第49話 新しい武器 その2
サムに見送られてリンドウは自宅に一旦戻ってから午後1時にD門に行く。そこには四輪駆動車にのったウスイとマヤが待っていた。2人とも社名の入った迷彩服だ。仕事柄都市国家から荒野に出ることは多いらしい。この車も会社のなんですよとウスイが話す。
リンドウが後部座席にのると車を出すウスイ、リンドウが昨日試し打ちをした廃墟についたのは廃墟を出て40分後だった。昨日のマークが残っている。
「これが昨日俺が試し打ちをした場所だ。何メートルから始める?」
「1,000からでいいですか?」
リンドウが頷くと車で1,000メートル下がったところで止める。ゴーグルを装着して距離を調整、ピッタリ1,000メートルのところで立ち止まると、まずは立射で単射と3点バースト、膝射、伏射でも同じ様に撃つ。もちろん全弾中心点に命中する。ウスイとマヤは望遠鏡を覗いて的を見ている
そうして距離を伸ばしていくがどの距離でも全弾命中させるリンドウ。1,600で命中させた時は望遠鏡を覗いて2人がびっくりし、最後に1,800で全弾命中させた時には呆然とする2人。
「噂には聞いてましたが凄すぎる」
感心してウスイが言う。マヤも
「まさにマシーンですね」
そうしてリンドウの射撃の腕を目の当たりにした2人、廃墟に戻って的に当たった衝撃をチェックしていて、
「これなら1,800でも機械獣は倒せそうですか?」
「小型は全く問題ないだろう。弾の威力が落ちないから3点バーストであれば大型も問題なく倒せるだろう。いい銃を作ってくれた」
褒められて技術担当のマヤの頬が緩む。その後も彼らの要求に応えて実射するリンドウ。銃の弾倉の入れ替えはどうかとか、スコープの写り具合はどうかなどの質問にリンドウが自分の思うところを話していく。
ひとしきり話が終わったところで一旦戻ろうという話になりD地区に戻ってきた一行は近くのレストランに入るとそこで打ち合わせをすることにした。
「それではスコープについては改良の余地があるということでこれはマヤの方ですぐに検討させます。他には特に問題がないということでよろしいでしょうか?」
「問題ないと思う。スコープに関しても今ので十分実戦で使えるレベルにあるのは間違いない。ただもうちょっと視界が欲しいと思っただけさ。あとはさっき言ったグリップくらいかな。弾倉の入れ替えも簡単だしカチっとしっかりと音がするのもいい。荒野ででも言ったがいい銃だよ」
リンドウが礼を言うと2人の表情がなごむ。会う前はD地区はもちろん都市国家で活動しているAランクのハンターの中でもトップ3、人によればNo.1だという話を聞いていたのでどんなハンターかと相当警戒していたが会ってみると極めて常識人だった。ウスイは自分たちが開発した銃がNo.1と言われているハンターから高評価を受けたのを喜んでおり、隣のマヤはリンドウの話を聞きながらその精悍な顔やがっしりとしたリンドウの体躯を見ていた。
「銃は問題ない。それで弾丸だがどれくらいの価格になりそうなんだ?」
そうですねとウスイが端末を操作して、
「まだ発売前なのですが、ざっくり言うと今使っておられる狙撃銃の弾丸の1.1倍位では収まりそうです」
「10%アップか。射程距離が伸びている。距離見合いなら妥当かもな。弾代が10%以内のアップに収まるのなら俺はこの銃を使う」
この世界も評判が一番だ。トップランカーが使用する銃は売れやすい。リンドウが今持っている銃はスナイパー銃としても十分に使えるのでスナイパー、そして連射ができる狙撃銃として上手く宣伝すればスナイパーを中心に売れるだろう。
ウスイは頭の中でそれらを計算する。そして
「ありがとうございます。大変参考になりました。とりあえずその銃は差し上げます。それと弾丸については500発ほどあとで届けさせてもらいます」
「歩く広告塔になってこっちも宣伝しておいておくよ。もっとも言わなくても聞いてくる奴らが多いけどな。皆新しいそして性能の上がる銃はないかと普段からチェックしている。それが自分の生存率を上げるのに直結してるからな」
リンドウの言葉に納得する2人。スコープの改良品については出来次第連絡すると端末で連絡先を交換して2人と別れた。
弾丸は翌日に届いた。これでこれからリンドウは新しい狙撃銃を愛用することになる。
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