過去編(49,50話あとがき)

◆あとは畳むだけ


「放課後のタルトタタン~穢れた処女と偽りの神様~」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054954440294


 第三部も佳境へと迫りつつあります。もうここからはひたすら伏線回収です。


 ここからは勢いで一気に仕上げた部分なので直しながら公開していきます。演出を調整し、描写をつけたし、曖昧なディテールを資料で補完していかなければなりません。時間、時間が……


 知佳の過去がようやく明かされるわけですが、ちょっと引っ張りすぎたかなとも思います。こういう不幸っぽい過去は最初に明かすのがWebっぽい気がするのです。


 物語を動かす都合上、インパクトがある情報が必要だったのでここを初出にせざるを得なかったのですけど。


 そもそも、インスパイア元の『狼は天使の匂い』がこういう構成なのですよね。主人公の重い過去が後半に明かされるという。


 知佳というキャラクターは構想の過程でだいぶ性格が変わったのですけど、そこは変わらないので、ここがひとつアイデンティティというか。過去の内容はだいぶ変わったんですけど。


 この辺、完結後にまた詳しく語りたいところです。


 ランキングは277位から243位。



◆49話「聖バレンティヌスの殉教」


「聖セバスティアヌスの殉教」、「フラッシュバック」、「仮面の悪意」、「まるで天使のような」と対となるようなエピソードです。


 悪夢の残滓を引きずりつつ、現実でもとんでもないことが起こります。


「匿名の悪意」というのがひとつ、放タルのキーワードとなっているのは以前にも触れた通りです。


 その「匿名の悪意」が再び知佳に襲いかかるのがこのエピソードなのですが、その匿名の意思をを象徴するのがウサギのキャラクターなわけですね。


 アバターみたいなものです。こういうネット的な発想をアナログで再現するのが趣味なんですよね。乙一の「A MASKED BALL」という短編の影響かもしれません。そもそも、デジタルディバイド的な主題も乙一作品の影響があるかも。


「フラッシュバック」から「トイレの告白」へとつながったように、今回も知佳の過去へとつながっていきます。 



◆50話「アンドロギュノス」


 過去編ということで長くなってます。この1話で済ませるために、前後のエピソードは短めに抑えています。


 3話続けてちょっとエロティックな内容になっています。設定的に恋愛を描き得ない話ではあるのですが、過去でくらい思い切った内容をやろうとやっちゃってますね。


 ただ、ここは描写だけでなく内容的にもセンシティブなので、むずかしかったです。性的マイノリティだったり性暴力の問題が絡んでくるわけですから。


 性的マイノリティの部分で言うと、社会的に承認されない欲求を持つことと、それを実行に移すことの間には大きな隔たりがあるわけです。思想信条の自由、イエスロリータノータッチというやつです。


 つまり、操緒が特殊な性的嗜好を持っていることを事件の直接の動因にはしたくなかったのですよね。なので、実理にもそういう旨のフォローをさせてるわけです。


 そして、実理のキャラ付けにより「あるいは合意だったかもしれない」という含みを持たせてはいるのですが、それはそれで加害者贔屓が過ぎる気もして、結果、知佳がかわいそうなことになってしまったわけです。逃れようのない加害の側面を描いておく必要があったので。


 と、かように複雑な問題なのですけど、避けて通るわけにもいかなかったのですよね。今後の展開的にも主題的にも。


 しんどい話で申し訳ありませんが、物語もそろそろ終盤ですので、最後までお付き合いいただければ幸いです。

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