第5話 ハンター支部にて


 翌日の昼前、3人はリンドウの部屋のキッチンで簡単な朝食兼昼食を取っていた。

 

「次のミッションは入ってるの?」

 

 ルリの言葉に首を振って

 

「しばらく仕事はしない。連続ミッションが終わった足でそのまま徹夜で2人の相手をしたんだぞ、くたくただよ」

 

「うそ。最後までガチガチだったくせに」

 

「そうそう、まだ充分行ける感じだったよね」

 

 二人の言葉に大きく首を横に降るリンドウ。

 

「でも久しぶりに堪能したわ。リンドウとのセックスは最高」

 

ルリの言葉に本当よねと同意するエリン。そして


「普段はお金を貰う方だけどさ、リンドウだけはお金を払ってでも抱いてもらいたいっていう気になるのよ」

 

「そりゃありがとよ」

 

 そう言ってから

 

「ところでそっちはどうなんだよ?何かミッションは入ってるのか?」

 

 ううん無いんだけどと前置きをしてからルリが、

 

「報告に行った時にツバキから暫くD地区から離れないでくれって言われたの。詳しい事は言ってくれなかったけどひょっとしたら何か考えてるのかもしれない」

 

「大規模な作戦とかか?」


「かもね」

 

「だとしたらきついけど報酬はいいわよ」

 

「知ってる。知ってるが集団戦は好きじゃない。声が掛からないのを祈っておこう」

 

 リンドウがそう言うと

 

「恐らく無理ね。ツバキは貴方を買っている。ハンターとしての腕もベッドでのテクニックも両方ともにね」


 リンドウの期待をエリンがバッサリと切り裂いた。

 

 エリンとルリがすっきりとした顔をして出ていった翌日、リンドウは武装した恰好で四層と三層とを隔てている城壁の門をくぐって三層エリアに入っていく。

 

四層と三層を繋いでいるいくつかある門は有事以外の時は常に開いており、その門を潜ったリンドウはキョロキョロとすることもなく右に曲がって壁沿いの道を歩いて行き、直ぐに1つのビルの中に入っていった。

 

 そこはハンター支部オフィスのビルでリンドウはハンター支部のビルに入るとそのまま地下に降りていった。このビルの地下はハンター専用の訓練施設となっていて、ジムや射撃場等が整備されており、ハンターならいつでも利用が可能だ。ハンター本部は同じ3層の中央部分のやや2層よりの場所にオフィスを構えているが支部はどの支部も4層との城壁の門の近くにオフィスを構えている。

 

 入り口で端末を見せて中に入るとロッカーで着替えたリンドウはまずジムに行きたっぷりと2時間程自分の身体を鍛える。

 

 鍛錬は強制でもなくハンターの裁量に任されているが、鍛錬を怠るとそれが死に繋がる商売なので誰かに言われるまでもなく仕事が無い時に鍛錬をするハンターは多い。

 

 ジムを出たリンドウが着替えを終え四層の自宅戻ろうかとしたときに端末を見ると端末が光っていて着信メッセ―ジがあることを伝えている。見るとD地区の支部を統括している支部長のツバキからだ。そちらが終わったらオフィスまで来て欲しいという内容を見てビルの地下からそのままエレベーターで上に上がって目的のD地区の支部長の個室のドアをノックする。

 

「このビルに来ているのが分かったから」

 

 入館情報を見れば誰がいるのかがわかる。リンドウは黙って頷いていると机に座っていたツバキが机から立ち上がって個室の中にあるソファに近づいてきた。

 

 スーツ姿だ。落ち着いたグレーのタイトスカートスーツ。ジャケットはデスクの隣にあるクローゼットの中だろう。白のシャツの胸はボタンが弾け飛びそうな程に膨らんでいて黒いブラのラインが透けて見えており、そして膝上のタイトカート越しに下半身のラインがくっきり浮かび出ている。年齢は30を少し過ぎているが今でも美人で抜群のスタイルをキープしている。元Aランクのハンターで今でも自宅マンションのジムで時間があると身体を鍛えているらしい。

 

 武器を入り口横に置くと勧められるままにソファに向かい合って座る。

 

「エリンとルリのお相手をしてたんでしょ?」

 

 妖艶な目でリンドウを見るツバキ。その言葉に頷くと

 

「あの2人はセックスマシーンだ。自分が満足するまでたっぷりと俺から搾り取っていきやがったよ」

 

「私も女だからわかるの。戦闘で性欲が高まる気持ちがね」

 

