14.逢瀬は成れど穏やかならざり 2
新田は夏の間に買った水着、白地に藍色の花柄がたくさん付いたタンキニ姿だった。トレードマークともいえる紺色のフルリムセルフレームはそのままに長い三つ編みは巻き上げられて団子状にされている。
そして手にはひまわり柄の浮き輪を抱えていた。けっこう大きい。
「改めて生で見ると下手にセクシーさやスポーティさを求めない、いかにも先輩らしいチョイスですね」
「生で見るとか響きの怪しい言葉を選んで使うんじゃない。まあ肉体的にも精神的にも挑戦者魂溢れる選択は私がやるようなことじゃないというかたぶんそういう水着は似合わない」
「いやいや、マイクロビキニとか存外似合うかも知れませんよ」
「そんなものが見たいのかい?キミは」
「見たいかと言われれば一回くらいは見たいですねその恰好でプールに来るって言われるとちょっと遠慮して欲しいですけど」
「そうだろうそうだろうまあプール以外で水着姿を見せる状況があるとは思えないけどね」
「写真送ってきましたよねその水着の」
そう、生ではない状況でならこの水着姿はすでに一度見たことがあったのだった。“生で”と不二が言い回した理由だった。
「あのときの話はやめたまえ。テンパっていたというか色々あったんだよ」
「つまり追い込み次第でマイクロビキニ画像が入手可能ということですね」
「ああ、そうだね。それまでキミが生きていられればの話だけれど」
新田の浮かべたにこやかな笑顔が怖い。
「あーいえ、ちょっとまあ、その、調子にのりました。はは」
「どちらにせよもう季節外れだ。水着の追加は無いよ」
「はい、その辺は、ええ…心得てます」
少し項垂れる不二だった。
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