第64話 大規模襲撃 その4


 そして5分後、都市国家建国以来の最大の戦闘が始まった。


 城壁の上に置かれている砲台群が一斉に火を噴いて都市国家に近づいてくる機械獣の群れに向かって砲弾が飛んでいく。リンドウが見てる先で大きな爆発と砂埃が連続して立ち、しばらくして派手な音が聞こえてきた。


 砲台からは間を置いて2回目、そして3回目とそれぞれ8発ずつの弾丸が空に飛び出しては荒野に降り注いで機械獣を倒していく。そうして5回目の発射が終わり1つの砲弾から合計40発の弾丸が荒野に向かって発射された。


『距離5Km。 レーダーによると約4割の機械獣が殲滅』


『初めて撃つにしちゃあ上出来じゃないの』


 誰かの声がインターコムを通じて聞こえてくる。全くその通りだと思ったリンドウ。マークスマンのスコープを覗いていると砂埃の向こうから遠距離砲を切り抜けた機械獣群が近づいてくるのが見えた。4割倒したとはいえまだ相当数の機械獣が一直線に都市国家を目指して突っ込んできているのが見える。


 ゴーグルのスコープが3,200メートルになっところでリンドウの1発目が火を噴き、その数秒後に大型機械獣が吹き飛ばされる。すぐに2発目が発射されこれも見事に大型を打ち倒す。その後もロングレンジライフルで大型を狙っては全弾命中させて倒していくリンドウ。


 距離2,200でリンドウ以外のサクラとマリーのロングレンジライフル銃も火を噴いた。3人で大型機械獣を20体は倒していった。そして距離が1,200になると狙撃銃に持ち替えて再びスコープを覗いて近づいてくる大型を狙い撃ちする。


 背後でサポートチームの4人が弾丸の補充をしながらも目の前のリンドウの100発100中の命中率に感嘆しているがリンドウにはもう周りは見えていなかった。スコープを覗きターゲットをロックオンするとトリガーを引く。そうしてすぐに次のターゲットを狙う。周囲の音も聞こえずただ自分の世界に、ゾーンに入っていた。


 押し寄せてくる機械獣の戦闘が1,000メートルになると城壁に構えていたマシンガン部隊が一斉に攻撃を開始した。ものすごい音がして次々と機械獣が破壊されていく。それでも後から押し寄せてくる機械獣は崩れた仲間の上を飛び越えて城壁を目指してくる。


 全てのマシンガンが火を噴いて機械獣を薙ぎ倒していく中でリンドウの狙撃銃が3点バーストの音を立てては大型を狙い撃ちして倒していく。


 マシンガン部隊はひたすら打ち続けていた。銃口を左右に振って薙ぎ払う様にして次々と機械獣を倒していく。みるみるうちに減っていく弾丸。サポート部隊が弾丸を交換していく先から弾丸が飛んでいく。


「マシンガンの弾丸を切らすな、もっと持ってきてくれ」


 城壁の上から城内の補給チームに大声を出すサポートチームのハンター。すぐに大きな木箱が何箱も城壁の上に運ばれてマシンガンに装着されていく。


 最初に都市防衛隊の砲台が火を噴いてから50分後、D地区は1体も城壁にたどり着かせずその手前で第1波の攻撃をしのいだ。


『D地区第1波の討伐に成功。第2波の到着予定は今から14時間後』


 インターコムから聞こえてきた報告を聞いてリンドウやようやく狙撃銃のスコープから目を離し、ゴーグルを上にずらせてから銃を置くと城壁の壁に腰を落として大きなため息をついた。


 一方でサポートチームは次の襲撃までの間に弾丸の補充で走り回る。マシンガン部隊の弾丸の消費量が事前の予想以上に多かったのであちこちで大きな声が聞こえてくる。そして城壁の外には都市防衛隊の部隊が出て機械獣の残骸を集めては次々とトラックに積んでいた。機械獣の残骸は加工すると都市国家で再利用ができるのだ。


 リンドウは銃を城壁の上に置いてその場でしばらく休憩するとサポートチームにその管理を頼み、立ち上がって大きく伸びをしてから城壁の階段を降りて支部の仮司令所に隣接している休憩室に入っていった。そこには軽食や飲料が置かれてある。仮設小屋の中には戦闘部隊の仲間もおり、リンドウが入ってくると手を上げたり、拳を合わせたりしてとりあえずの無事を確認しあう。奥の仮眠室ではすでに何名かが横になっていた。


「何とか第1波は退けたな」


 酒ではなく水を飲んでいるランディが話しかけてきた。


「ああ。ただ次は真夜中だからな、今ほど簡単じゃないかもしれない」


 同じ様にミネラルウォーターのボトルを持ってそのまま口をつけて一口飲んだリンドウが言う。


「その通りだ。さっきツバキと話をしたらランクBに照明弾を撃たせるって話だ」


「なるほど。それでも夜は距離感が掴みにくい、弾丸もずっと多く消費するだろう」


 ランディとリンドウとの話を聞いていたサクラとマリー、そしてエリンやルリも集まってきた。彼らの方を向いて、


「他の地区はどうなってる?」


「来ている報告だと全地区で第1波の撃退に成功してるらしいわ」


 聞いてきたリンドウの顔を見ながらエリンが答える。とりあえずは引きこもり作戦が成功した様だ。


「とりあえずは一安心か。ただ次は真夜中だ」


 そう言ってからサクラとマリーを見て、


「夜になると視界が悪くなって距離感が掴みにくい、照明弾があってもだ。スナイパー銃でスコープを覗くと見た目に遠く感じるかもしれないがゴーグルの距離表示を信じるんだ。それと蜘蛛型は硬いのが多い、2発で倒すつもりで撃て」


 頷くサクラとマリー、次も期待してるぞと2人の肩を軽く叩いてからリンドウは奥の仮眠スペースで横になった。


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