第12話 ダンジョン
朝目が覚めると、もふもふが目の前に! すりすりすりすり……。
『くふふ、くすぐったいくま』
「えへへ、だって気持ちいいんだよぉ」
『サラは疲れてないくま?』
「うん、ぐっすり眠ったおかげで元気いっぱいだよ~! くっきー、ありがとう!」
そぉっとくっきーから離れて起きると、ジークさん達もすぐに起きた。起こしちゃったかな?
「くっきー、朝ごはんにスープとパンを出して貰って良いかな?」
『任せてくま!』
くっきーにスープとパンを出して貰って、朝ごはんの準備をしてみんなで一緒に食べ始める。
「朝からスープで身体も温まるし、美味しいです!」
『美味しいのくまよ!』
「身体が温まって朝からよく動けそうです」
「良かったです」
お片付けをしたら、次の階へ向かおう。今日は26階からだ。ここのダンジョンは30階までなので、後もう少し。
今日は、ジークさん、私とくっきー、レイナさんの順番で進んで行く。罠ってどんな物があるのだろうか? 後で休憩の時にでも聞いてみよう。
歩きながらくっきーはアイテムをアイテムボックスに仕舞っていく。私はくっきーを抱っこしながらジークさんに続いて歩いて行く。
くっきーがアイテムボックスに仕舞うのは見える範囲なら仕舞えるらしい。こんなに可愛いのに凄いんだよね。ついついふわふわすりすりしちゃうけど。
その後も順調に進んで、やっと30階に着けた! 30階は広いワンフロアの階層だった。
「これは……また……すごいアイテムの数でもあるけれど……探すの大変だね」
『そ、そうくまね……』
「そうですね……」
「これはさすがに広いですね……」
気を取り直して、頑張ろう! あんまり離れるのも危ないので、近くにいつつ魔石を探していく。その間にくっきーはアイテムを全部アイテムボックスに仕舞ってくれる。
こんなに広いフロアで探すのはとても大変だけど、床を丁寧に見て行く。フロアの中心あたりを探している時にきらりと光るものを見つけた気がする。
「あっ」
『サラ、あったくま?』
「んと……ここら辺で何か光った気がするの」
「ここら辺ですか……」
「あっ、ありました!」
きらりと光った場所をみんなで探していると、ジークさんが見つけてくれた。
『ほんとくま! ちょっとまっててくま』
くっきーが魔法で魔石を掘り起こすとアイテムボックスに仕舞った。
『これくまね。やっぱりここにもあったくまね』
「これまた登っていくのかな?」
『違うくまよ。あそこに魔法陣があるからそれに乗ると帰れるくまよ~』
そんな話をしていると、深刻な顔をしたジークさんとレイナさんが見えた。どうしたんだろう?
「くっきー様……ここの階層にはまだ誰も到達してないのです」
「えぇ。まだこのダンジョンは未踏破なんです」
『そうなのくまっ!?』
「それってどういうこと?」
「サラ様、ここには人がまだ踏み込んでいないということは、これを埋め込んだのが人間ではないということです」
「ってことは悪い人は人ではない?」
「そういう事になりますね……一度王城の図書館で調べて貰ってみます。レイナはサラ様の護衛を頼んだ!」
「分かりました!」
一気に緊迫感が増した……一体何者がこれを埋めたのだろう?
「明日は北の洞窟はどうしますか?」
『早めに浄化した方が良いと思うくまよ。後は北の洞窟だけでも、他の地域があるくま』
「そうなんです、他の地域も見に行かねばなりません。なので、明日は北の洞窟へ行きましょう! くっきー様、サラ様。明日は馬での移動でもよろしいでしょうか?」
『馬の上からだったらアイテムボックスに仕舞えるから大丈夫くまよ』
「私馬に乗れないのですが、どうしましょう?」
「大丈夫です、私の前に乗って頂きますから」
ジークさんが一緒に乗ってくれるらしい。
「よろしくお願いします!」
とりあえず、今日は魔法陣で1階に下りて外に出る事にする。
『サラ、ぼくに乗るくまよ』
「わ、ありがとう!」
くっきーが大きくなって、私を乗せてくれた。
「あっ!! 昨日もくっきーに乗せて貰えばよかったんじゃ!?」
『くふふ、そうくまね~。でもぼくも抱っこ好きだから良いのくま~』
「もう!」
抱っこされて恥ずかしかったのに……。くっきーに乗せて貰えば良いのを忘れてたよ。明日もそれでいいのでは?
「明日もくっきーに私は乗れば良いのでは?」
『それでもいいくまよ』
「くっきー様が大丈夫でしたらそれでも良いですよ」
『サラくらい乗せても全然問題ないくまよ。それにその方が多分早く着くと思うくまよ』
「では、それでお願い致します!」
明日は私はくっきーに乗っていく事になった。その方が安全だよね、うん!
