会敵36 セキュリティ
「エルマ、悪いんだけどこのメモリーの中みたいの、お願いしてもいいかしら?」
次の日、ミアは俺を伴って、傭兵団司令部の受付嬢に私的なお願い、友達のお願いにやって来た。
「レオの昔の女が写ってるかもしれないメモリーチップが、机の引き出しの奥から出てきて、何でそんなもの大切そうに、いつまで持っているのよ。って、昨日からそれで大喧嘩よ。だから、ここでそんなものが無ければ、私はごめんなさいして終われるの。このモヤモヤあなたなら、分かってくれるわよね? エルマ、私を助けると思ってお願い?」
午後の2時過ぎで一番人が少ない時間帯を狙いやって来た俺達は、ミアが小声で受付嬢にそう言うと、両手を合わせて神頼み中だ。頼まれている金髪ウェーブ受付嬢は後ろに控える俺に一瞬視線を向け、驚いた顔をした後、すぐにミアに視線を戻すと、周囲を伺い、
「内緒よ」
簡単に引き受けた。
俺のミアに殴られて派手に腫れている左目の下あたりに不憫な物を感じての対応だろう。いや、やってみるものだが、派手な演出が必要だとかいうミアの提案にのったのだが、こいつは手加減を知らないのか、昨晩のヘッドロックのお返しとばかりに一発、重い奴を入れてきて、盛大に腫れている。あいつ拳になんか重いもの仕込んでた。何ならすごく痛い。俺自身が本気で悪い事でもしたかと思っている最中だ。暴力、DV反対。
「ミア」
受付嬢がミアを呼んでカウンター越しにあるモニターを回転してみせている。
“パスワードを入力願います”
「レオ、パスワードだって」
ダメだ。そんなものわかるはずがない。
「ミア、いったん引きあげよう」
俺はそう言うと、俺の過去の女の秘密を暴かれるというのに、嬢に何故か礼を言って、自分の持ち物設定なのにパスワードも知らない不自然さだけを残して、傭兵団司令部をミアと共に後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます