第116話 第2次大規模襲撃 その8

『本部より入電、機械獣の集団はそれぞれ都市国家より20Kmの地点で2つに分かれた。数はどちらも5,000体。前集団はスピードを上げた。後ろの集団の進軍速度は変化無し。前集団、足の早い方の城壁到達は今から4時間後』


 全てのAランクハンターが城壁の上で待機しているとインターコムに本部からの通信が入ってきた。


「リンドウの読み通りだぜ」


 これはタツミの声だなと聞いているリンドウ


『砲台は小型の集団には撃たない。5,000体の小型が都市国家に向かって進軍中』


 そうして3時間後、夜明けだ。城壁から荒野を見て右手の方向が明るくなってきた。そうして視界の先が砂埃をあげているのが見えてきた。ロングレンジライフルを構えるリンドウ。


『小型約5,000体接近中。距離4,500』


 初弾を銃に送り込むと伏射の姿勢でスコープを覗く


『距離3,500』


 インターコムの数字が自分のゴーグル上の数字と同調しているのを確認すると3,200の距離でまずはリンドウの銃が最初に火を噴いた


 スコープの先で小型が1体吹き飛ばされるのをスコープで確認して次々と銃を発射する。エリンとルリをはじめとするD地区の連中はもう慣れっこになっているが他の地区からきているAランクハンターは3,200から射撃を始めて全て命中させていくリンドウの腕に感心していた。


 そうして突然砲台から銃が発射されていく。大型が射程距離に入った様だ。8門ある銃口のうち4門を使って交互に銃弾が発射されていく。


『距離1,800』


 そこで城壁に設置されている重機マシンガンが火を噴いた。激しい音を立てながら小型獣を文字通り薙ぎ倒していく。そうして1,100で城壁の上にいるハンター全員の銃が火を噴く。ちぎれる胴体、弾け飛んでいく機械獣。


 リンドウも狙撃銃に持ち替えて片っ端から小型を討伐していく。


 みるみるうちに1,100メートルから800メートルにかけて小型獣の瓦礫の山が築かれていく。それを乗り越えようとしてまた撃たれる小型獣。左右に展開してもそこにいるハンターの銃の餌食となっていく。


『大型が砲台エリアを通過した。30%ほどの殲滅に成功。残りは進軍中。数は約3,500』


 守備隊もやるじゃないかと報告を聞いて感心するリンドウ。


 小型獣は結局一番近づいたので城壁から400メートル。ほとんどが1,000メートルから600メートルで倒されてそこにできた大きな瓦礫が左右に広がっている。


「いい感じだ」


「ああ、これなら大型も安易と来られないな」


 束の間の休憩。サポート部隊が弾薬の補充で走り回っている中でAハンター同士のやりとりを聞きながらリンドウはサポートメンバーから水をもらうと飲み、そして再びライフルをセットした。

 

『大型接近中。距離4,000』


 ガシっと音がして初弾がロングレンジライフルに送り込まれる音がする。


『距離3,500』


 そしてリンドウのスナイパー銃が火を噴き、3,200メートル先に来ていた大型機械獣の首を綺麗に撃ち抜いた。


 リンドウの狙撃をスコープ越しにみている他のAランクハンター達。ハンター以外にモニターで戦況を見ている支部長たちも感心している。


「想像以上の射撃能力だ」


「あの距離、しかもあの短いインターバルで全弾命中させてる」


「No.1に恥じない腕だ」


 リンドウは5秒ごとに銃弾を発射して確実に倒していく。数が多いからターゲットを探しやすい。


『距離1,800』


 再びマシンガンが火を噴いて大型を倒していく。バタバタと倒れながらも数の暴力で後ろから近づいてくる大型機械獣群。城壁の上に陣取っているAランクのハンター達はスコープを覗いていつでも撃てる状態になっていた。


 そうして距離1,100を切ると数台の大型機械獣が瓦礫を乗り越えようとこちらに腹を見せてくる。その瞬間にまたリンドウやマシンガンが火を噴いてバタバタと大型を倒していく。そして他のハンター達の銃も一斉に大型に向かって火を噴いていった。


 大型は仲間の瓦礫を乗り越えるのために動作が遅くなりしかもこちらに腹を出して登ってくるのでハンターから見たら止まっている様に見え格好の標的になる。


 敵の数は多いものの豊富な弾薬で次々に大型が倒されていきそこら中が瓦礫の山になっていく。なんとか瓦礫を登ってきた大型も自身のマシンガンを打つ前に次々とハンターの銃の餌食になっていった。


 そうして最初の小型獣の迎撃から始まって5時間ちょっと経つと荒野には10,000体を超える機械獣の瓦礫が横たわっている。時折散発的に発射音がするのは止めを指しているのだろう。そして戦闘開始から6時間後


『機械獣殲滅終了を確認した』


 その声を聞いて射撃体勢を崩してゆっくりと立ち上がるAランクハンター達。


「おつかれ」


 エリンが声をかけてくるのを片手をあげて応え、背後のサポートチームに


「おつかれさん、助かったよ」


 そう言って分解したロングレンジライフルをケースに戻すと狙撃銃を肩から吊るすいつもの格好で城壁を降りていく


 休憩所にいるAランクのハンター達はみなミッションをやり終えたあとの高揚した表情で思い思いに飲料を飲んでは雑談をしていた。リンドウもその輪に入って仲間達と雑談をしていると40分ほどして休憩所に5地区の支部長が全員入ってきた。


 B地区の支部長のアイクが代表して、


「みんなよくやってくれた。おかげで10,000体という機械獣の進軍を食い止めることができた。H地区もたった今敵の殲滅を終了したとの報告が来た。今日はホテルでゆっくりと休んでくれ。明日以降の各地区への帰還についてはそれぞれの支部長と打ち合わせを頼む」


 その後は各地区のハンター達がそれぞれの支部長のところに集まっていく。D地区の4人もツバキに近づいていった。


「お疲れ様。死傷者もなく撃退できてよかったわ。今日はホテルでゆっくりと休んでちょうだい。明日の10時にホテルの前に車を回すのでそれでD地区に戻るわよ。それから査定だけど今回も時間がかかりそうなの。1週間程待ってもらえるかしら?」


「全然かまなわい」


 スティーブが言うと他の3人も問題ないとOKする。


「ありがとう。今回の件は報告はいらないから明日はD地区の支部ビルの前で解散。それから査定が終わるまでは好きに過ごして頂戴。ご苦労さま」


 それぞれの支部長との話が終わるとAランクメンバーはお互いに挨拶をしてそれぞれテントから出ていく。ホテルに戻る者もいればぶらぶらと市内を歩いていく者。非常事態宣言は今から1時間後に解除されるらしい。

 

 リンドウは真っ直ぐにホテルに戻るとまずはシャワーを浴びる。5時間の戦闘で心身ともに疲れていた身体に熱い湯をかけてからそのまま全裸でベッドに移るとあっという間に

眠りに落ちていった。

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