女子がいたけど、こんな野太い声だっけ?と思って視線を向けると、そこには女子ではなく、熊のような巨体の男子生徒がメイド服を着て立っていた。
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