第10話 ご主人様のピンチを救え、獣人機コタロウ参上!

 二メートルを超える長身、厚い筋肉に覆われた強靭な肉体。針金みたいに硬い毛皮に覆われ、コタロウの下半身を丸呑みした赤毛のクマ……ファイヤーベアーが現れた!



「わう〜ん」


「はーちゃん、コ、コタロウが!」


「う〜ん、どこかツッコめばいいのやら……とりあえず吐き出させないとかな? しかし、このクマ明らかに場違いな感じするわね。ひょっとしたら、フィールドボスかも?」


「はい! はーちゃん先生、フィールドボスッてなんですか?」


「ふぉっふぉっふぉっ、教えて進ぜよう」



 ハルカはヒゲは生えていないがアゴのエアーヒゲを撫でる。年を経た、老人のような口調で説明をはじめた。



「このゲームは、巨大なフィールドによって世界が作られており、各フィールドは、境界線によって区切られておるのだ。フィールドにはテーマがあり、そのテーマに沿ったモンスターが沸くのじゃが、一定間隔で場違いな強さのモンスターが出現することもある。それらは特別な強さを持つものとして、フィールドボスと呼んでおるのじゃ。わかったかな、リン君?」


「つまりコタロウは、すっごい強そうなフィールドボスに美味しく食べられる寸前ってことだね?」


「まあ、おおむね合ってるけど、美味しいとは思えないわ。あの鋼鉄ボディーは!」


「え〜、噛むほどに味が出るみたいな?」


「スルメじゃあるまいし……って、あのクマ、口から血を流してるわよ。どんだけコタロウを噛み締めているのよ!」


「わう?」



 コタロウは『僕って美味しいの?』と、リンは吠えていた。



「ありゃ〜、コタロウを食べようとして、歯が砕けたのかな?」


「歯が砕けても、コタロウを噛み締めているっておかしいでしょ! もう食べられないのわかるよね? どれだけヘイト値を稼げば、あんな状態になるのよ」


「あっ、はーちゃん大変! 噛めないから、今度はコタロウを丸呑みしようとしてるよ」


「だから、なんでそこまでしてコタロウを食べようとするのよ! どう見ても、生の部分がないロボットなのに!」



 クマは噛み砕けないコタロウを丸呑みしようと、二本足で立ち上がる。コタロウごと顔を上に向け、『アングリ』と口を大きく開いた。


 重力とコタロウ自身の重さも加わり、まるで底無し沼にハマったかのように、少しずつ飲み込まれていく。



「わ、わん! わん!」



 コタロウは焦り、助けを吠える。



「は、はーちゃん。このままだとコタロウ……飲み込まれちゃうよ」


「噛めないからって、ふつう飲み込まないでしょ。まあ飲み込まれても……生きてそうだけどね。仕方ない。助けてあげるか」


 言うや否や、ハルカはデザートイーグルを腰のホルスターから抜き、駆け出していた。クマはハルカに気がつくと、丸太みたいに太い右腕を向かって来る者に一閃する……コタロウを咥えたまま!


 鋭い爪を携えた強力な一撃をハルカは避け、クマの懐に潜り込む。そして無防備な鳩尾に向かって、銃のグリップ底を思いっきり叩きつけた。


 痛烈な一撃に、クマは思わず丸呑みしていたコタロウを吐き出す。鳩尾から伝わる痛みに苦しみながら、地面をバタバタと這いずり回る。


 クマの胃の中にあった物と、一緒に吐き出されたコタロウ……地面に落下すると、何事もなかったかのように立ち上がり、急ぎリンの元へと駆け出していた。



「コタロウ無事だね。よかった」


「わん♪」



 心配してくれたリンに飛びつこうした瞬間――リンはコタロウを避けてしまったのだ。

 リンに受け止めてもらえず、コタロウは頭から地面に落下する。



「わ、わう?」



 なんでなんでと、ハテナマークを出すコタロウに、リンは……。



「コ、コタロウごめんね。クマのよだれと、その他でベッタリしてて、汚れそうだったから」


「わ、わう〜ん!」



 コタロウの身体は、クマの涎とゲ○により、汚れまくっていた。

 

