第2話 召喚! 愛犬? なんか違う⁈
「なんか、カラフルな文字で可愛い♪ でも……召喚士って、何を召喚できるのかな?」
リンは、目の前に浮かぶモニター画面に表示された虹色に輝く召喚士の文字をタップすると……。
召喚士 ★★★★★
モンスターを倒し契約すると、召喚獣として一緒に戦うことが可能になる。
召喚獣はMPを消費することで、いつでも呼び出しが可能であり、召喚士のメニュー画面から命令できる。
召喚士と仲魔が心を通わせることで、声による命令や自立して行動させることも可能になる。
最初の召喚獣は初期プレゼントとして、表示されたペット召喚のメニューから、好きなペットを一匹だけ召喚できる。
「えと、好きなペットを……召喚できるの?」
ペットの文字を見たリンの顔が暗くなる。それは……一ヶ月前、信号無視の車から鈴をかばって死んでしまった、愛犬コタロウを思い出してのことだった。
コタロウの死に三日三晩泣き続け、一ヶ月たった今でも、コタロウの顔を想い浮かべると泣きそうになる。
「いけない。コタロウを思い出すとまた……ゲームを進めなきゃ、はーちゃんが待っているから」
気を取り直し、再びモニターの画面を見ると、いつの間にか新しいシステムメッセージが表示されていた。
【職業別チュートリアルをはじめます。このチュートリアルは、飛ばすことも可能です。開始しますか?】
【YES / NO】
「とりあえず、よくわからないし、YESでいいよね?」
そしてYESをタップした瞬間、立っていた地面に穴が開き、リンは中へ飲み込まる。とっさのことに何もできず、あたふたしながら数十メートルの高さをリンは落ちていく。
「ひゃぁぁぁぁぁっ!」
やがて広い空間に投げ出されたリンは、地面にお尻から激突し、ようやく落下から解放された。
「い、痛くはないけど、何なのこのゲーム?」
リンはお尻をさすりながら立ち上がると、散々な目に合わされたゲームの進行方法に不満を漏らしていた。
「いきなり落とし穴はないよ。バーチャルの世界だってわかっているけど、リアル過ぎで、まだ心臓がパクパクしてるよ~」
リンが心臓に手を置き、落ち着こうと深呼吸を何回かしている時だった――
「キュウ?」
――可愛らしい動物の鳴き声がリンの耳に届く。
「……ん? なにかいる?」
声の主を探すため、リンは周りをキョロキョロと見回す。すると背後に可愛らしいウサギが
「きゅきゅ~?」
長い耳に白いモコモコの体……クリクリとした目の可愛いウサギが、目の前で首を傾げてリンの様子を見ていた。
「わ~、可愛い。おいで、おいで~♪」
可愛い動物が好きなリンは中腰になり、手を振りウサギを手招く。するとウサギがトコトコと歩き出し、リンに向かって……襲い掛かってきた!