「くっきー、ごめんね。ありがとうね」
『何がくま?』
「なんか私が足手纏いだなって……」
『サラは居てくれるだけで良いのくま! それが一番大事なのくま!』
「ふふ、ありがとうね」
くっきーに乗せて貰ってジークさんとレイナさんの後を付いて行く。うん、私が歩かないから王都までも早く着いた。うん、やっぱりそうだよね~とちょっと遠い目をしそうになったよ。早く大きくなりたいな。
急いだので、早く王都に着く事が出来た。ジークさんは王城に報告と調べ物を頼みに行った。レイナさんは私の護衛をしてくれている。
しかし、人じゃないなら誰が何の目的で魔石を埋めたんだろうな。被害が少なければいいな……クロサイトの街で冒険者達が怪我をしていたのを思い出した。せめて治る怪我くらいだったらいい……。
くっきーを抱っこしながらそんなことを考えていた。
「サラ様。屋台で何か食べませんか?」
「屋台? あっ、そういえばお昼食べてなかったですね」
「お腹が空くと良い考えが浮かびませんよ?」
『それは大変くまっ!』
「ふふっ、そうですね」
3人で屋台へ行って、何を食べようか選んでいたら丸いドーナツみたいなのがあった。これにしようかな。私とくっきーはドーナツとジュースを買って、レイナさんはパンとお肉とドーナツを買っていた。やっぱり食いしん坊さんなレイナさんです。
「ん。このドーナツ甘いのかと思ったら違った!? 中にお肉が入ってるー!」
「そうなのですよ。クロサイトでは確か甘いドーナツですけど、こちらでは中に刻んだお肉が入っているドーナツなんですよ」
「でもこれはこれで後を引いて美味しいですね」
『このお肉がちょっとぴりっとしていて美味しいくま!』
ドーナツみたいなちょっとしっかりした生地で、炒めたお肉を包んで揚げていて美味しいなぁ。ちょっと生地がさくっほろってするんだけど、中にしっとりしたお肉があるから口の中がパサつかずに食べられる!
うん、でも餡ドーナツが食べたくなるね。
歩いていると、牛乳を売っているお店を発見した。
「あっ! 牛乳がある! ちょっと見て行って良いですか?」
「はい、行きましょう!」
「こんにちは、見せて貰って良いですか?」
「こんにちは、どうぞごゆっくり~」
中を見せて貰うと、牛乳と一緒に生クリームやバターがある。
「きゃー! バターに生クリームがあるっ! わわっ、チーズもあるよ」
嬉しすぎるっ! これで色々お料理の幅が広がるよー! くっきーのアイテムボックスに入れておけば時間が止まっているので、沢山買ってアイテムボックスに仕舞っておいて貰った。
お砂糖と小麦粉とパンも、もっと買い足したいなぁ。食材屋さんに寄って、小麦粉と砂糖、木の実なども買っておいた。オーブンが欲しいなぁ……オーブンあればクッキーとか焼くのになぁ。あっ、でもフライパンでも作れるんだよね~。よし、帰ったら作ってみようかな!
『くふふ、サラが美味しい物を沢山作れるようになったくま!』
「くっきー様、それはステキですね!」
『ステキなのくまよ~』
「ふふっ、2人とも食いしん坊さんですね~」
恥ずかしそうにするレイナさんが可愛いです。そして、材料を色々買い足せたので宿に帰ろう。
宿に帰るとまた食堂の片隅を借りてお料理を始める。レイナさんに休んでて良いと言ったのだけど、お料理が気になると言われた。気を遣わせちゃったかな~。
今日はまたスープを作っておく。後は、クッキーを作るんだ! バター、小麦粉、お砂糖、卵のシンプルなクッキーにしよう。なんたってフライパンで焼くからね!
お料理している間にバターとお砂糖をまぜまぜしてから卵を混ぜて、最後に小麦粉を入れてさっくり混ぜたら生地の完成っ!
生地を小さくコロコロに丸めてフライパンに乗せたらコップの裏で潰して焼いて行く。焼いていると美味しそうな香りがしてきた。
『ハル、何を作っているくま?』
「クッキーだよ~」
『くまっ!? ぼ、ぼく食べられるくまっ!?』
「そうそう、くっきーをあーんっ! って違うよ!」
『ぼくの名前の食べ物があるくま?』
「うん、クッキーはお菓子の名前なんだよ」
『お菓子! 食べたいくま!』
「うん、焼けたらみんなで味見しちゃおうね」
焼けたら次のクッキーを焼いていく。粗熱が取れたら、うずうずしているくっきーとレイナさんに1枚ずつ渡して一緒に食べる。
『美味しいくまっ!』
「サラ様、美味しいですね!」
「フライパンで初めて焼いたけど、美味しいね~」
残りはくっきーのアイテムボックスに仕舞っておいて貰おう。じゃないと、2人が全部食べそうだ。さっきからすごく狙われているんだよね……。
お肉を焼いてパンに挟んだり、すぐに食べられる物をいくつも作っておいた。
お夕飯の時間になったので、3人で仲良くご飯を食べる。食べ終わった後は、それぞれの部屋に入って休む。明日も北の洞窟へ行くので、ゆっくり休んでおかないとね。
くっきーにクリーン魔法を掛けて貰って、くっきーを抱っこしてお布団に入る。
「明日は北の洞窟だね~」
『そうくまね。明日はぼくに乗っていくから寝ててもいいくまよ』
「ふふ、ありがとうね」
もふもふっとむぎゅむぎゅっとしておやすみなさい。
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