放タル制作秘話 その2
◆読者選考佳境
「放課後のタルトタタン~穢れた処女と偽りの神様~」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054954440294
蟬時雨あさぎさんから文章レビューをちょうだいしました。サンクス!
読者選考も今日までということで、もう一息ですね。いい結果を祈るしかありません。
ところで企画短編ですが、どうにか書き終えたので近日発表です(これがまた蟬時雨さん主催の企画です)。
KACと同じ感覚で5000字くらいを想定してたんですが(4000字だといつも足りないので)、なぜか3000字に収まってしまい、なぜこれがKACでできないのだろうと首を捻りました。構成力が向上したのでしょうか。答えは今年のKACでわかるでしょう。え、今年もあるよね?
ランキングは110位から109位。最初と似たような順位ですね。
そして、久しぶりの読了作品紹介です。
現代ファンタジー部門/ミステリー
いつしか、キミが、ロリになる
https://kakuyomu.jp/works/16816700427867864546
ロードノベルだったりサスペンスだったりごにょごにょだったり。日本とアメリカを股にかける展開の裏で進行する「何か」が浮上してくるところに構成の妙を感じます。
◆巫女
ここからは前回の続きです。
さて、冒頭と結末は決まったんですけど、その間をどう埋めるかが問題でして――
やっぱり前半は六花の事件を掘り下げていくことになるよなあと。それで、六花と3人の関係を考えるようになりました。
瑞月はシンプルに従姉妹――というだけだと弱いので同居していたことにしました。言語絡みの設定は割りと後発です。
蒼衣は瑞月の幼馴染みのイメージだったので、六花とも接点があり――というだけだとやっぱり弱いのでなんとなく思い付いたミステリ作家の娘という設定を利用しています。そこから六花に作家志望という設定が追加されました。
で、問題はカナです。「カナという名前は
で、問題はそれらの設定をどう自然に物語の中で語っていくかということで――いわゆる当番回を作っていくという発想になり、瑞月、蒼衣、カナの順で設定を語っていくことにしました。
構想時は日常系作品が元気な頃で、わたしも一時期その手の4コマにはまってたりしたのでかなり影響を受けてます。作法室の設定なんかは特に。『ゆるゆり』オマージュとかじゃないんですが。
ああ、それで巫女の設定を思い付いたのですよね。処女じゃないといけませんっていう。ダークな世界に、日常系的な空間を無理矢理作るためのアイディアでした。
設定的に何かしら禁忌が必要でしたし。
それで第二部の原型として、瑞月に好きな人ができて――とかそういう展開を思い付いたのですよね。それも狂言だったとわかる展開なんですが。
いちおう、恋愛を禁じられるという部分をきちんと描くつもりがこの頃はあったのですけど、うまく整合性がとれなくて、瑞月のキャラが変わったこともあり流れてしまいました。
いちおう、現行だと、瑞月はオタクで2次元ラバー、蒼衣は同姓愛者、カナはあの通り無欲というか自分の気持ちがわからない子で、知佳は過去が過去なので性嫌悪というか恋愛がトラウマみたいなイメージでした。
だから巫女っていうのはなんらかの事情で恋愛しませんできませんって子たちの居場所というイメージもあったんですけど、いまの時代恋愛しないのが特別変なことでもないよなあと思うようになって、そういうニュアンスは薄れていきました。触れる機会があれば触れたかったんですけど。
で、全体の構成を穴埋めしてく過程で生まれたのが夢路の設定でした。
ようやくですね。これけっこう後発の設定なんです。
りんご様というオカルトに一定の説得力がほしかったのですよね。それでいて真偽決定不能な設定が望ましかった。それで依代と夢路です。
夢路登場で第一部を締めて、そこから信じる/信じないの話を瑞月の話と一緒に第二部でやろうと。これでだいぶ現行に近づいてきますね。
◆どんでん返し
一方の第三部は知佳がいったん決別して過去バレ、カナの動物殺し発覚という後半の流れだけが決まっていて、前半どうしたものかなと。
悩みに悩んだのが前半の最初のひっくり返しの部分で、実はここ何も考えてなくて、なんとなくここでどんでん返し→いったん別離というイメージだけが頭にありました。
どんでん返しの部分で何をやるかはまったく考えておらず、アイディアを思い付いては整合性の面から精査するというプロセスの繰り返しでした。
けっきょく、なんとなく出したものの役割がなかったアヤを使うことになります。終盤の展開を考えると、瑞月以外に夢路をやってもらう方が都合がよかったですしね。
さらに、そこで知佳の心臓取得計画というミスディレクションを思い付き、不穏さを漂わせつつ日常回をすることにしました。第二部はずっとバタバタしてましたしね。ここらで普通に仲良くなってるとこを描写する必要があったんです。
それで季節柄、使えそうなイベントがバレンタインくらいしかなく、そういう話になりました。
夢路=りんご様としなかったのは、夢路が神隠しを行っている設定だとやはり終盤の展開がやりづらいからです。
それでなんとなくダキニ天説を思い付いたのですけどこれは裏設定にするつもりで――実際、りんご様の正体って別に重要な部分じゃないんですよね。解釈のひとつとしてダキニ天説があるってだけです。ただの例です。これを真相とするのもそれはそれで無理があります。
ここが非常に曖昧なので、知佳の供え物も素直に受け取ってもらえるかどうか怪しくなり、確定的な描き方ができなくなってしまいました。
いちおう、神様はいるものとして考えたときの伏線として、夢路の「大切なのは気持ち」という台詞を用意しているのですけど。神様の正体がなんであれ、気持ちは通じるのではと。ただ、それだとカナはなんで消えたんでしょうか? 謎です。
◆文体
あと言い忘れてましたが、地の文の「ソフィ」って呼びかけもグーディス由来ですね。彼の文体は3人称なのにときどき1人称や2人称が入り交じってくるところに特徴があり、主人公が自分に言い聞かせるような独白が多いんです。
その文体を踏襲し、2人称的に呼びかけてくる何者か=操緒というイメージから双子の設定が生まれました。双子のテレパス的な感じで。尤も、実際には、「知佳の心に内面化された操緒的な人格」と言ったところでしょう。イマジナリーフレンドとか、ソクラテス言うところのダイモン的なイメージです。
竹林のシーンでその内なる声と知佳自身の声がぶつかり合い、そこからは1人称で物語を語るというアイディアも初期からあって――でも、ここは思ったような形にはできませんでしたね。1人称とはっきりわかるのは、最終話だけになってしまいました(前2話は人称を特定させない書き方をしています)。
これは知佳自身の意志を強調する演出でもあり、文体の主観性を強めて現実かどうかを曖昧にする演出でもあり、といったところです。
しかし今回はデイヴィッドはデイヴィッドでも、デイヴィッド・ピースに助けられました。去年の夏、久しぶりの長編が訳出されたのですけど、そこで鉤括弧を排した台詞表現に感銘を受けて放タルでも幕間で使ってみたんです。この演出がなければ終盤の見せ方はもっと悩んで気がしますね。
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