12.下心ある拾い物 2
「い、行きましょう先輩」
「ああ、わかっ、て、ええ!?」
不二は新田の手を取ると振り返らず足早に歩き出した。
その場を離れたい一心だったのだろう。けれども慌てたのは新田である。
「ちょ、ま、え、えええっ!?」
構うことなくズンズン歩いていく後輩に半ば引きずられるようにその場を離れていく。
少女は微動だにせず、微塵も表情を変えず、ただふたりを、不二を見送っていた。
「待って待て待て待ちたまえ!」
小柄で細身とはいえやはり男子、その気になれば新田より明らかに力強い。
「不二くんっ!!」
一際強い呼び掛けに我に戻った不二がやっと足を止めた。
「手、手が痛いのだけれど」
「あっ!?す、すみません!!」
華奢な先輩の手を全力で握りしめていることに気付いて慌てて手を離した。
新田は握られていた手を擦りながら上目遣いに後輩を睨む。
「まったく初めてがこんな…」
「え、はい?」
「なんでもないよ!それより急に取り乱してどうしたんだい。まあ君の情緒に安定感がないのは今に始まったことじゃないけれども」
「今もの凄く不当な評価を受けた気がするんですけど」
「いいから」
「はい」
有無を言わせぬ圧力に不二は渋々話を戻す。
「最近ホラー系のサイトでこういう話を読んだんですよ。よからぬものに渡されたものを持って帰ると、そのよからぬものまで待ち帰ってしまうって話です。まあ、まさか現実にそんなことあるわけないんでしょうけど…」
そう言って振り返る不二につられて新田も振り返ると、少女はまだそこに立って、じっとこちらを見ていた。
不二がびくっとして視線を逸らす。
「なるほど」
話は理解した。ターゲットは後輩のようだし彼の意見を尊重するのもやぶさかではない。
けれども。
けれどもだ。
「ふぅむ」
では何故少女はあんな明らかに不審な表情をしている?
持ち帰って欲しいならもう少し努力をするべきでは?
少なくとも足元に投げて寄越した石ころを拾うものなどいないだろう。
ならば、そもそも少女は拾われて欲しくないのでは?
「なるほど。不二くん、君はここで待っていたまえ。いいね、ここでだよ」
「え?ちょ、ま、先輩!?」
念を押すと新田は狼狽える不二を置いてひとりでスタスタ少女の前まで戻ってしまった。
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