第80話 3,500メートルのスナイプ その1
ツバキから呼び出された2週間後、改めてハンター支部を訪れたリンドウ。会議室にはいるとそこにはツバキの他に見たことがないスーツ姿の1人の男がいた。
「紹介するわ。ハンター本部の本部長のピートよ」
紹介された男は立ち上がるとリンドウに握手を求め、
「ハンター本部の本部長をしているピートだ、よろしく」
「D地区所属のリンドウだ」
そう言って席に着くとピートがリンドウをじっと見て
「リンドウの名前はハンター本部でも有名だ。どんなミッションでも常に完璧にこなしている。狙撃の腕も凄腕だ。Aランクの中でも常に上位に位置しているからな」
黙って聞いているリンドウ。型通りの挨拶終わるとピートは直ぐに本題に入る。
「ツバキ支部長経由で事前に曖昧な話をして申し訳なかった。ようやく方針が決まったので私が直接リンドウに説明した方が良いと思ってね」
そこで一旦言葉を切ると、
「実は今回は政府からの依頼を受けたミッションを君にやってもらえないかと思って私が説明に来た。指名ミッションだ」
「本部長がわざわざ来るほどのミッションなのか?」
予測はついているがそう聞くリンドウ、ピートは頷くとそのミッションの説明を始める。会議室のスクリーンに画像や地図をアップさせてたっぷりと時間をかけて説明をするピート。
リンドウは予想はしていたがまさかそれが核兵器関連の施設の破壊とまでは思っていなかった。ピートの横に座って聞いていたツバキはリンドウと会う前に本部長から概略を聞いていたのか比較的落ち着いた表情をくずしていない。
そうして説明を終えると、
「という訳で工業団地の中にあるこのラップトップを破壊すればここの核兵器開発はこれで終わる。なんとかミッションを成功させたい」
「3,500メートル先の5センチの的のスナイプ。俺も未経験だが」
スクリーンに視線を送ったままでリンドウが答える。
「もちろんだ。なので政府から武器メーカーに対して特別な銃と弾丸を今作らせている。リンドウにはその銃と弾丸に慣れてからミッションに出てもらいたい。ただ慣れると言ってもそう時間があるわけでもないが」
リンドウは最初にツバキから聞いた時から腹は決めていた。ピートの話が終わると視線をスクリーンから本部長のピートに向け、
「わかった、このミッションを受けよう。ただしいくつか条件がある」
受けると聞いてピートもそしてツバキにも安堵の表情が浮かんだ。
「もちろんだろう、なんでも言ってくれ」
そう言ったピートにリンドウが言った条件は、まずこのミッション用の銃の開発から参加したい。これは銃の形や操作性について自分の好みを反映させた方が慣れる時間が短くなるからだ。そして次に装甲車で移動するサポートメンバーについて希望をだす。
「サポートメンバーについては俺が指名したい。気心の知れている奴らの方がリラックスできるし信用できる。スナイプ以外で余計な気を使いたくない」
「なるほど。でもそうなるとサポートメンバーもD地区のAランクになるだろう?」
ピートの言葉に大きく頷くリンドウ、そしてツバキを見て
「正直生きて帰ってこられる確率は半々くらいだろう。そういうミッションにD地区から3、4名のAランクを出してもらうことになるが?」
ツバキはリンドウを見て、
「私はリンドウを信用している。必ず帰ってくるでしょ?ならリンドウが使いやすい、気心のしれているD地区にいるAランクハンターに声をかけてくれて構わないわよ」
ツバキとリンドウのやりとりを聞いていた本部長のピートが
「じゃあD地区でメンバーを選別してくれ。メンバーが確定したら報告を頼む。それと武器メーカーにはこちらからリンドウの今の話を通しておく」
ピートが先に会議室を出るとツバキはリンドウを支部長室に案内した。部屋に入ってドアを閉めると抱きついてきてリンドウを見上げると
「断ってもいいのよ?」
「いややるよ。別に国のためとかじゃない、自分の限界を知るためにやるんだ」
そうして支部長室でツバキを抱きしめたリンドウはそのままツバキの唇に自分の唇を押し付けた。
「それで、サポートメンバーについてはどうするの?」
熱い抱擁とキスでまだ赤い顔をしているツバキがソファに座ってリンドウの顔を見ながら聞いてくる。
「上陸してからの移動日数、特に帰りは機械獣に追われながらの退却だろう。下手したら走りっぱなしになる可能性もある。運転できるのは2人は欲しい。そして近づいてきた機械獣を倒す役目。ナビゲーター、そう考えると絞られてくるな」
「そうね、いつものメンバー?」
「ああ。ランディ、エリン、ルリだ」
「わかった。今から呼びましょう」
そう言うとツバキが端末から3人にメッセージを送った。すぐに返事がきて今から支部に顔を出すと言う。
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