第7話 スナイパー訓練 その2


 そうして武器屋で新しい銃とゴーグルを買った2人は再び支部の地下にある射撃場に戻ってきた。早速真新しい銃をセットする2人。ゴーグルをつけてスコープを覗くと、


「凄い、200メートル先の標的がさっきよりずっと近くに見える」


 スコープを覗いてびっくりした声を上げるマリー。


「ほんとだ」


 同じ様にスコープを覗いたサクラも言う。


「俺の声も聞こえるだろう?」


 ゴーグルのインカムを通じてリンドウの声が聞こえてくる。スコープを覗いたまま返事する2人。


「それが金を掛けた装備の効果だ。まずは0補正からしよう。中心を狙って撃つんだ」


 そうして訓練が始まった。サクラの銃はやや右上に、マリーの銃は左にズレる傾向があったのでそれを調整してから中心点に当てる訓練を続ける。


 最初は1分以内だったのが訓練の最後は20秒以内という風になっていった。


「オーケー、いい感じだ。今日はここまでにしよう。スコープを覗き続けると疲れるからな。適度な休憩が必要だ。明日も14時にここで」


 そう言ってこの日の訓練は終わった。2人が銃をケースにしまって射撃場を出ていってから自分の端末を見ると18時半を過ぎていた。リンドウは結局組み立てたものの1発も撃たなかった自分のロングレンジライフルを分解してケースに戻すとそのまま射撃場を出て、夕暮れの中3層の中にあるツバキのマンションに向かった。


 セキュリティがしっかりしているマンションに着いてエントンランス横のインターホンでツバキを呼び出すとカチリと音がしてエントランスのドアが開いた。そしてエレベーターで上層に上がってツバキの部屋のドア横のインターホンを押すとすぐに内側からドアが開いてツバキが顔を見せた。


「待ってたの、どうぞ」


 仕事中はスーツだったが今は白のざっくりとしたサイズのロングTシャツ1枚だ。盛り上がっている胸、乳首が浮き出ていて、Tシャツの丈は太ももの途中までなので綺麗な足も見えている。玄関横に銃のケースを置くと言われるままに部屋にあがるリンドウ。


 仕事中のクールな表情はなく今は身体全身から色気を撒き散らしている。


「ここにくるのも久しぶりでしょ?」


 リンドウの視線を感じ、リビングの中央で立ちロングTシャツ1枚しか着ていない自分の全身を見せつけながらツバキが話しかけてくる。


「ああ。いつ来てもここはいいマンションだよな」


 ツバキの身体に視線を注ぎながら広いリビングに入るとその横にあるキッチンのテーブルの上に既に料理が並べられていた。


「リンドウだってここに十分に住めるじゃない。それくらいは余裕で稼いでるはずよ?それとも一緒に住む?私は全然構わないけど」


 リンドウをテーブルに座らせると自分はその向いに座ってリンドウのグラスに薄めのお酒を注いでくるツバキ。


「俺は4層が好きなんだよ。ここは確かにいいマンションだが3層は荒野から遠い。気持ちの問題だが遠いところに住むと戦闘の勘が薄れる気がするんだ」


 乾杯をしてグラスに口をつけてから目の前にある料理を食べ始める2人。食事をしながらの話題は今日の訓練のことだ。リンドウが2人に新しい銃とゴーグルを買わせてから訓練をしたと言う話をすると、


「インパクトが大きいから非公開にしているけど」


 ツバキはそう前置きしてから、


「BランクからAランクに上がったハンターの2割近くがAランクになって1年以内に死んでるというデーターがハンター本部にあるの。ランクAになると装備や武器に掛けるお金が跳ね上がるけど、それをしていないBランクのままのハンターが死んでいくのよ」


 なるほどと頷くリンドウ。


 BランクからAランクになるとハンター本部や支部から出されるミッションの難易度も跳ね上げる。それを以前の装備で対応しようとするから事故が起こって命を落としてしまうのだ。ツバキの話しを聞いていたリンドウは、


「実入りは多くなるが出費も多くなる。その出費が多くなるのを嫌がってると命を落としてしまう。死んでから気づいてももう遅いからな」


「そう言う意味では今日の2人はリンドウが指導してあげてよかったじゃない。少しは生存率が高くなったんじゃないの?」


「だといいがな」


 そう言ってから向いに座ってるツバキを見て、


「今日見ただけだがあの2人はどちらも筋がいい。良いスナイパーになる気がする」


「貴方みたいに?」


 リンドウは聞いてきたツバキの目を見て、


「俺の評価は俺じゃなくてあんたやその上が決めることだ。ただ、あの2人は伸びる。スナイパー銃を使いこなせる様になれば普通の狙撃銃についても大丈夫だろう」


「ルリやエリンのタイプじゃないってことね」


 ツバキの言葉に食事をしながら頷き、


「ああ。どっちかと言うと俺の戦闘タイプだな」


「リンドウのタイプのハンターが少なくて困っていたからこれは朗報ね」


 ツバキはそう言ってからリンドウを見つめ、


「それであの子達も食べちゃうつもりなの?」


 リンドウはツバキの言葉に首を振り、


「知ってるだろう?俺は自分からは食いにいかないって。寄ってくるのは拒まない主義だけどな」


 リンドウがそう言うとツバキは食事中のテーブルから立ち上がると椅子に座っているリンドウの横に立ってじっとリンドウを見ながら白のロングTシャツを首から脱いでいった。予想通りTシャツの下には何もつけてない。全裸だ。その見事なプロポーションをじっと見ているリンドウ。全裸になると座っているリンドウの横で卑猥に身体を揺らせて


「じゃあ私を、この身体をいっぱい食べて。昼間から疼きっぱなしで我慢できないの」


そう言って伸ばしてきたツバキの手を掴むと立ち上がり、食事は途中で残したまま寝室に入っていった。


 明け方ベッドの上で全裸で何度目かの余韻を楽しみながら2人まどろんでいると、リンドウの胸に指先を這わせるツバキ。


「いい?何があっても死ぬのはダメよ」


「ああ。あんたのためにもうそう簡単には死ねないよ」


「約束よ。ベッドでは何度も好きなだけ私を殺していいけどリンドウが外で殺されるのは嫌」


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