(二)

 階段を上がり二階に来きて、そのすぐ前の扉まで来て、僕はコンコン、コンコン、コンとノックした。ノックの回数が仲間であることを示す合図となっていたのだ。

 少し間を置いてから部屋から東洋人が出てきて「ご無事でしたか」と迎えてくれた。ライアン・チェン氏だった。

 チェン氏は厳密には中国系だが、彼の父親の代にこのカヘティ共和国に帰化し、彼自身はこの国で生まれ育ったカヘティ人だ。アジア人でも東洋系の顔立ちのためこの国では目立つ。そのため反政府運動には参加していても表立ってではなく、こうして裏方として協力してくれていた。ここは彼の自宅の一つで、組織のセーフハウスとしても使わせてもらっていた。


(続く)

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