 ションとコタロウは肩を落としていた。



「イヤ、普通に吐瀉物塗れな愛犬に飛びつかれたら避けるからね! そんな思春期の娘に毛嫌いされた父親みたいに、肩を落として哀愁を漂わせないでよ!」


「あとでキレイになったら、なでてあげるからねないで」


「わん」



 リンの言葉に、さっきまでの悲しい気持ちを忘れ、返事をするコタロウ……所詮は犬だった。


 そんなコタロウを置いといて、リンとハルカは『バタバタ』と、のたうち回るクマの様子をうかがう。



「い、痛そうだね。大丈夫かな?」


「イヤイヤ、ボスモンスターを心配してどうするの! これから倒すんだからね?」


「ええ、倒せるのコレ? 強そうだよ?」


「イケる、イケる! 私の攻撃が通っているから、れるはず。これを倒して一気にレベルアップよ♪」


 る気マンマンのハルカは、銃を構えながらにこやかに答える。すると……突然クマさ立ち上がり、リンに向かって爪を振るう。



「わっ!」


「リ、リン!」



 突然の事にリンは反応できず、声を上げることしかできなかった。

 ハルカは、しまったと言う顔でリンの盾になろうと動き出すが、間に合わない!



「キャッ!」



 リンはクマの一撃に殴り飛ばされた。地面を数メートル転がされ、その動き止めた。



「しまった! まさかこいつ、ヘイト値に関係なく突如ターゲットを変更する、ランダムターゲット持ちだったの⁈」


「グゥゥゥワン!」



 クマからリンのタゲをろう、コタロウは吠えていた。するとリンに襲い掛かっていたクマのタゲが再びコタロウに移り、クマの注意を引きつける。


 ハルカは殴り飛ばされたリンの元へ走り寄ると、リンは何事もなかったかのように、ケロッとして立ち上がる。


「リン、痛いとこはない?」


「だ、大丈夫だよ、はーちゃん。どこも痛くないよ」


「本当に? このゲームのショックアブソーバーは、完全にダメージをOFFにできないから、攻撃を受けると少なからず痛みがあるのよね。無理はしてない?」


「本当に大丈夫だよ。全然痛くなかったよ? ダメージも1しか入っていないから、平気だよ」


「え? ボスの攻撃を受けてHPは1しか減ってないの? ちょっとリンのステータスを見せて?」


「うん。いいよ」



 名前 リン

 召喚士 LV2

 HP 55/54

 MP 23/23


 STR 1

 VIT 1 (+240)

 AGI 1

 DEX 1

 INT 1

 LUK 71


 ステータスポイント残り0


 所持スキル

 ペット召喚【犬】



「ん? リン……なんでVITが+240もあるの?」


「え? はーちゃんやだなぁ、そんな訳……ホントだ!」


「イヤ、リン……自分のステータスなんだからちゃんと確認しようよ」


「あははは、でもどうしてだろう? ……あっ! もしかして、この指輪のおかげかな?」



 リンが指にはめた指輪をハルカに見せ、コタロウとクマの様子をチラ見する。ゲ○まみれのコタロウが、上手くクマを引きつけてくれていた。



「従魔の指輪だっけ? 能力を見てもいい?」


「うん。たしか召喚獣と、ステータスを共有するって説明にあったよ」



 ハルカはリンの装備アイテムをクリックして、アイテム説明文を確認する。



 従魔の指輪

 召喚士専用ユニークアイテム (譲渡不可)

 召喚獣とステータスの共有が可能になる。

 共有するステータスは召喚獣の中で、最も高いステータス値を1つだけ共有する。

 効果は召喚獣が召喚されている間のみ。

 召喚獣にステータス補正効果有り。ステータスALL1.2倍 攻撃補正1.5倍。



「どれどれ……ちょ、何コレ、召喚獣の1番高いステータスを共有できるの⁈ そうか! コタロウは鋼鉄のボディーだからVITが異常に高いのね。ヘイトコントロールもできるみたいだし、完全にタンク役って訳ね。だとすると、コタロウの高VITの値が、そのままリンのステータスに加算される? 反則級の能力だわ」


