12.下心ある拾い物 3

 夕暮れのなかで、地面に転がった小さな石を挟んでふたりが対峙する。


 見下ろす彼女と見上げる少女。

 見上げる少女は彼ではなく彼女を見ていた。


「それは確かに彼が落としたんだね?」


 彼女が聞いた。少女はこくりと頷く。


「つまり君のものではないわけだ」


 彼女が言った。少女はなにも言わない。


「だったら」


 彼女が石を拾った。少女は目を見開いた。


「私が拾っても構わないだろう?」


 虚を突かれたように少女が呟く。


「どう、して…」


「なあに」


 彼女は大きく笑みを浮かべた。

 それは不敵で、冷笑的な。


「まあ“捨てる神在れば拾う神在り”といったところだよ」


 少女はなにも言わなかった。


「私が拾ったのだからこれはもう私のものだ。落としたのが彼だとしてもね」

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