第115話 第2次大規模襲撃 その7

 24時間あるという休憩の内大半の時間をリンドウの部屋で過ごしたツバキ。最後はくたくたになって這う様にして部屋を出てホテルの中の自分の部屋に戻っていった。


 一人になったリンドウは砲台の射程距離まであと32時間程かと端末の時計を見て時間を確認すると大きなベッドで一人で横になるとすぐに目を閉じた。


 そうして目が覚めたリンドウは起き上がるとシャワーを浴び服を着てホテルの1階にあるレストランに降りていくとそこには迷彩服を着たハンター達が朝食をとっていた。


 リンドウを見つけて声を掛けてくる知り合いに片手をあげて応える。レストランはビュッフェスタイルの朝食で、トレイの上に食事を乗せると空いているテーブルを見つけてそこに座る。

 

 そうして食事を始めてすぐに、


「ここいいかい?」


 顔を上げると食事の乗ったトレイを持っているタツミだ。片手で正面の椅子を進めるとそこに腰掛け、


「あと24時間だな」


 と話しかけてくる。リンドウは時計を見て頷き、


「作戦が決まってる。あとはやるだけさ」


「そうだな」


 その後は二人で食事をしながらお互いの近況報告をして情報を交換しあう。



 リンドウらがホテルで朝食を食べている間、城壁では機械獣を迎え撃つ準備がおおよそ終わったいた。城壁の上や城壁の下(内側)には大量の弾薬が積まれている。


 食料や水なども準備され担当者が間違いがないか再チェックをしているところだ。


 リンドウは食事が終わるとホテルを出てB門の城壁の上の自分の担当の場所に向かう。そこに既にロングレンジライフルの弾丸と狙撃銃の弾丸が積まれているのを確認するとそのまま城壁から荒野を見る。まだ敵影は見えないが間違いなく近くまで10,000体の機械獣が近づいてきているのだ。


 しばらく城壁の上から荒野を見ていたリンドウ。そのまま城壁から降りるとホテルの部屋に戻っていった。リンドウが城壁の上に立って荒野を見ている姿を何名かのBランクやCランクが見ていたが声をかけるのが憚れるほどの強烈なオーラを放っていたリンドウ。


 結局誰とも会話をせずにそのままホテル部屋に戻ると時間をかけてライフルと狙撃銃を分解して整備し、そして再び銃を組み立ていく。


 全ての準備が終わると部屋のベッドの上で仰向けに寝て目を閉じる。そうして頭の中でこれからの戦闘のシミュレーションをする。敵がこう来たらこう対応する、こうなったらこう対応するといった様に考えられる敵の攻撃パターンに合わせて自分が対応すべき立ち位置や行動を頭の中で組み立てていく。


 今回の襲撃も100%ではないだろうが、かなりの部分は読み切っているはずだと気持ちに踏ん切りをつける。思い切りの良さもリンドウの身上だ。


 夕食を取り部屋で仮眠から目が覚めると外は真っ暗だった。時計を見ると夜の1時だ。


 ベッドから起き上がるとミネラルウォーターを飲み、そのボトルをバックパックに入れ、ライフルが入っているケースと狙撃銃を持ったリンドウは部屋を出てホテルの1Fに降りていった。


 何名かのAランクハンターがロビーにいてそこに用意されている軽食を食べたり雑談をしたりしている。


「準備は出来てる?」


 既に軽食を食べてたエリンがリンドウを見つけて声をかけてきた。


「ああばっちりだ」


 そう言って軽食をトレイに乗せてエリンとルリが座っているテーブルに座る。ルリは座った椅子の横に置いたロングレンジライフルのケースに視線を送り、


「その遠距離砲が頼りね」


「まぁこれが俺の仕事だからな」


「1,000メートルまでに何体倒してくれるの?」


 エリンの意地の悪い質問にリンドウがざっくりだぜと言いながら、3、000から1,000までの2,000メートルの間を進む時間はマシンガン獣で大体15分ほどだ。5秒に1対破壊するとしたら15分で計算上は180体になると説明する。スナイパー銃を5秒に1発撃てると軽く言うリンドウだがエリンもルリもその実力を知っているのでそこには突っ込まない。


「大型が5,000体だとして29名。平均一人170体ちょっとか。ノルマ達成じゃん」


 ルリが頭の中で計算した数字を言う。


「計算上はな。実際はその前に小型もいるし、そう簡単じゃないだろうけどな」


「でもそう聞いたら成功の可能性がグッと高くなった気がするわ」


「高くなったんじゃなくて成功するんだ」


「そうね」


 3人で軽食を終えると装備を持ってホテルを出て城壁に向かう。都市国家はすでに非常事態宣言が出されているが4層は灯りが煌々とついている。


 休憩所に寄ると、その壁に周波数が記載されていた。ゴーグルで周波数をセットし、飲み物を手に持つとルリ、エリン、そしてリンドウの順で城壁の階段を登ってそれぞれの射撃ポジションにつく。


 そこにはD地区所属でリンドウも知っているCランクのハンターが4名立っていてサポートチームだと挨拶してきた。挨拶を返しケースからロングレンジライフルを組み立ていくリンドウを邪魔にならない背後からじっとみているCランクのハンター達。


 銃の組み立てが終わると一度立ち上がって水を飲む。右を見るとエリンもルリも準備を終えたみたいで予備の弾倉を自分の使いやすい様に並べていた。


 インターコムからツバキの声が流れてきた。


『こちらツバキ。Aランクハンターとの窓口は私になったの。この周波数はAランクと私達がいる本部席のみ。他の雑音は入ってこないから安心して。現在機械獣の大群の進行速度に変化無し。今から約3時間後に砲台の射程距離に入る予定。以上』


『1時間後から戦闘準備だな』


 誰かの声が聞こえてきてそれに答える他のメンバー。リンドウも短く了解とだけ言うと後ろを振り返りサポートメンバーに


「1時間後に戦闘準備に入る。それまで休んでいてくれ」


 

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