「おかげでクマさんの攻撃を受けても、なんともなかったよ〜」



 フィールドボスの攻撃を受けても平然としているリンを見て、ハルカは呆れてしまう。



「まあなんにしても、リンが無事で良かったわ」


「ワン! ワン! ワン!」



 ハルカはリンの無事に胸を撫で下ろしたそのとき――コタロウは激しく吠えだし、二人に警告をする。


 急に吠え出したコタロウに、二人が目を向けると……クマの前に、巨大な火球が出現していた。



「な、なにあれ⁈」


「火魔法…… あのクマ、魔法まで使うの⁈ まずい。コタロウは物理に強くても、魔法には弱い可能性が……」


「え、魔法に⁈ コタロウ逃げて!」


 リンの必死な声……だがそれと同時に巨大な火球は、凄まじいスピードで打ち出された。

 

 コタロウは避けるために横に跳ぶと、火球は進行方向を変えコタロウに直撃する。



「コ、コタロウー!」



 火球が命中し、コタロウの体を巨大な炎が包み込む、凄まじい火力の火柱が立ちのぼる。



「そんな、はーちゃん、コタロウが……」



 リンは泣きそうな顔で、ハルカの抱きつく。



「え〜と、リン……泣いているとこ悪いんだけど、よく見てみな」



 ハルカの言葉にリンが顔を上げ、火柱が登った場所を見ると……そこには、炎の中で平然とお座りし、後ろ足で耳を掻く犬の姿があった。



「コタロウ!」


「わん」


 やがて火柱は消え、その中からピカピカになったコタロウが立ち上がる。汚物は消毒だとばかりに、○ロまみれだった下半身は炎で消毒され、キレイになっていた。



「よかった。コタロウ、大丈夫そうだの」


「炎系魔法も大丈夫っと……鋼鉄の溶解点を越える温度でなければ、ダメージはないみたいね」


「鋼鉄の溶解点って1500〜1600°cくらいだっけ?」


「正解、リンに+30ポイント!」


「やった〜!」


「しかし、ボス級の攻撃も効かないなんて、ますますもって反則だわ」



 もはや別次元のコタロウの強さを見て、ハルカは呆れ返っていた。そんな少女もまた、他のプレイヤーから見たら別次元の強さを持つプレイヤーなのだが……当の本人は気づいていなかった。



「さて、それじゃあ、ランダムタゲに注意しながら戦うとしますか。コタロウはタゲを固定しながら攻撃して、私もそれに合わせて攻撃する。リンは少し離れて見てて、チャンスがあれば攻撃ね」


「わかった〜」


「わん!」


「あとリン、炎魔法は避けてね。コタロウは平気でもINT1の私たちが受けたら、即死するかも知れないからね。絶対に避けること。いい?」


「は〜い!」


「それじゃあ、るわよ!」



 ハルカは銃をホルスターから引き抜き、クマに向かって走り出す。


 クマは背後から近づく気配に気づき後ろを振り向こうとすると、すかさずコタロウは吠え、攻撃のターゲットを無理やり自分へ変える。ファイヤーベアーの凶悪な爪がコタロウに襲いかかる。


 だがコタロウは、苦もなく横に飛び攻撃を避けると……目の前にあるクマの腕に噛みついた。


 前足の爪を立て、ゲ○塗れにされた恨みを晴らすかのように、コタロウは喰らいつく!


 腕に噛みついた犬(?)に攻撃され、クマは苛立ちを隠せない。噛み付かれた腕をガムシャラに振り回すが、コタロウは口を放さない。


 そこへ、背後から迫ったハルカの銃打がクマに叩き込まれた。


 舞を舞うかのように、華麗な連撃が次々とクマにヒットしていく。身体をクルクルと回転させ、遠心力を加えた重い一撃に、厚い筋肉と鋼のように硬い体毛を持つクマと言えど、ダメージが入る。


