第93話 話し合い
エリンが提出した画像などにツバキがコメントを書いて本部に送付したレポートはハンター本部経由で情報分析センター、都市国家防衛本部、そして政府に届けられていた。
ドローンの画像を見た情報分析センターは第一報として工業団地の核兵器製造地区の設備、ラインは完全に止まっていることを報告。現在はチームを工業団地の詳細を分析するチームと、どこからか飛んできている電波を分析するチームとに2つに分けてそれぞれが分析に取り組んでいた。
1ヶ月後、情報分析本部の呼びかけで政府、都市国家防衛本部、そしてハンター本部の幹部連中が2層の政府のビルの1つで会合を持った。
席上情報分析本部から探索をした工業団地の件と電波の件に関して報告がなされた。情報分析本部長に指名された分析官が立ち上がり、
「まず工業団地の方ですが、第一報でお知らせしていた通り西地区の核兵器開発エリアについては完全に止まっていることが確認できました」
その報告を聞いて会議室に安堵の声が漏れる。
「ハンターによるラップトップの破壊により完全にデーターが消えたものと思われます。従って西地区については懸念事項がなくなりました。一方東地区では相変わらず機械獣が日々生産されており、全て南を目指して出ていっております。映像から見る限りでは現在我々が対処している機械獣以外の新種については確認できませんでした」
そこで一旦言葉を切ると、
「ただし、外見は変わっていなくてもその攻撃力や行動パターンが変わっていないとは言えませんので十分に注意が必要です」
その言葉を聞いたハンター本部から参加している1人が、
「それはつまり、例えばマシンガン獣についていうと現在の500メートルから攻撃を開始するというパターンがいつ変わってもおかしくないってことかな?」
分析官は首を大きく縦に振り、
「その通りです。機械獣の頭部に組み込まれているチップが進化しているかどうかは残念ながら遠距離でのドローンの画像では確認できません。従いハンター達には引き続き十分に注意する様に通知をお願いします」
頷く担当者。
「そして次にハンター達が発見した指向性の強い電波についてです」
今日の本題はこれだ。全員椅子に座り直して発言する分析官に顔を向ける。彼はスクリーンに地図を映し出し、
「これはハンターが入れていたプログラムで作り出した電波の方角を予想した地図ですが、ドローンから分析した我々の分析結果と重なりました。従い方角については工業団地から西北西の方向から飛んできているものと思われます。そしてその電波の発信源ですがこれについては残念ながらドローンの画像や分析からは特定することができませんでした」
やっぱりかという声が漏れる
「ただ1点わかったことは、工業団地に向かって飛んでいる電波はハンター達が上陸した地点から北に250Kmのところを飛んでおり、その地点で地上から約300メートルの高さがあることがわかりました。それと工業団地にあったアンテナの場所とその向き、角度から推測するに西北西にある電波の発信源は高さ300メートル以上、実際には500メートル以上にあるどこかの地点から送られているものと思われます。そこに高い塔があるのか、あるいは山があるのか。従い上陸地点から西北西、この先に沿ってに探索部隊を出すことができれば発信地を見つけることは可能かと。高いものを目指して移動すれば良い訳ですから」
情報分析本部の報告が終わると政府から来ている担当者が、
「今度は上陸地点から西を探索をすれば良いということになるな」
頷く情報分析本部の分析官。
「そこに別の工場があるのか、あるいは電波塔だけなのかはわからないが、いずれにしても高い場所を探せば良いわけだ」
発言した都市国家防衛本部の担当者に政府から来ている担当者も頷くとそのまま顔を都市国家防衛本部が着席している方に向けると、
「今度は都市国家防衛本部にお願いしたいが」
「こちらとしては異存ありません」
本部長が即答する。次にハンター本部の連中が着席している方に顔を向ける。
「ハンター本部としてはどうかね?」
これは本部長のピートが答える。
「電波の発信源の探索となるとハンター本部の業務の管轄外となります。都市国家防衛本部の案件にしてよろしいかと」
ハンター本部としては工業団地の探索が済んでもうこの件かは手を引きたいと考えていたので都市国家防衛本部がやってくれるのならそっちでやってくれというスタンスだ。
「それでは上陸地点から西の地区の探索は都市国家防衛本部にお願いしよう」
それで会議は終わった。引き続き打ち合わせをするという政府と都市国家防衛本部の参加者を残してハンター本部と情報分析本部の幹部、担当者はビルを後にする。
ビルの前で別れ際に情報分析本部の本部長からハンター本部の本部長であるピートに、
「それにしてもお宅所属のハンター達は本当に優秀だな。おかげで分析情報本部としては非常に仕事がやりやすかったよ」
礼を言われたピート。
「あそこに送り出したのはハンターの中でもトップクラスの中のトップの連中です。今までもきっちりと仕事をしてきているエース連中です。情報本部から感謝されていると伝えると喜ぶでしょう」
「うちとしては全てをハンター本部に任せた方が上手く行く気がしているんだがな」
そう言って顔を上げて出てきたビルの会議室のあったフロアあたりに視線を送る。ピートはその言葉を聞いて苦笑しながら、
「西の探索となると完全にハンターの本分を外れますからね。あとは都市国家防衛本部にお任せしましょう。それにもし全てうちがやってしまうとまたいらぬライバル意識をあちらさんに持たれてこちらも仕事がやり難くなりますからな」
そう言うと確かにそうだなとお互いに笑って別れた。
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