第61話 大規模襲撃 その1
「分担?」
「そう。今から具体的に言うわ。ここにいるAランク全員とBランクから選抜した攻撃部隊はD門の4層の城壁の上で機械獣を討伐していく。そして他のハンター達は全て後方部隊とする。攻撃部隊1人に4、5人のサポートをつける。彼ら後方部隊の仕事は補充の弾丸を城壁の上に持って行ったり戦況の報告を貴方たちに伝えるのが仕事になる。残りのハンターは後方部隊で弾丸を振り分けたり非戦闘員が外に出ない様なパトロールよ。パトロールは防衛守備隊との共同ね。貴方たちは戦闘に専念して欲しいの」
「なるほど」
各地区で平均のハンター数は1,000人程度だ。そのうち100名強の人員を戦闘部隊として残りはフォローに廻るという説明を聞く。後方支援部隊の必要性は皆が理解していた。
「都市防衛隊は城壁には出てこないんだな」
「出てこない。その代わりに弾丸やマシンガンの貸与は認めてくれた。これはあなた達とランクBの上位者に使ってもらうつもり」
都市防衛隊自慢の砲台群は各地区に2基設定されている。四角い箱の先に8つの穴が空いていてそこから発射できるシステムだ。射程距離は最大で15Km。これが絶対防衛ラインと呼ばれている。
砲台はコンピュータ管理となっており4層にある守備隊の司令所で発射する。弾丸の装着も最初に砲台の下にある弾薬庫に入れておけばその後は自動で行えるために城壁に兵士が常駐する必要がない。
「結局都市防衛隊って言いながらこうなると何もできないってことなんだな。遠距離砲を打ちまくるだけの兵隊さんの集まりだ」
ヤナギがダメだしする。その言葉に頷く周りのハンター達。
「防衛守備隊からはマシンガン部隊を結成するという案もあったんだけど結局武器の扱いはハンター達の方が慣れてる、そして個人で状況判断できるから臨機応変に対応できるという理由で最終的に政府が城壁はハンターに任せるという結論を出したの」
ツバキが一応守備隊の顔を立てる様な言い方をする。
「マシンガンと弾丸は使い放題なんだから許してあげましょうよ。それとツバキ、私たちハンターの弾丸も支部というかそっちもちなんでしょ?」
エリンが当たり前よね?という表情で聞いて来る。
「もちろん。今回については弾丸代は全て政府持ちになったわ。遠慮なく使って敵を倒してちょうだい」
「報酬は?」
リンドウが発言する。彼は続けて、
「今回のが都市国家始まって以来の未曾有の危機だってのは分かる。ただ俺達はハンターだ。4層の城門の上で命を張って敵を倒す。ひょっとしたら武器を持ってる敵の数が更に多くなっていたり、その武器の精度が上がっているかもしれん。命をかける代償について確認しておきたい」
ツバキが職員に顔を向けると職員が端末を操作する。すぐに全員の端末に情報が流れてきた。
「悪くないな」
「太っ腹じゃないかよ」
口々に言う中、ツバキはリンドウに顔を向けて
「どう?」
「わかった。受けよう」
リンドウは短く答える。その答えにツバキは、
「その報酬が払える様に敵を全て殲滅してちょうだい。万が一機械獣が城壁を破って街の中に入ってきたらその報酬も払えなくなるのよ」
そうして次にD地区の城壁での配置を決める。最も重要なD門には守備隊のマシンガン2台を設置し、それとは別にスティーブが担当することになった。
「片っ端から倒しまくってやるよ」
スティーブの声に頼むぜというハンター。彼のマシンガンを含めて3台で物量作戦で門に襲いかかる機械獣を薙ぎ倒す作戦だ。
リンドウ、サクラ、マリーはそれぞれスナイプで大型を遠距離で倒し、その後は狙撃銃で倒すことになる。それ以外のメンバーも城壁の上に均等に配置するということで場所が決まった。そしてAランクのハンターの間に守備隊から貸与されたマシンガンを設置する。
配置が決まるとハンター支部の職員がすぐに部屋を出て守備隊の本部に向かう、Aランクハンターは全員戦闘準備の為にオフィスを出て行った。ハンター支部は事前に準備していたオプションプランに基づいてB、C、Dランクのハンター達に指示を出す。
D地区のみならず全ての地区が機械獣の大群に対抗するため一斉に動き出した。
都市国家から人が消えた。都市国家全体に非常事態宣言が出され非戦闘員は全て外出禁止となり家で待機することとなり店はシャッターを降ろした。普段は行き来する人が多かった通りは大量の弾丸や武器を積んだトラックや四輪駆動車が走り回るだけになる。そうして1層と2層、2層と3層など建国以来閉じられたことがなかった門が閉じられた。3層と4層だけは物の行き来があるということで閉じられることはなかったがその門を潜るのはハンターと都市国家防衛隊の兵士達だけになった。
機械獣到着まで36時間。
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