(一)-2

 兵士が撃ってきた時には、近くにレコード屋のイルマ・タリエルとレストランでウェートレスをしてたエレーナ・コビアシビリもいたはずだった。しかしタリエルには銃弾二発が額に命中し、頭蓋骨を破壊され脳みそを周囲に四散させてその場に倒れた。エレーナは逃げ惑う民衆と同じように走って逃げようとしたが、流れ弾が右足のふくらはぎを貫通し転倒、そのまま逃げ惑う人たちに踏まれ、動かなくなってしまった。

 少し離れた所にいた、売れない画家のショタ・ラバーゼは周囲の人間が逃げ惑う中、手にしていたP8拳銃で数発撃って反撃していたが、敵の兵士には当たらず、逆に胸を数発撃たれて、そのまま膝から崩れ落ちた。

 僕は銃撃の中、逃げ惑う民衆の中で呆然としていると、「こっちです」と手を引っ張られた。「情報屋」のヤコブ・ナボコフという背の低い頭のはげ上がった中年男性だった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る