第48話 新しい武器 その1

 リンドウは2人が帰った後もう一度寝て、昼過ぎに起きるとジムに顔を出して身体を鍛えた。そして射撃場で鍛錬をするルーティーンをこなし、自宅に戻ろうかと端末を見ると着信が。そのメッセージを読んだリンドウはそのまま4層に入ると目的の店に向かっていった。


「おお、来たか」


 リンドウが店に入ると奥からサムが出てきた。


「お前さんから言われていたからな、いろいろ聞いてたら試作品が手に入った」


 そう言って見せてきたのは狙撃銃だ。手に持つと今のよりも少し重く感じたが。だが持てない程じゃない。リンドウなら全く問題のない重さだ。銃を手に持ったリンドウにサムが端末を見ながら情報を伝えてくる。


「そいつは今リンドウが使っているM56A7タイプの改良版で型番はM82A25となってるな。売りは狙撃とスナイプの両方ができる銃ってことだがあんたなら普通に狙撃銃として使えるだろう。ロングレンジライフルはもう3丁持ってるしな」


 そうして説明を続けるサム。


「銃の長さは135センチだ。今より10センチ長い。フルオートでの3点バーストは同じだな。最大射程距離は1,800メートル。実践だと1,500はいけるだろうって話だ。あんたなら1,800近くでも大丈夫じゃないか?重量は今のより700g重くなってる。リンドウにとったら誤差の範囲だろう。そしてマガジンには20発。これは一緒だな。ただ弾丸は変わる」


 そう言って出してきたのは今までの狙撃銃の弾丸よりも少し長めの弾丸だ。


 黙って聞いていたリンドウは立射の姿勢で銃を構えてみる。いい姿勢だとサムがリンドウの立射の姿を見て声を出す。姿勢を崩したリンドウは


「いい感じだ。いくらだ?」


「それだが、メーカーの担当者から条件が来ているんだ」


 サムの言葉におうむ返しで


「条件?」


 と聞く。


「ああ。実はこの銃は本格生産前の試作品だ。俺がリンドウに使わせてみたいって言ったらその担当者はお前さんの名前を知っててな。そりゃそうだろう。狙撃の世界じゃNo.1の腕前だ。そうしたら担当者がな、リンドウが使うならタダで差し上げるから是非使ってもらいたい。もちろん弾丸も無料だ。ただし使った後の感想を聞かせて欲しいそうだ」


「感想を言ったらタダってことか」


「悪い話じゃないだろう?」


「もちろんだ」


 リンドウは新しい狙撃銃を手に持って見ながら受けようと言う。そして明日荒野で試し打ちをするから明後日にこの店で銃のメーカーの担当者と会って感想を言うことにする。


 翌日四輪駆動車に乗ったリンドウは1人で荒野を走っていた。そうして人気のない1つの廃墟に着くと目標を書いて距離を計りながら下がり、300メートルで0補正をしてから少しずつ距離を伸ばしていく。


 それぞれの距離でいろんな姿勢から銃を撃つリンドウ。3点バーストもし、1,500メートルから撃って全て命中させる。最終的には1,800でも全弾命中させた。


 動いてない標的とはいえ驚異的なスキルだ。


 その後は廃墟の中を銃を持って走り回り、そしてすぐに射撃の態勢に入る訓練を繰り返して荒野で鍛錬をする。途中で機械獣を数回倒したがその射撃についても満足したリンドウは昼過ぎにD地区に戻ってきた。


 その翌日の午前中リンドウが武器屋のサムの店に行くとそこにはすでにメーカーの担当者2名が来ていてリンドウを待っていた。1人は男で1人は女だ。2人ともスーツ姿で女性は眼鏡をかけた理知的な顔をしているが外見は地味な雰囲気だ。


 サムが流石にここじゃまずいだろうと奥の事務所を使わせてくれてそこでサムを交えて4人で話をすることにする。


「この銃を開発している会社の営業担当のウスイと言います。こちらは主に技術面を担当している開発部のマヤです」


 そう紹介されリンドウだと挨拶をする。技術面を見ている、道理で理知的な顔をしていると思ったリンドウ。


「それで早速なんですがいかがでしたでしょうか?」


 リンドウは昨日のことを説明して


「後ろのグリップがやや細い気がした。まぁこれは布を巻いて調整可能だな。人によったら細めが好きなのもいるだろうし。好みの分野になる。自分にはちょっと細いと思った」


 リンドウの発言をマヤが端末に打ち込んでいく。


「銃自体の性能は悪くない。1,800でも命中したしな」


 その言葉を聞いてびっくりする2人。サムは当たり前の顔をしているが、


「1,800ですか?一応カタログ上はそうなっていますが実質1,500以下と私達は理解しているのですが」


 マヤが信じられないという表情で聞いてくるが、


「そうかも知れないが、俺は1,800で当てられた。何なら現地で見てみるか?」


 そう言うとそれまで黙ってやりとりを聞いていたサムが


「リンドウ。見せてやった方がいいぞ、現地で実際に撃って見せたら一発だろう」


 そう言うことで急遽実際に荒野で撃っているところを見せることになった。ウスイとマヤはスーツから着替えるというので午後1時にD門で待ち合わせをすることになって2人は一旦店を出ていった。


 サムと2人だけになると、どうだった?と聞いてくる。


「十分に使える。銃弾の値段次第だが性能には満足だ。命中率も高いし持ちやすい。いい銃を作ってくれたよ」


「荒野でたっぷりとその実力を見せてやってくれよ」


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