第542話 質問タイム

「何でもお聞きください」


「えっと…」


いざ何でも聞いていいと言われると、何から聞いていいか悩んでしまう。


「あなた達は同種が見てわかるのですか?」


悩んでいる間に質問をしたのはソフィだった。


「はい。何の魔人かまでは分かりませんが、我々魔人の同種というのは分かります。それと同時に悪魔と契約しているかも分かります」


何の、ということは魔人も獣人みたいに種類があるのか?ソフィは何の種類なんだろう?

ところで、やっぱり悪魔のこともわかるのか。また、契約している悪魔については悪魔王のように特に強い者は見分けることができるそうだ。


「ところで…悪魔王の契約者様はハーフ?クウォーター?魔人が混ざってますよね?」


「ゼロスで構わないよ。ハーフでもクウォーターでもありませんが、混ざってますね」


「やはりでしたか」


嘘は言っていない。混ざっているのは本当だ。ただ、魔人の血を継いでいるとかでは無い。まあ、それはソフィも同じだけど。


「魔族との関係性を教えてほしい」


「………」


俺がそう聞くと、男は1回俯いてから顔を上げて話し出した。


「魔族は同じ深林に済む他種族。しかも、魔族は対話で和平が成立するほど理性的ではありません。そのため、魔族とは長年敵対関係です。だからといってこちらから攻めることはありません。しかし、稀に攻められる時のために防衛手段は整えていました。その甲斐もあって最近まで魔族による死者は数年に1度くらいでした」


「最近まで…」


魔族とは敵対があるというのはわかった。しかし、最近までという言葉が気になった。


「ここ十数年で魔族は力をつけました。その理由は王の存在です。これまでになかった魔族の王である魔王リュウというのが生まれ、あくまで個々の集まりだった魔族が纏まりを持つようになりました。そのため、魔族の生活圏が増え、さらに本能解消のために暴れるのも複数人でとなりました。それに伴って魔人達の被害も増加しました」


リュウが魔王になったのはここ最近だったのか。風格的に数十年前からだと思っていた。…いや、最近になって頭角を現すようになっただけで、魔王になったのはかなり前かもしれないな。

ちなみに、魔族の本能というのは破壊衝動と殺害衝動の事だ。この本能はリュウやデュラほど強くなればある程度抑えることができるらしい。だが、そこまでの強者は数人だろう。魔族が何十人、何百人居るのか分からないが、ほとんど魔族は本能を抑えることはできない。


「ちなみに、魔人は何人いるんだ?それと、あの女は魔人の中でどれくらいの強さなんだ?」


「人数は百人ほどでしょう」


ベクアの質問は魔人の人数と、俺と戦った女の強さだった。ベクアらしい質問だった。


「あのシャーニは戦闘可能な約60人の魔人の中でちょうど中間くらいでしょう」


あの女の名前はシャーニというそうだ。ちなみに、シャーニはまだまだ若手の部類で、若手の中ではトップクラスの強さらしい。


「今いる魔人でこいつに勝てるのは居るかしら?」


次はエリーラが俺を指さしながら質問をした。男は答えにくそうにしたので、この質問の回答で気分を害すことは無いと約束した。約束はちゃんと守ってよ、ソフィ。


「その質問を答える前に魔人には偉い順の階級があります。まず、1番強い者が王、その次から2、3、4、5番目に強い者が側近となります。魔人全体の方針や行動を決めるにはこの4名の全員の同意が絶対となります。また、6、7、8、9、10番目はその下の幹部となります。そこからさらに隊長、副隊長、一般兵、民と続きます」


その強さの順位は下克上という制度で正々堂々1対1で戦って勝てば前後することがあるらしい。ただ、それは1つ上の相手としか戦えないそうだ。そのため、5番、10番はよく挑まれるため大変らしい。それもあって下克上を挑むのは勝てば次まで1週間、負ければ1ヶ月間の禁止期間があるそうだ。

しかし、この制度で側近と幹部が変わることはまず無いそうだ。さらに、自分から引退する以外で王が変わったことは1度もないらしい。これはシンプルに実力差があるかららしい。


「我は13番目隊長モーゼンです」


「私は副隊長ザゴン」


そして、ここで初めて2人の名前がわかった。


「それで質問のゼロス様に勝てる魔人について話します。我々隊長クラスには勝てると思います。また、幹部クラスに関しても悪魔王様をお使いになれば勝てると思います。しかし、側近クラスには勝てるかわかりません。そして、王にはまず勝てないでしょう。もちろん、これはゼロス様の強さの一端しか見ていない者のただの予想です」


「ありがとう」


絶対に勝てない王か。これはリュウやイムと同等と考えておこう。しかし、そう考えると本当に魔人と敵対しなくてよかったな。


「ん…んん」


「あっ」


ちょうどその質問の答えを聞いてシャーニの目が覚めたようだ。だから質問タイムはここで終わりだな。


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