黒髪三つ編み美少女に転生したけれど、エロ過ぎる

土田一八

第1話 転生したら…

 俺は今、43年の人生を閉じようとしていた。


 何故なら、今、足を滑らせて階段を踏み外して下に落ち、手に持っていた抜き身の日本刀で頸動脈を切ってしまったからだ。生ぬるい血があふれ出る。出血が酷い…。蚊を切った後、追いかけて蠅なんか切ろうとするんじゃなかった…。


 しかも、こんな姿で死ぬなんて…。


 と、言うのも、俺は今、半袖紺襟の白セーラー服を着ているのだ。いい歳こいたおっさんがこんなのを着て死んでいたなんて…想像できない。血がどくどく体外に流れ出て銀十字のペンダントや刀、白セーラー服が俺の血をちゅうちゅう吸っている…。ハハ…。さっき、蚊をぶった切ったのにね…。


 そして、だんだん視界がぼやけて意識が遠のいていく。


 俺は無様な死に方で黄泉の国へと旅立った…。



 …。


 ……。


 ………。


 ???「やれやれ」


 …。


 ……。


 ………。



 一匹の蠅が男の死体に停まる。前脚で血を掬い血を舐める。

「まっじいッ‼」

 べっべっ‼

 男の血を舐めた蠅は、余りのまずさに舐めた血を思わず吐き出す。

「あいつら、よく、こんなのちゅうちゅう吸えるなぁ……」

 前脚を擦りながら蠅は呟く。そして飛び上がる。

「よーし、いくら何でもこのままでは寝覚めが悪い。お主にチャンスをやろう…」

 蠅がそう言った瞬間、強い光がその場を包み込んだ…。


 …。


 ……。


 ………。



 どぉーん‼ 


 …。


 ……。


 ………。


 爆音が聞こえ、真っ暗闇の視界が瞬きによって光を認知する。


「あれ……?」


 草の上で私は気がついた。何でこんな所に倒れていたのだろう?私は立ち上がる。その時、自分の格好に気づいて驚く。話には聞いていたが………。


 う・わ・さ・の、ビキニアーマーを着用していた。色は白だ。そして胸も結構ある…。恐らくD…いや、F位はありそうだ。銀のペンダントが谷間に挟まっている。その大きく柔らかいバストはビキニトップの白いアーマーカップによくフィットしている。白い布製のトップ紐は両肩にかけるタイプでホックは背中にあった。そして下を覗くとビキニアンダーは思った程のタイトなビキニでなくて良かった。黒いレザーブーツを履いている。黒いレザーグローブを嵌めたままお尻に手をやる。


 ぷりん。


「……」


 指先の感触は、グローブ越しとは言え、明らかに素肌だった。後ろは思いっ切りTバックだったのだ。

「はあ」

 私は思いっ切り溜息をついた。お尻丸出しじゃん……。その時、ハッと気づいた。

「女になっているじゃん⁉」

 私は驚愕する。時間差で。一応、股間をアンダーの上から手で触ってみる。うん。付いてるものは付いてない。念の為、フロントを前に引っ張って目視で確認する。

「//////」

 うん。見事なオぺレケプが確認できた。私はしっかり、女の子になっていた。心なしか、顔や耳に熱が帯びて来た。私はアンダーを履き直す。アンダーは、内側が白い布で外側に白いプレートが付けられていた。お尻やウェストの布は完全に白い紐みたいに細い。うん。間違いなく紐だ。

 後は胸の谷間に挟まっている銀十字のペンダントが気になった。首にかかっていたが、手に取ってじっくりと眺める。デザインはありふれた波状の十字だが、クロス部分には黒い石が嵌め込まれていた。それから、三つ編みおさげが肌に触れてくすぐったい。おさげは赤いリボンで結ってあった。

「髪の色は黒か…まっ、いっか」

 顔が見られれば、と思ったが、鏡は無いし、他に姿を映し出せる物も無かった。試しにペンダントに写るかやってみたが、波状になっている為か、ぼやけてしまって上手くいかない。うーん、仕方ない。自分の姿を確認するのは一旦諦めて、装備の確認をする。

 まずは武器だ。私はペンダントに命令する。

「抜剣‼」

 すると、ペンダントが変身して大振りの大剣になった。両手で柄を掴む。黒い石のサイズも大きくなり、鍔元に嵌め込まれていて黒く光っている。『黒石大剣ブラックストーングレートソード』と言うそうだが。見た目と異なって余り重さが感じられない。「天の声」によれば、既に「血の契約」が成されているのだと言う。試しに中断の構えを取ってみる。刀身は諸刃で少々幅広で長さは竹刀程でとりわけ長くも無かった。柄の部分は丸く、竹刀より一握り程長めで少し太めのサイズといった所か。鍔は鈎状の形状だ。剣道の要領で振りかぶって素振りをしてみる。


 ビュッ‼


 日本刀のように樋が入っている訳ではないが風を切る音がとても心地よい。それから剣道の技を幾つか試す。


 ザッ! ザザッ! ビュン!ビュン!ザッ!


 ふうふうふう。


 まあ、こんなものだろう。額に流れる汗を腕で拭う。大剣は諸手で扱う両手剣という事もあってしっくりくるし、ビキニアーマーのおかげか動きはすこぶるいいし、グローブやブーツの感触も悪くない。魔法も試したかったがここで力を使うのは良策とは言えない。



 大剣を振り回して昂った精神が落ち着いた所で少し冷静になる。周囲の状況もそうだが、自分の事が何も分かっていない事に気がついた。

「うーん。ゲームとかだったら、ステータスとか見られるのになぁ……」

 そう、独り言を言った時だった。微かに女性の悲鳴が聞こえた。

「あっちだ‼」

 私は大剣を握り締めて悲鳴が聞こえた方角に向かって警戒しながらゆっくりと歩き出した。


                                  つづく

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