 無視することのできないハルカの連撃に、ファイヤーベアーは苛立ち、ハルカを攻撃しようとする。しかし絶妙なタイミングでコタロウが吠え、タゲを変えさせない。


 二人の戦いを見守るリン……その視界には、ファイヤーベアーのHPが表示され、残りHPを3分の2を切っていた。



「ふぁ〜、はーちゃん、コタロウすご〜い!がんばれ〜」



 リンは、能天気に二人を応援する。



「わん!」


「任せておきなさい。美味しいトコはリンにあげるからね♪」



 次々とハルカの攻撃は命中し、クマの攻撃はコタロウが引きつけてタゲを変えさせない。時たま単発の炎魔法を打ち出すが、コタロウには意味を成さない。


 一方的なイジメにも似た戦いが、繰り広げられる。そして十分が経過したところで、ついにボスの残りHPが半分を切り、クマの行動パターンが変わる。


 今まで散発的だった炎魔法を連続で放ち始めたのだ。しかもコタロウにだけでなく、ハルカにも火球が飛んで来た。

 だがハルカは冷静に火球の軌道を読むと、足元にあった手頃な石を拾い火球に向かって投げつける。


 火球に石が飲み込まれると、その場で火柱が上がり火球は消失していた。


「一度見た技は、私には通用しないわよ! 攻撃魔法がターゲットタイプであろうと、当たった瞬間に発動するのは、どのゲームでも一緒ね。数多あまたのゲームをクリアーして来たゲーマーに同じ攻撃は効かないわよ」


 銃を両手に構えハルカは吠え、上級テクニックである魔法の相殺を難なくこなす。



「はーちゃん、カッコいい!」


「フッフッフッ、リンよ、もっと褒めるがよい!」


「はーちゃん素敵! ゲームに命を捧げて15年、いよっ! 彼氏はゲームキャラの女子高生」


「やめてえぇぇぇぇ! 彼氏を作れない訳じゃないわよ! EE7のグラウト様より、カッコいい男がリアルに居ないだけだからね!」


「え〜、ゲームキャラよりカッコいい人なんて、そうそういないよ?」


「いつか探し出してやるわ。そしてリンに自慢するからね」


「じゃあ、楽しみに待ってる♪」



 クスクスと笑うリンとプンプンするハルカ……ハルカは怒りの吐口とばかりに、クマへ猛烈な連撃を打ち込む。


 そしてついに、クマの残りHPが6分の1を切ると、クマの動きが鈍くなる。



「いまなら私でも攻撃できそう! はーちゃん私も攻撃するね〜 」


「いいよ。なるべく背中から『グサッ』とだよ」


「ワン!」


 リンも一緒に攻撃に参加するとあって、コタロウは張り切り、その吠え声にも力が入る。


 『ソロリ』とクマの背中からリンは近づく。コタロウは上手くヘイトを稼ぎ、タゲを固定してくれたおかげで、難なくクマに近づけた。

 リンはその手に持つナイフを握り振り被ると、クマの背中に向けて迷わず振り下ろす。


 

「クマさんごめんね。グサッ!」



【クリティカルヒット!】



 赤く光る刀身は、クマの背中に難なく突き刺さり、クマは前のめりで倒れてしまう。



「やった〜!」


「またクリティカル! ナイスよリン!」


「わん♪ わん♪ わん♪」



 リンとハルカは両手でハイタッチし、コタロウが二人の周りを駆けまわる。


 

「コタロウがタゲを取ってくれたおかげだね。ありがとう」



 足にじゃれつくコタロウを、リンは撫でて褒める。



「ぶう、コタロウのおかげだけじゃないでしょう?」


「はーちゃんもHPを削ってくれてありがとう」


「ああ、リンの……この笑顔のためなら、私は死んでもいい」



 リンの満遍の笑顔にハルカは悶絶する。天使の如きリンの笑顔……同性から見ても、思わず顔が綻ぶ笑顔にハルカはメロメロである。



「また、はーちゃんは大袈裟だな」


「フッフッフッ、さて、レベルはいくつ上がったかな♪ フィールドボスだし、さぞかし経験値をたくさん持っていると……アレ?」


 ハルカの言葉が珍しく止まる。



「どうしたの、はーちゃん?」


「獲得経験値が、24のままでかわってない……まさか⁈」


 ハルカが倒れたクマを見たとき、死んでアイテムをドロップするモンスターは、消えずに地面に横たわっていた。それはつまり、クマはまだ生きていることを物語っていた。


 

