第42話 スカーレットに家族はいない

リーズナ視点


気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない、気に入らない。


最近、イライラすることが多いせいで親指の爪を噛む癖が再発してしまった。

幼い頃からその癖があり、家庭教師や両親によく注意を受けていた。

スカーレットにちょっかいを出し始めたあたりからその癖はなくなっていた。ちょうどいい暇つぶしにもなったし、卑しい血の子供のくせに私よりも美人とか生意気だったし。

純粋な貴族としては当然の権利よね。

みんな面白いぐらいに私の言うことを信じて、彼女を悪女として仕立て上げた。

ただのゲーム。

そのゲームに飽きていた頃、スカーレットは変わった。

遊び方を変えようと思っていたけど上手くいかない。

面白くない。

「お義姉様が行方不明‥‥‥」

やばっ。

顔がにやけちゃいそう。

このまま帰ってこなければ良いのに。

どうしてお父様もお兄様も暗い顔をしているのかしら。

あんな奴、どうなったっていいじゃない。

ねぇ、知ってる。

あんな卑しい血の娘がいるから、あんな女にオルガの心臓を奪われたから私たちの家が他の貴族からどう言われているか。

私がどれだけお友達に馬鹿にされているか。

帰ってこなければ良いのに。

「どこかにお出かけしているわけではないのですか?護衛たちが寝る間も惜しんで守ってくれている我が家に侵入者がいるなんて考えずらいですし、考えるだけでも怖いですわ」

「リーズナ、気持ちは分かるが言葉を慎みなさい。それではまるでスカーレットの不貞を疑っていると言っているようなものだぞ」

「申し訳ありません」

間違ってないでしょう。

どうして私がお父様に注意を受けないといけないの。

全部、あの卑しい女のせいだわ。さっさと死んで、正当な血の持ち主にオルガの心臓を返せばいいのに。それがあの女の役割でしょう。

なのに役割を放置して未だに生き続けて。平民って本当に卑しいのね。お友達が言った通りだわ。

「あら。リーズナの言っていることもあながち間違いではないんじゃないですか。所詮はあの女の血を引く娘ですもの」

「母上、スカーレットはそんな奴じゃありません」

エヴァンお兄様がお母様を睨みつける。

ノルウェンお兄様は何も言わないけれど不快気に眉間に皴を寄せている。

どうしてあんな女を庇うの。

私たちの幸せな家庭を壊した女の娘なんか。

あんな女、死ねばいいのに。


『その願い、叶えてやろうか?』


「えっ?」

低く、背筋が凍り付くような声が耳元でした。

驚いて周囲を見渡すけど誰もいない。それにお兄様たちには聞こえていなかったみたい。

だけど気のせいと思うことはできなかった。

今もさすっている腕には鳥肌が立っているからだ。

「あら。あれだけ毛嫌いしていたのにどうしてそんなことが分かるの?『スカーレットはそんな奴じゃありません』?うふふふ。あはははは。おっかしい。ここ最近、スカーレットに変化があったのは私も気づいているわ。それが原因であなた達のあの子に対する態度が軟化していることも知っているわ。でも、それだけよ。それなのにもうその娘のことを分かって気でいるの?」

ひとしきり笑ったお母様は目じりに溜まった涙を人差し指で拭いながら笑みを浮かべる。

妖艶な雰囲気を醸し出しているけどどこか寒々しい笑みだった。

「あなた達こそスカーレットの何を知っているのかしら?」

黙ってしまったお兄様たちにお母様が追随する。

「スカーレットに嫌われ、警戒されいるあなた達があの子のの兄面なんて笑えるわね。ここにはいないわ。誰一人、あの子の本当の家族になっている人なんて。私も御免だわ。家族を奪った女の娘なんて」

「スカーレットには何の責任もない」

お父様の言葉をお母様は鼻で笑った。

「そうと分かっていても割り切れないのが心と言うものです」

そう言ってお母様はお父様の執務室から出て行った。

残されたお父様、お兄様たちは沈痛な面持ちで黙り込んでしまった。重たい空気が流れる。

スカーレットって本当に厄病神よね。

アイツらが来たせいで私の家族は今もバラバラ。生まれて来なければ良かったのに。

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