第2話 都市国家とハンター達
時は2XXX年、200年以上も前になるがこの地球上で世界大戦が勃発して地球上にあらゆる兵器が飛び交って人類はその数を大きく減らした。そして戦争終結後に地表はその姿を一変させていた。
地上は瓦礫の山となり、あちこちに崩れかけた、あるいは横倒しになった建物が散在している草木も生えない荒野になっていた。
しかしあちこちに避難していた人類はそこから急速に復旧を始める。生き残った人々は1箇所に集まり自分たちの生活圏を守るために高くて分厚い鉄と石の壁に囲まれた城壁都市を建設していった。
城壁は徐々に拡張されていき、今では城壁の中に百万人以上の人が暮らす程の規模にまで膨らんでいる。
一方で人類と同じ様に無傷だったAIが暴走し始め、人類の遺産であった精密工場をいくつか乗っ取るとそこで機械化した魔獣を製造しはじめたのだ。その機械獣は人類抹殺の使命を受けて日々城壁都市への攻撃を繰り返してきている。ただ幸にして今のところ機械獣は攻撃手段を持っていない。彼らは襲いかかってその重さと勢いで人間や建物を壊したり機械の腕や足を振り回して攻撃してくるだけだ。
もう長年にわたって人類はその工場の場所を突き止めるべく努力を続けているが今のところ工場の場所もそして指示を出しているAIの姿も所在もわかっていない。
このAIの所在を特定し、司令塔になっているAIを倒せば安寧が来るということらしい。らしいと言うのはこの話をしているのが都市国家政府だがその根拠については全く説明がないからだ。
リンドウはシャワーを浴びると軽い食事を取り、そしてしばらく休んでから素肌の上に身体にピッタリとフィットして伸縮性のあるスーツを着る。これは兵器メーカーが開発した最新式の身体保護スーツだ。特殊な繊維でできており衝撃を緩和することができるという触れ込みでかなり高価だったが買ってよかったと思っている。
真っ黒の身体保護スーツで首から足首までを隠すととその上に緑系の迷彩服のズボンとシャツを着て部屋の隅に置いてある銃身だけで60センチ以上もある狙撃銃を手に取り、自室を出ていった。
都市国家と呼ばれている人類が住んでいるこの街というか土地は巨大だ。東、西、そして南と3方を海に囲まれた南に突き出ている大きな半島にその国家を築いている。海に囲まれている3方は高い崖がほとんどだがその中に入江と砂浜がある。機械獣が海から侵入してこないのを確かめると、入江は養殖場と漁港になり崖の上には風力発電機を多数備えて電力を確保することにした。
そうしてその半島から北に向かって何層にも高い城壁を築いていった。
城壁は今では4層になっている。内側から1層2層3層、そして一番外側に4層という造りだ。各層とも広大な敷地となっている。
半島の中央にある1層は政府機関の敷地となっており、2層目は居住区だ。政府機関に勤めるものや金持ちの非戦闘員が2層に多く住んでいる。1層と2層は城壁が大きな円になっていてその中にあるが、3層からは城壁は半島の端から端まで伸びている。2層も広いが、3層はさらに広大な広さをもち、中には武器工場、植物工場、太陽電池のパネル、それに放牧場、果樹園、入江や発電所など様々な生産拠点と都市防衛本部、ハンター本部、情報分析本部など戦闘関連の施設が存在している。この3層の中にも居住区がある。ここは一般国民の多くが住んでいる。そして2層にもあるがこの3層にも大きな公園やそして森もあり国民の憩いの場になっている。
4層は3層のさらに外側、その周囲を都市の外側と接している最も危険に近い場所だ。ここも広大な広さを持ちここには防具や武器の販売店など戦闘関連の店、そこで暮らす人の居住区、スーパー、酒場、レストラン、そして娼館などが建っている。この4層は今の都市国家の半島と外の土地(住民は外の土地のことを荒野と呼んでいる)と接していて、やや丸みを帯びているアーチ状ををしている端が見えない巨大な石垣で作られた城壁に囲まれており、4層の城壁の端もそれぞれ海岸線の岸壁まで伸びている。そしてその長い4層の城壁の上には等間隔で都市防衛隊の砲台群が外の荒野に向かって銃口を向けている。
4層の城壁は何度も手直しが行われ今では城壁の幅は4メートル程あり、その上は普通に歩いて移動ができるほどだ。なんでも昔の資料で見つかった長城と呼ばれていた建造物を参考にしたらしい。
今や小さな国と言える程の敷地になっているが人々はいまだに自分の国のことを都市国家と呼んでいる。それは一番最初に作った城壁の内側に人々が住み始めた頃の名残だ。
ちなみに各層が広いためそれぞれのエリアで無料の電気バスが24時間走っている。ハンターもこのバスを使って広い国家内を移動することが日常だ。
ハンターと呼ばれる人たちは皆ハンター本部に登録された上でハンター本部が指定した地区に配属される。この都市国家は4層から外に出る門が全部でAからJまで10門あり、それぞれの門を中心とする範囲の中にハンター支部を持っている。
リンドウが所属しているのはハンター支部D地区。そしてD門の外に出ると都市国家側から外に向かってD1地区、D2地区とエリアが決められている。そしてそのD地区のハンター支部の支部長が今リンドウにミッションを依頼したツバキだ。
リンドウはその体躯と敏捷性、及び知力を見出され3層内にある学校を卒業すると同時にハンター本部にスカウトされた。そして2年間みっちりと訓練を受けた後Dランクハンターとしてハンター稼業をスタートさせた。そして5年間の間に最高ランクのAランクハンターまで登りつめていった。
AランクハンターはAからJまであるハンター支部の各支部で10名程、ハンター全体でも100名ほどしかないない。ハンター全員で1万人以上いる中の上位1%程度だ。
ハンター5年間の平均生存率が60%という厳しい状況の中、毎年ハンターが投入され、それと同じ数もしくはそれに近い数のハンターが死亡していく。それでもハンター希望者が多いのは報酬が桁違いに良いからだ。
居住区の非戦闘員の平均年収が400万ギールと言われている中、ハンターの平均収入は2000万ギール、ランクB以上に絞るとその平均収入は4,000万ギール以上に跳ね上がる。
死と隣り合わせの世界で機械獣を倒して大金得るのを生活の糧とする。それが都市国家のハンター達だ。
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