「クマの癖に、死んだフリなんて笑えない冗談ね!」



 ハルカは腰に差したデザートイーグルを抜き、その銃口を死んだフリをしたクマに向けた瞬間――リンの頭上に、直径五メートルを超える巨大な火球が現れ、リンに向かって撃ち放たれた。



「リン逃げて!」


 いままでとは比べ物にならない大きさと速度の火球……ハルカは手にした銃で撃ち落とそうとするが間に合わない。

 いや、たとえ間に合ったとしても、火柱が上がり、真下にいるリンは確実に炎に焼かれてしまう。ハルカは自分の詰めの甘さを悔いる。



「ええ⁈」



 リンは、頭上の暑さに気付き顔を上げた時には、火球はすぐ目の前にまで迫っていた。

 巨大な火球に逃げられず、その場に座り込んでしまうリン……だがそれは、腰を抜かして動けなくなった訳ではなかった。

 

 リンは足元にいるコタロウを守るかのように、愛犬に覆い被さる。



「大丈夫。今度は私がコタロウを守るから!」



 抱き締めた愛犬にそう呟いたリンの言葉に、コタロウの中で眠るもう一人の男が目を覚ます。



「リン!」



 次の瞬間、リンの抱き締めていたコタロウは、その手から抜け出すと、落ちてくる火球に向かって跳躍した。


 そして空を駆ける四本脚の獣が、二本足の人型へと、その形を変えていく。瞬時に姿を変えた人型の何かは、手にした盾から素早く剣を引き抜くと、火球に向かって剣を振り下ろす。


 巨大な火球は真っ二つになり、リンとコタロウだった何かを避けながら地面に落下する。……そしてふたつに分かれた火球が、地面に触れると激しい火柱を立てて燃え尽きてしまった。

 

 遅れて、リンの前に『ドスン』と、重い音を立てて着地した人型の何かが、手にした剣を振り、少女を守るかのようにファイヤーベアーの前に立ちはだかる。


「我がご主人に仇をなすとは、なんたる不届きもの。我が名はコタロウ! 我が貴様を成敗してくれる!」



「グオォォ!」



 死んだフリをしていたクマは、迫る脅威に反応し威嚇の唸り声を上げながら立ち上がった。


 剣を両手で持ち走り出すコタロウ……だったなにか!

 背の高さが圧倒的に違うため、大人と幼稚園児並みの身長差のクマに向かって、コタロウ(?)は大きく跳び上がる!


 クマの身長を超えた跳躍から、手にした剣を上段から斬り下ろす。

 クマが太い腕を頭上に掲げ、剣を硬い体毛で防ごうとする。しかしそんなことを無視して、コタロウ(?)の剣はスッと太い腕を切り裂き、その勢いのまま、クマを頭から真っ二つに切り裂いてしまう!


 剣を振り抜いた格好のまま、地面に再び降り立つコタロウ(?)……すると遅れて斬り裂いたクマの傷口にダメージエフェクトが表示される。リアルな流血エフェクトが地面を赤く濡らすと、クマは仰向けに『ズシ〜ン』と大きな音を立てて倒れ込んだ。


 すると倒れると同時にクマも力尽きたのか、ドロップアイテムを撒き散らしながら、体を光の粒子に変え消え去ってしまう。


 リンの前に着地するコタロウだった何か……手にした剣を払い、盾に収めると、リンに向かって振り向いた。



「ご主人、無事か?」


 リンに向かってそれは完全に人の言葉を喋っていた。

 あまりの展開に、リンの思考はパニックにおちいり、頭の中に浮かんだ疑問を口にしていた。



「え? こ、コタロウ? あなたコタロウなの……い、犬だよね?」


「ご主人……どこからどう見ても犬ではないか!」



 どっからどう見ても、犬でない何かが……喋っていた。



…… To be continued 『超難問、コタロウクイズ開幕』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る