マジでどこの馬の骨⁉
藤亮遠真
第1話
この世には親が子供の恋人に対して「何処の馬の骨ともしらぬやつに…」という言葉を発することがある。
なんで馬の骨なんだろう。俺はずっとそう思ってた。
でもある日やっと理解できた。この言葉こういう時のためにあるんだと。
俺は武田たけだ 優まさる 。
しがないサラリーマンで、一応高校生の娘を持つ一児の父だ。
今日は日曜日ということもあり、娘の豊子とよこも俺も妻も揃って家にいる。
「ねぇ、お父さん、お母さん!」
豊子が話しかけてきた。
「なんだ?豊子。」
「今日ねぇ、彼氏がうちに来るの!」
ん?彼氏?彼氏ってあの彼氏?お付き合いしている殿方を指すあの彼氏?いやいやいや。うちの豊子がぁ?ないないないない。だってあの豊子だよ?お父さんと結婚すると言っていたあの豊子が彼氏なんか作るわけないだろ。聞き間違えか。
「あら、あなた彼氏なんていたの?」
「うん。1週間前くらいからね。」
もうダメだ。生きる希望を失った。
「い…いや豊子?普通そういうのって前もって言わないかい?」
「そうよねぇ…さすがに当日に言われると心の準備が…」
母さんも同じ気持ちだったようだ。だいたい、娘が今日彼氏連れてくるって言って平常心を保てる親なんぞ居ないのである。
「ごめんごめん。ついうっかり」
くぅ…愛いやつめ。許しちゃう。
「それでいつ頃来るんだ?その彼氏は。」
ここは父親としての威厳を保たねば。彼氏とやらが来るまでにしっかりと準備しておかねば。
「うーん…あと5分くらいかなぁ。」
5分!?いや5分!?
「5分!?いや5分!?」
驚きすぎて本音と建前も同じになってしまった。
「大変!今すぐ着替えなくちゃ!」
「なぁ母さん。こういう時ってどんな格好をすればいいんだろうか?」
あいにくこういう経験はない。
「あなたがうちに来た時はお父さんスーツだったような。」
「よし、今すぐ着替えてくる!」
まさか休日にまでスーツを着ることになるとは…
『ピンポーン』
来た。来た来た来た来た。
「私が出てくるねぇ。ちなみに彼氏外国人だから~」
はぁ?外国人?いわゆる日本じゃない国の人a.k.a.外国人?
聞いてないよ!やっと心が落ち着いてきたところなのに!
「あなた!どうしましょう!外国人ですって!」
「やばいやばい。日本語は喋れるんだろうか?言葉が分からないのをいいことに結婚まで持ってかれるんじゃ…」
「あなた学生の時はずっと成績1番だったじゃない!英語も得意でしょ?」
そんな過去の話を…
「何年前の話だ…いいか。人は時の流れには逆らえないんだ。何もしなければ忘却するもんなんだよ。」
「でも私は万年最下位でもちろん英語なんて出来ないし…」
「しょうがない。仮にも豊子の恋人だ。告白とかもしたんだろう。豊子が英語を話せるとも思えないし…きっと日本語も分かるだろう。」
「そうですかねぇ…」
もう信じるしかないんです。頼む日本語のわかる彼氏であってくれ!
「もう腹を括って最初に考えてた通り、初っ端ガツンと言ってやるか…」
もう外国人でも人外でも何でも来いだ!
「紹介するねぇ~」
ちょっとして豊子が戻ってきた。
「ふん。何処の馬の骨だか知らんがなぁ、うちの豊子に手を出すとはいい度きょ……え?」
え?なにこれ?彼氏?俺は今何を見てるんだ?幻覚?仕事のしすぎかなぁ。いや…実際その通りかもしれないなぁ。いやぁ、いくら家族のためとはいえ働きすぎは良くないなぁ。
ふぅ…一旦落ち着こう。深呼吸をしよう。さすれば幻覚など消えるで御座候。
…………いや幻覚じゃないなぁこれ!
え?これ見えてんの俺だけ?母さんも見えてんのかなぁこれ!…あ、見えてそう。めっちゃ驚いてるわこれ。
良かったぁ…俺だけじゃなかったわぁ。安心安心。
………いや安心じゃないよ!実際やばいでしょこの状況!
さぁみなさんお待たせしました。いや、すいませんこっちだけで盛り上がっちゃって。今何が見えてるか冷静にお話しますね。
豊子の横にいたのは…いや、あ・っ・た・のは…白く太く立派な物体。一目で何か分かるほどに見なれた形状。きっと以前は猛々しい姿でこの世に生を受けていたのだろうと思える悠々とした姿。
これ、馬の骨だわ。
「えぇぇぇ!何処の馬の骨っていうか、マジで馬の骨じゃん!なんで?どうゆう事?」
慣用句的なやつでしょ?馬の骨って!まじで馬の骨が来た時に言うセリフじゃないでしょ!
「こちら、私の彼氏の『ウマボネ・バコッツ』君」
「なんだそれ!あぁ、そういうこと?外国人って名前が外国人っぽいからってこと?にしても『ウマボネ・バコッツ』ってなんだよ!もはや馬の骨じゃんそれ!」
やばい、思考回路がめちゃくちゃになりそうだ…何だこの状況!異世界転生とかのがまだ有り得るだろこれ!
「あれか!豊子の名前に武と豊が入ってるからか!武豊パワーで引き寄せたのか!?」
武豊パワーすげぇなおい!
「と…とりあえず、座ってくださ…い?座れるのかな?あぁ、お茶とか出した方が…飲めるのかなぁ?」
母さんもとりあえずは客人として招こうとしてるが、如何せん人外なため、人と同じルールで接していいのか悩んでるみたいだ。
「あ…いえ。お構いなく。」
「いやお前喋れんのかい!」
いやお前喋れんのかい!え…こいつ喋れんの?おかしいだろ!なんでこんなに流暢な日本語喋ってんだこいつ!
「いやぁ、すいません。こんな急に尋ねてしまいご迷惑をお掛けしてしまって…」
「そんで礼儀正しいんかい!」
なんだこいつ!見た目さえこうじゃなきゃ好青年じゃねぇか!
「なにより娘さんが彼氏として馬の骸骨連れてくるなんて、私なら目が飛び出るくらい驚きますよ~あ、私飛び出る目なんてないん……「ちょっと待てーい!」」
危ねぇ!何言い出してんだこいつ…大御所に喧嘩を売るんじゃないよ!骸骨でそれ言っていいのはアフロの音楽家だけだぞ!
「ヨホホホホ!すいません。これが私の鉄板ネタなもので」
「ヨホホホ笑うな!」
こいつ!この作品から追い出してやろうか!
「だいたいなんでお前はそんな姿なんだよ!日本語喋っててワン○ース知ってるってことは元々人間だろお前」
「あ、ダメです!」
「ダメ?何だそれ。どういうことだ?」
「これは短編なんで。ジャンプで言う読み切りなんで。」
「はぁ?」
なんだコイツ。急に変なこと言い出しやがって。
「核心に迫ることは連載になってからということで」
「はぁ…」
こうして我ら武田家と娘の彼氏ウマボネ・バコッツとの新たな日常が始まった…のか?
続く………のか?
マジでどこの馬の骨⁉ 藤亮遠真 @ryoma0603
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