 D地区のみならず他の地区でも有名なエリンとルリ。あの2人が共に自分から抱かれたいと思うのは目の前のリンドウだけよと言っていたのを思い出し、そしてすぐに頭からそれを追い払うと目の前のツバキを見て

 

「俺をここに寄んだのは女の性欲について話しする為じゃないんだろう?」

 

 相変わらずぶっきらぼうな男ねと内心で思うが目の前にいる男は戦闘能力については文句無しのレベルであると同時に女から見ると強烈なセックスアピールを感じる男でもある。余りにあっさりしすぎていてもうちょっと未練がましくても良いのにと思ったりする時もあるがそれでも今正面に座っている男を見ているだけで自分の下半身がムズムズとしてきていた。それを悟られない様に一つ咳払いをすると、

 

「もちろんよ。そっちの話はまた後でゆっくりしてあげる。今日来てもらったのはね」

 

 そう言ってツバキが説明をするのを黙って聞いているリンドウ。


 都市防衛本部は4層の外側に広がっている荒野に前線基地を作る事を計画している。A地区からJ地区までの10地区のそれぞれ2地区と3地区とののエリアの境目付近に新しい基地を作る。これら10か所の基地を将来は城壁で繋げて5層として広げる。前線基地はその5層拡張計画のフェーズ1となる。この計画は政府中枢からも許可を取り付けたらしい。

 

「D地区に限って言うとD-2とD-3のエリアの境目辺りにある廃墟を利用してそこに前線基地を作る予定なの」

 

「なるほど。悪くない話しだ」

 

 都市国家の領土が広がるなら悪い話じゃない。年々人も増えてきている。食料や水の確保の観点からも安全な土地は広ければ広い方が良い。

 

「来週の後半あたりから作業が開始されるわ。作業が開始されると24時間休みなしになる。基本はBランクのハンターが作業場の安全確保をし、Cランクハンターは都市国家から作業場までの物資の輸送の護衛をするという担当分けは出来てるの」

 

黙って頷くリンドウ。

 

「それでAランクだけど、遊軍扱いで参加して欲しいの」

 

「遊軍?」

 

「そう。例えばエリンやルリはマシンガンが主たる武器。彼女たちには車に乗って作業場から離れた場所を巡回してもらい、脅威があれば排除する役目。もちろんこの2人以外のAランクのハンター数名にも同じ様に巡回してもらうつもり。交代で24時間巡回をする」

 

そこで一旦言葉を切るとリンドウを見るツバキ。

 

「貴方は戦闘スタイルが特殊よね。スナイパーをお願いしたいの」

 

「なるほど」

 

 スナイパーという言葉で自分の役割を理解したリンドウ。

 

「スナイパーが出来るAランクはこのD地区には貴方以外にもう2人いる。なので3人でその担当をお願いしたいんだけどいいかしら?」

 

「3人ならいいんじゃないか」

 

リンドウがそう言うと思わせぶりな目つきで

 

「ところが他の2人だけど、2人共ランクAになってまだ日が浅いのよ。経験も不足してるわ。なのでこれから作業が始まる来週末までの間、昼間彼らをこのビルの地下の射撃場で鍛えてくれないかしら?」

 

 その言葉にびっくりして

 

「おいおい、教育までさせるのかよ?」

 

「もちろん報酬は出すわよ」

 

「いつも、痛いところを突いてくるよな」

 

 その言葉ににっこりとして、

 

「それと今回の遊軍についてはロングレンジライフルを使用してもらう関係で弾丸代はハンター本部の負担という事で上の了解を取り付けてるの」

 

 リンドウが持っているロングレンジライフルは銃身が1メートル程ありその射程距離は3,000メートルを超える。そのために弾丸も特殊なものを使用し、その弾丸代は1発で10万ギール近くにもなる。

 

「気前がいいな」

 

「貴方の為に交渉したのよ。ちゃんと夜に御礼をしてね。明日の夜私の家に19時で」

 

 そう言うとツバキは自分の端末を操作する。直ぐにリンドウの端末に前線基地建設のミッションの指令とその役割、報酬が掛かれたメッセージが流れてきた。ミッション期間は1ヶ月。

 

 それを一読して同意にチェックを入れて送り返したリンドウ。

 

ソファを立つとツバキに、

 

「その2人には明日の14時に地下の射撃場に来る様に言っておいてくれ」

 

 そう言ってオフィスを出ていくリンドウ。ツバキは少ししてから立ち上がると机に座って自室の扉がしっかりと閉まっているのを確認すると右手を机の下の自分の股間に伸ばしかけたがなんとか理性でその動きを止めて一つため息をつくと机の書類に目を通し始めた。

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