2.その眼鏡獰猛につき 2

 創作活動に興味があったかと聞かれれば迷いなくまったくないと断言できる。それでも不二が文芸部に足を運んでみようと思ったのはやはり部活紹介の一件があったからに他ならない。


 部長の代理だと言っていた新田はそれなりに活動しているから選ばれたのだろうか。幽霊部員だとしても今日の今日ならさすがに部室にいるのではないだろうかと考えた彼は放課後になってしばらく迷ったあと、結局文芸部室へと足を運んだ。

 お世辞にも良い印象とは言い難い先輩だが、なぜ会ってみたいと思ったのかは不二自身もいまいちわかっていなかった。思い返してみるとただの怖いもの見たさであったような気もする。


 まだ早い時間だからなのかいつもこうなのか実習棟は全体的に静かで、三階は特にひとの気配を感じさせなかった。静かに打ち込めるという売り文句のほうに偽りはないようだ。

 と、不二がそう思ったのも束の間、廊下の先から何やら話し声が聞こえてきた。男女が言い争っている、いや、よく聞けば語気が荒いのは男性だけのようだが、とにかくなにか揉めているようだ。

 体育館での緊張感を思い出し不穏な空気を感じた不二は半ば無意識に足音を忍ばせながら進んでいく。

 騒ぎの元はどうやら文芸部室らしい。部屋の前に立ち扉を少しだけ開いて中を伺うと、そこには四人の姿が見て取れた。もう少し細かく言うと、ひとりの女生徒を三人の男子生徒が取り囲むように立っていた。


「だからよぉ、イッコうえってだけで偉そうなンだよ!」


 その中のひとりが大きな音を立てて、むしろ大きな音が立つように机を蹴り飛ばした。

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