第65話 大規模襲撃 その5
4時間ほど寝るとすっきりとして仮眠ベッドから起き上がると軽食を口にする。
ツバキが休憩所に入ってきた。元Aランクハンターだけあって茶系の迷彩服と迷彩ズボンの格好がサマになっている。今でもそのまま現役で通用するぜとリンドウが茶化すと流石に無理よと言い、
「第2波の攻撃開始予定時間は9時間後、今のところ変更はないわ」
「わかってると思うがマシンガン部隊の連中に銃口を下に向けとけと言っておいてくれよな。暗いと銃口が上がりがちになるからな」
「そうね。念押ししておくわ」
時刻は昼の3時過ぎ、まだ明るい中サポートチームのハンターが忙しく動き回っている中、軽食を済ませたリンドウは休憩所を出ると付近をぶらぶらと歩いて様子を見る。城壁の上に上がるとリンドウの銃の後方には新しい弾薬が追加されていた。そして第1波の機械獣の残骸もほとんどが撤去されている。
城壁の上から一通り見たリンドウは城壁の自分のポジションでロングレンジライフルと狙撃銃を簡単に整備と掃除をすると階段を降りて休憩室で仲間らと時間をつぶす。ふと奥をみると仮眠室でウィリアムズとワシントンが熟睡している。リンドウのその視線に気づいたヤナギが、
「あいつら第1波の前はほとんど寝れなかったらしい。Aランクになって初めてのミッションでしかもこれだ。緊張していたんだろう」
「それでもこうやって戦闘の合間に寝られるのは大したものだ。次はもう大丈夫なんじゃないか」
リンドウの言葉にそうだなと頷くヤナギ。2人で雑談をしているとエリンとルリが休憩所に入ってきた、聞くと自分のマンションの部屋で休んでいたらしい。
「しっかりと休めたわよ」
「なるほど。一旦自宅に戻るのもありだったんだよな」
気づかなかったリンドウが言うと、仮眠室だと疲れが取れないのよというルリ。
エリンらのすぐ後にやってきたサクラとマリーも自宅で休んだらしい。確かに女性は自宅の方がリラックスできるだろうと納得したリンドウ。ヤナギも俺も家に戻って休んだらよかったと言っている。
日が落ちると都市国家の街の灯りが煌々と城内を照らす。攻撃隊の背後が明るく荒野は暗くなる。狙撃には良い条件ではないがサポートチームが動き回るのは暗いよりも明るい方が良い。弾丸の配り間違いも起こりにくい。元よりその程度の悪条件で腕が落ちるのならAランクにはなれない。厳しい状況下でも成功が求められるのがAランクだ。
第2波への攻撃開始まで後6時間。
『砲台発射5分前、第2波の進軍速度に変更なし』
真っ暗闇で荒野には何も見えない。リンドウが城壁に伏せたまま暗闇の荒野を見ていると砲台から一斉に弾丸が発射されていく。かなり先で大きな爆発が起こったと思ったらすぐに2弾目の発射が行われた。
『距離5Km。 レーダーによると約6割の機械獣が殲滅』
第1波の時の同じく合計で5回の発射が行われた。そしてインターコムに情報が流れてくるとすぐに都市国家から多数の照明弾が空に向かって打ち上げられた。
『動きが遅い蜘蛛型機械獣とはいえ6割か、守備隊もやるじゃねぇか』
インターコムにランディの声が聞こえてくるがその時リンドウは既にロングレンジライフルのスコープを覗いていた。照明弾で明るく照らされる荒野の地表がさざなみの様に揺れている。6割殲滅したとはいえまだまだ多数の機械獣が大型、小型とこの城壁に向かってきているのが見えた。
ゴーグルの表示距離3,200メートルでリンドウの銃が火を噴き、見事に大型の蜘蛛型機械獣を倒す。続けて発射するリンドウ。銃口を大型に向けては夜間でも100%の命中率で大型を仕留めていく。
そして2,200メートルになるとサクラとマリーの銃も火を噴いた。ゆっくりと近づいてくる大型を狙い撃ちにして3人で30体近くを倒すとリンドウは狙撃銃に持ち替え、3点バーストで1,600メートルから大型を狙い撃ちしていく。
スナイパー銃、狙撃銃ともに命中率100%だ。夜間でも昼間と同じ命中率で次々と機械獣を倒していくリンドウ。
1,000メートルになると一斉にマシンガンが火を噴き始める。絶え間なく打ち上げられる照明弾で明るい荒野に向かってマシンガンと狙撃銃が休むことなく銃口から火を噴いて次々と機械獣を薙ぎ倒していった。
結局第2波も1時間ちょっとで全ての殲滅に成功する。
『D地区機械獣の制圧に成功。ただしまだ動いているのがいるかも知れずそのまま現場に留まって指示を待て』
インターコムの通信を聞きながら狙撃銃の銃口を機械獣の残骸に向ける。時折左右からマシンガンの音が聞こえて来る。まだ生き残りがいるんだろう。
幸いリンドウの担当の場所には動きがなく、そのまま1時間待機していると、
『制圧終了。現在都市防衛隊のレーダーにも新たな敵影は無し』
こうして建国以来最大の危機といわれた都市防衛戦に成功した都市国家。全ての地区での戦闘が終了したのは午前3時過ぎだった。
ツバキから戦闘解除、お疲れ様という声を聞いて初めて緊張を解いて立ち上がって大きく伸びをした。
「お疲れ様でした」
というサポートチームの連中に助かったよと礼を言いながらロングレンジライフルをケースに戻し、狙撃銃を肩に吊るして階段を降りていったリンドウを見ていたサポートメンバーは、
「3,200メートル、昼でも夜でも全弾命中だったな」
「狙撃銃も100%命中させてたわよ」
「都市国家のAランクの中でも上位3人に入るだろうといわれているリンドウ、えげつないとは聞いてたが実際に目の前で見ると言葉が出ないぜ」
自分達とはあまりに違う力量差を見せつけられたサポートチーム。これがランクAの中でもトップクラスのハンターなのだと改めてリンドウの凄さを身にしみて感じていた。
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