第124話 懸念その2

 ハンター支部から自宅に戻ったリンドウは銃の整備を終えるとシモンズの店に顔を出す。すぐにエリンとルリも店に入ってきた。3人とも新しい迷彩服を着ていて最初はカウンターでシモンズ夫婦と迷彩服の話しや雑談をしていた3人。一区切りついたところで


「ちょっと相談があるんでテーブルに移動したい」


 リンドウの言葉に頷いたシモンズとマリーは酒と料理をテーブルに運ぶとごゆっくりと言ってその場から離れていった。彼らも元ハンターだ。必要以上のことは聞いてこない。

 

 奥のテーブルに移動すると支部でのツバキとの話をするリンドウ。黙って聞いていた二人はリンドウが話し終えると


「行くとなったらこの前のメンバーよね。私はOKよ」


「確かに定期的に状況を見ておいた方が良いわね。もちろん私も行くわよ」


 エリンとルリが同意してくれてホッとする。そうしてしばらく話をしているとエリンが、


「やっぱり根本的なところをやっつけないといつまでもいたちごっこになっちゃうよね」


「そのAIの中枢ってどこにあるんだろうね」


「倒したアンテナが3方向に向いていたってのも気になるんだがな、いずれにしてもエリンの言う通り中枢を破壊しない限りはいつまでもいたちごっこが続くだろう。そして機械獣は進化していくって訳だ。だから定期的にあの場所は探索して現状どうなっているのか確認する必要があると思ってる」


 その言葉に頷く2人。彼女らも又リンドウが話した様に都市国家防衛隊はおそらく行かないだろうと思っていた。つまり自分たちの出番だと。


 そうして話が終わって3人でテーブルに座って雑談をしていると扉が開いて新しい客が入ってきた。リンドウは入り口に背を向けて座っていたので気づかないが扉を開けて入ってきた3人のお客を見てまずシモンズがあっ!と声を上げ、続いてエリンとルリが顔を上げて


「あの人、TVでリンドウのインタビューをしていたキャサリンというアナウンサーじゃない?」


 エリンの声に振り返ると確かにキャサリンが同じ職場のキャスターっぽい美人の女性2人と一緒に店に入ってきた。3人とも固いスーツじゃなくて私服だがそれぞれが見事に着こなしている。


 キャサリンは椅子に座りながら振り返ったリンドウに気づくとテーブルに近づいてきて


「こんばんは。この前はありがとうございました。またお会いできましたね」


 テーブルに座ったまま顔を上げてキャサリンを見るリンドウ


「先日は世話になった。今日はお忍びかい?」


「お忍びというのではなく普通に職場の同僚と4層にお食事に来たんですよ。そして食事が終わってからどこかお酒を飲めるところを探していたら外から見て雰囲気のいいお店を見つけたので入ってきたんです。まさかリンドウさんがいらっしゃるとは思いませんでした」


 リンドウはカウンターの中で固まっているシモンズを見てよかったじゃないかと冷やかす。そしてキャサリンに向き直ると


「いい店なのは間違いない。そしてこの店のオーナー夫婦は元Aランクのハンター、俺たちの仲間さ」


 キャサリンと連れの2人はリンドウら3人に挨拶をしてからシモンズとローズに挨拶をして別のテーブルに座った。


「リンドウのタイプじゃないの?」


 ルリが冷やかしてくる。


「やめてくれ、これ以上は体が持たない」


「とか言いながら機会があればと虎視眈々と狙うのがリンドウなのよね」


「知ってるだろ?俺は来るものは拒まずだが自分からは仕掛けない」


 エリンに言い返すと


「自分から仕掛けるのは機械獣だけね」


「そう言うことだ」


 一般の非戦闘員が店の中にいるのでそれからは差し障りのない雑談をしながら食事をし終えた3人はテーブルから立ち上がると精算をし、リンドウは軽くキャサリンに手を上げて、エリンとルリは3人にお先にと挨拶をしてから店を出ていった。3人が店を出ていくと、


「テレビで見たよりもずっとオーラというか迫力があるわね。存在感が凄い」


 キャスターの1人がキャサリンに話しかけるともう1人もそうそうと言ってから


「それにあの女性2人もAランクのタグを肩に貼ってたわよ。3人とも凄腕?」


 丁度オーダーした飲み物をテーブルに持ってきたローズが3人の話を聞いて。


「リンドウは元からあんな感じよ。無口だけど存在感は凄かった。そして一緒にいた2人、彼女らも超一流のAランクハンターよ」


 その言葉を聞いてびっくりする3人。


「あの女性2人が超一流なの?美人ですごくスタイルがいい。迷彩服を着ていなければとてもハンターには見えない。モデルさんでも十分通用するくらいじゃない」


「外見はね。確かに2人ともすごく美人でスタイルもいい。2人ともハンターの中でもダントツで人気があるわね。でも外に出ると2人とも変わるわ。私も彼も何度も見てる。彼女たちもリンドウと同じく超が付く一流のハンターね」


 やりとりを黙って聞いていたキャサリン。


「マスターと奥様も以前はAランクのハンターだったってリンドウさんが仰ってたけど一緒に仕事をしたことはあるんですか?」


「もちろん。ただその内容については何も言えないけどね」


 カウンターの中からシモンズが答える。ハンター稼業を辞めても言っていいことと悪いことがはっきりとわかっている。だからのAランクなのだ。シモンズは続けて


「リンドウがインタビューでも言ってただろう?言えないことが多いって。ここは4層でハンターの街だ。ハンターのプライベートや仕事に関してお互いに深く聞かないってのが不文律になってる。それよりせっかく来てくれたんだからたくさん飲んでたくさん食べていってくれよ」


 シモンズは憧れのキャサリンが目の前に来て一瞬舞い上がっていたがすぐに落ち着くと彼女らにここ4層では3層や2層でのやり方が全て通用するエリアじゃないんだと遠回しに話をした。3人は黙って聞いているがどうやらシモンズが言いたいことは伝わった様だ。3人は頷きそして


「そうよ。今日は仕事じゃないんだから食べましょう」


 同僚の1人がそう言うと他の2人もそうねとテーブルに置かれているお酒や料理に手を伸ばしていった。



 先に店を出たリンドウとエリン、ルリはブラブラと通りを歩いて知り合いに会うと手を上げたり挨拶をしたりしている。


「ねぇ、今日も泊まってもいい?それとも家に来る?」


 歩いていたエリンが立ち止まってリンドウを見る。


「久しぶりに邪魔するか」


 エリンの言葉に答えるとルリが


「すっからかんにしてあげるね」


「よしてくれ」


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