第56話 新加入メンバー

 リンドウらハンターは本来のあるべき姿に戻った。荒野を走って機械獣を倒しては報酬を得る。金が貯まると武器や弾薬を買ったり、あるいは酒を飲む。女を買う。自由きままなハンター稼業だ。


 ハンター支部からは特に何も言ってこなかったし、彼らももう気にはしていなかった。


 そうしてしばらく経った頃、ハンター全員の端末に支部から通知が入る。その内容は政府や都市防衛隊、情報分析本部らとの打ち合わせが終わり、今後の活動範囲が明確になったというものだ。


 現在の都市防衛隊のレーダー範囲であるD1地区からD6地区(巨大廃墟は含まない)までの範囲がハンターの活動範囲とし、そこに出現する機械獣がハンターのターゲットになる。レーダー範囲から外側は都市防衛隊の管轄となる。従いこの通信を受信後D6より先のレーダーの範囲外に出る際には事前に各ハンター支部に申請をし、その許可を得なければならない。


 この通信が届くと直ぐにエリンからリンドウの端末に連絡が入る。


「リンドウの言った通りになったわね」


「普通に考えたらこうなるよな。でもこれで俺達の立ち位置もはっきりとした。すっきりしたぜ」


「そう?私は全然すっきりしてないのよ、ルリと2人でもやもやしっぱなしなの。誰かさんは全然連絡をくれないしさ。ということでこれから行っていい?」


 そうしてエリンとルリの2人がリンドウの家にやってきた。迷彩服にショートパンツ姿にももう慣れたリンドウが2人を部屋に上げる。


「久しぶりすぎない?忘れてたんじゃないでしょうね」


 部屋に入るなりルリが唇を尖らせて言う。


「そんなことないだろう?俺はいつもマイペースだぜ?」


「リンドウってさ、本当に自分から連絡しない人ね、こんないい女2人を平気で放置プレイさせるなんてさ、何考えてるのかしら」


 エリンもつっかかってきた。そして2人で、


「今日は寝かせないからね」


 そう言うと2人でリンドウの両手を掴んでそのまま寝室に連れていくと寝室のドアをバタンと閉めた。


 そして宣言通り夜通しよがり狂った2人。


「やっとスッキリしたわ」


「本当。こんなに長い間してないのって初めてかも」


 翌朝、と言うか結局誰も寝ていないが、軽い朝食を食べながら2人が言う。2人とも身につけているのは迷彩服の上だけだ。それも腕を通しただけでファスナーを留めてないからは前はだけたままで、チラチラと胸や乳首が見えている。すっきりしたと言いながらまだ帰る気はさらさら無さそうだと思っていると、


「そうそう、ローズから聞いたんだけど、ローズとシモンズ、ハンターを辞めるらしいの」


 とルリ。


「そうなのか?」


 視線を胸から顔に移す。


「2人で四層でバーを開くんだって。前から物件を探してたらしいんだけど最近ちょうど売り物が出て買ったらしいの。2人とも堅実だからしっかり貯めてたみたい。それで店を買えたのを機にハンターをやめるって。ひょっとしたらもうツバキに言ってるかもね」


 リンドウは2人の話を聞いても驚かなかった。早晩そうなるだろうという雰囲気はしていた。2人とも無理なミッションはせずにいつも車で荒野を走っては機械獣を倒して報酬を得ていたのを知っていたからだ。一度に大金は得られないがそれでも真面目にコツコツと続ければそれなりのギールは貯まっていく。


「あの2人なら店の経営も堅実にやるだろう。オープンしたら行かないといけないな」


「そうね、一緒にお祝いに行こ」


 結局この日も泊まりになって3日目の昼過ぎに堪能して満足した2人が部屋を出ていくとリンドウは直ぐにベッドに倒れ込むやあっという間に眠りに落ちた。



 シモンズとローズの引退はD支部で承認された。そうしてその後新しくワシントンとウィリアムズという2人のハンターが厳しい選考をパスしてAランクに昇格してきた。


 Aランクになるには高いハードルがある。戦闘能力はもちろんだがそれだけでは上に上がれない。今までの実績は当然だがそれに加えてリーダーシップ、作戦立案能力、危機管理能力、性格チェックなど多岐に渡って審査を受ける。


 その厳しい審査をクリアして初めて支部が推薦する人物として本部に申請されて承認が降りて晴れてAランクハンターとなるわけだ。


 ツバキは新しくAランクになったハンターを紹介する場を設けて支部の会議室にAランク全員を集めた。


「みなさんも知ってる通り今までAランクだったシモンズとローズはハンターを引退した。そしてその交代というか新しくAランクになった2名を紹介するわね」


 ツバキに紹介されて立ち上がる2人、2人の迷彩服の左肩には真新しいAランクのパッチが貼り付けてある。


 「ワシントンだ、戦闘スタイルは連射タイプ。皆んなの足を引っ張らない様に頑張るつもりなんでよろしく」


 ワシントンという男は身長190センチでほぼリンドウと同じだ。白人で金髪で青い目、すらりとしている。


「ウィリアムズだ、戦闘スタイルはワシントンと同じ連射タイプ。そこにいるランディには酒場でよく奢ってもらってたが、自分もAランクになったら奢ってもらえなくなるのが少し残念だ、よろしく」


 その言葉に笑い声が漏れる。こちらはスティーブと同じ黒人だ。そしてスティーブ程ではないが大柄で陽気そうな男だ。


「じゃあ今度は皆んなも簡単に紹介してくれる?これから一緒にミッションをするかもしれないから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る