「キシャー!」
「きゃあぁぁぁぁっ⁈」
可愛いウサギがリンの顔目掛けて飛びあがると、お腹が縦に大きく裂ける。
さっきまでの可愛らしい鳴き声とはうって変わって、殺す気満々の酷い声が、裂けたお腹から聞こえてくる。
開いたお腹の口には、鋭い牙がギッシリと生えそろい、少女の頭を丸飲みできるくらい大きく開いた口がリンに迫る。
「コタロウ!」
とっさに横へ倒れ、ウサギの攻撃を回避するリン……ゴロゴロと地面を転がるとすぐに立ち上がる。
急なことで思わず愛犬に助けを求めてしまった……だが、いつもリンを守ってくれていたコタロウはもういない。
「キシャーー!」
さっきまで可愛いウサギだと思っていた生き物が、二足歩行になるとお腹の口を大きく開けリンをさらに威嚇する。
「ええ? か、可愛くない! な、なんなのこの子?」
するとウサギ
「ど、どうすれば? 戦えばいいの? どうやって?」
はじめたばかりで武器もなく、戦い方もわからないリンは、いきなり半べそ状態に……すると、リンの視界にモニター画面が現れメッセージが表示される。
【戦闘チュートリアルを開始します。神器オンラインではさまざまな職業があり、それぞれに特殊な能力が専用スキルとして存在します。召喚士はMPを消費することで召喚獣を使役可能です。まずは初期ボーナスのペットを決めて召喚してみましょう」
「えと……ペットを召喚すればいいの? どうやって?」
するとリンの視界に、点滅するものが見えた。空中に『メニュー』と書かれた文字が浮かんでおり点滅を繰り返していた。
「なんだろうこれ?」
何気なくリンが【メニュー】の文字を触ると……空中にホログラムのように、【特技】【強さ】【装備】【アイテム】【設定】の文字が表示されていた。
「この中に召喚があるのかな?」
特技をタッチするリンの目に、召喚の文字が映った。
「え~と、召喚をタッチして……あっ、ペット召喚があった」
リンがペット召喚を選ぶと、哺乳類・爬虫類・魚類・鳥類など、さまざまな分類がメニュー画面に表示されていた。
「この中から選ぶの? どれにしよう……」
メニューの分類をみた瞬間、リンの脳裏にコタロウの姿が
「どこ? どこにあるの?」
次々と表示されたページをタップしてめくるリン……数ページめくったところで、リンはついに目的の文字を見つけ出した。
その時、ウサギ擬きがリン目掛けて、再び襲い掛かってきた。
「助けて、コタロウ!」
リンは愛犬の名前を叫びながら目をつぶり、『犬』の文字を選択すると……次の瞬間――リンの足元に魔方陣が描かれる。
それと同時に魔方陣の中から、ものスゴいスピードで何かが飛び出だし、襲いくるウサギ擬きを弾き飛ばしてしまう。
突然の体当たりに、数メートルの距離を弾き飛ばされるウサギ擬き……地面をゴロゴロ転がり、ようやく動きを止めると、ヨタヨタしながら立ち上がった。
一体何が起きたのかとウサギ擬きが周りを見回すと、その目に奇妙なモノが飛び込んできた。
それはリンを守るかのように、ウサギ擬きの前に立ち塞がり吠えていた。
「グゥゥゥッ! ワン!」
突如現れた強者の吠え声に、ウサギ擬きが恐怖していた。
「え?」
だが、リンにとって、その吠え声は恐怖するものではなかった。懐かしい吠え声にリンは聞き覚えがあった……いや忘れるはずはない。
六年間ずっと一緒に過ごした愛犬コタロウの声を、リンが聞き間違えるなど決してありえなかった。
コタロウと死別してから、まだ一ヶ月しか経っていないのに、懐かしく感じる愛犬の声にリンは目を開き叫ぶ。
「この声? まさかコタロウ! ……なの?」
魔方陣から飛び出したものを見たリン……だが、なぜか疑問系だった。声は間違いなく愛犬コタロウだったが、その姿は何か違った。むしろ何かどころの話ではなかった。
柔らかでぷにぷにの肉球は鋼鉄のように硬質に!
愛らしかった前足と後ろ足は、鋼鉄のようにたくましく!
可愛らしい犬歯は、鋼鉄のように鋭く!
茶色のフサフサの毛で覆われていた身体は、ツルッとした鋼鉄のように頑強なメタリックボディーに!
赤柴犬独特の明るい茶色と白のツートンカラーはそのままに、少し毛並みというか……明らかにカッチカチで硬さの違う犬(?)が、リンを守るように立っていた。
「えと……コタロウ?」
「ワン」
リンが名前を呼ぶと、すかさず返事をする犬……みたいな何か⁈
すると頭の上には、コタロウの文字が浮かび上がり、その下にHPバーが表示された。
「本当に……コタロウなの? なんか鉄っぽいけど」
「ワン」
そこには犬であって犬ではない、カッチカチな鋼鉄ボディーに生まれ変わった……ロボット犬が召喚されていた!
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