第449話 手紙
「それにしても、返事早かったな」
「俺もそう思うぜ」
ベクア曰く、グラデンからの返事は手紙を受け取った日にはもう出していたくらいの速度でやってきた。
「内容もグラデンらしかったな」
「だな」
グラデンからの手紙には、
『リヴァイアサンを討伐して素材があるだと!?何を言ってんだ!そんなのを手に入れたら手紙を寄越す前にすぐにドワーフ国に来いよ!設備はどこと比べるまでもなく整っている!良い素材が入集できたならすぐに来い!お前達の装備ならいくらでもこの俺が作ってやるぜ!
それにそろそろゼロスの武器のメンテナンスもしたい頃だ!親方には話は通しておく!だから今すぐに来い!もちろん、中心都市にだぞ!待ってるぜ!』
こう書いてあった。
ちなみに、グラデンの言う親方とはグラデンの父親、つまりドワーフ国の王のことらしい。
「グラデンの言う通り、すぐに行けないのが面倒ぜ。本当ならグラデンの言う通り直行したいのだかな」
「まあ、それはしょうがないだろ」
他種族の領土に行くのはそう簡単にできることでは無い。それも、ベクア、キャリナ、シャナは王族だ。エリーラは王族では無いが、最上位精霊と契約しているとあって身分は高いはずだ。
まあ、俺とソフィは親と今は兄が辺境伯というだけで、俺達自身は身分が高いという訳では無いけど。
「それに、ウカクもずっと着いて来てくれる訳では無いだろ?」
「俺の親父はウカクを俺専門の護衛にするなら王になるしかないって言いやがってるからな」
今回が特例というだけで、本来は護衛の中で最強であるウカクはベクアの父である国王の側に仕えてなければならない。ドワーフ国に連れて行くわけには行かないのだ。
「まあ、手紙を出したから親父がなんて返答するかだな」
「俺らは大丈夫だと思うけど」
ベクアとキャリナは国王に竜車を操縦できる人を1人貸してくれという内容と、ドワーフ国に行く許可を貰うための手紙を出した。ベクアの父がドワーフ国に行くことを許可するとは限らない。なぜなら、ベクアはこの国の王子だからな。
そして、俺とソフィとシャナは実家にドワーフ国に行くからその手続きと学園への滞在延長をお願いする手紙を出した。
俺達はそれら手紙の返事が来るまで動けない。
ちなみに、エリーラは手紙を出さなくていいのか?と聞いたが、
『結界があってエルフの里には手紙は届けられないわ。それに定期報告さえすればゼロスに着いていく分にはどこに行っても問題ないと言われているから問題ないわ』
と言っていた。放任主義というのか分からないが、それで自由行動が許されているのだからすごいな。
「だから明日からは予定通り自由に過ごせるぜ」
「そうだな」
今日はそれぞれ手紙を出したり、ウカク達と今後を話したりでなんやかんや一日が終わってしまった。だから明日から手紙の返事が返ってくるまではのんびりできる。
「まずは明日、俺と一緒に魔力纏の特訓だな!」
「そうだね」
昨日、話のだが、やはりベクア使っていた魔力を纏うのは俺と同じ魔力纏というスキルだった。それを話すと、一緒に特訓してくれと言われた。魔法を使い慣れていないベクアはまだ全然使いこなせないそうだ。だから一緒にコツを掴んで欲しいらしい。
「明後日は何をするんだ?」
「明後日はソフィと無属性魔法の特訓だ」
そして、ソフィの魔力をそのまま放っていたのは無属性魔法だったそうだ。無属性魔法の使い方をまだよくわかっていないので、これはソフィに教わる予定だ。
「明明後日はエリーラとだっけか?」
「ああ」
明明後日はエリーラと精霊降臨で精霊の属性を操るのと、精霊降臨と精霊化の切り替えの特訓をする。
「その間、ベクアはキャリナと獣化と獣鎧の特訓だっけか?」
「そうだな」
ベクアの目から見ると、まだキャリナの獣化と獣鎧は粗削りらしい。俺の目から見たらかなりできていると思うが、やはり妹ということもあり、ベクアは厳しく見ているみたいだ。逆に、ベクアから見ると、まだまだ成長できると思っているということだ。
「キャリナに教えていいのか?それで負けたらどうするんだ?」
「はっ!その程度で負けるような俺じゃないぜ。それに、俺により迫るほど強くなってくれた方が俺もやる気が出るってもんだぜ。まあ、ゼロスが俺の前にいる時点でやる気は十分だがな」
ベクアに冗談でそう聞いたが、何ともベクアらしいセリフが返ってきた。
「よし、じゃあそろそろあがるぞ」
「そうだな」
こうして、温泉での会話が終え、温泉から出た。そして、この日は特に何事もなく終わった。
明日から返事の手紙が揃うまでの間、それぞれの特訓が始まった。
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