第447話 攻撃方法
「ふぅ…」
俺は下に降りて、回復ハーフエンチャントを解除した。多少身体への負担は増えたが、まだダブルエンチャント分が残っているので問題は無い。
今、エリーラは俺が何をするのか警戒してみているだけなので、挑戦としたら今が絶好のチャンスだ。
「ハーフエンチャント」
俺は魔法を使わないエンチャントに挑戦した。
通常、エンチャントとは魔法を身体に付与することで、その属性ごとの能力を上げるスキルだ。それなのに、今回は俺はその付与する魔法を使わずに行った。
俺のエンチャントは魔法の属性を付与していることで精霊化に対しては物理ダメージを与えられていなかった。だからその属性を無くそうとしているのだ。
こんな技術が精霊化を使う者と戦う時以外に必要かと聞かれたら、多分いらないだろう。だが、エリーラに勝つためには必要なのだ。
「くっ…!!」
やはり上手く作動しない。しかし、そこは精霊界から取り出せる無限とも言える魔力量でゴリ押した。
「うぅぅ!!」
「っ!」
俺が急に多量の魔力をその身に纏うのを見て阻止しようとエリーラは魔法を放ってきた。俺はハーフエンチャントに集中しながらも、神速反射と危機高速感知頼りでそれらを避けた。
「しっ!」
それを見て、魔法では防げないと考えたのか、エリーラ本人が向かってきた。さすがに今、血液操作されたら負けてしまう。俺は全力でハーフエンチャントを行った。
『ピコーン!』
『無属性魔法Lv.1を取得しました』
『魔力纏Lv.1を取得しました』
『【称号】純一無雑 を獲得しました』
「っ!雷縮!」
ハーフエンチャントがすんなりとできると、脳内にアナウンスが響いてきた。その瞬間に俺は雷縮で向かってくるエリーラに敢えて近付いて闇翠を振った。
「はっ!」
「くっ…」
エリーラ咄嗟に俺の闇翠を右手に持っているレイピアで受けた。ただ、衝撃を少しでも殺すためにかエリーラは受け止める瞬間に後ろに飛んでいたので、再びかなりの距離ができた。
(称号、戦闘用セット)
今は新しい称号を確認している余裕はない。だから、自動振り分けに任せることにした。これで戦闘に役立つ用なら自動的にセットされるし、戦闘に関係なかったらセットされない。このシステムは地味役立つな…。
「えっと…とりあえずこれはどういう状況だ?」
今の俺は身体に纏っている魔力が2重になっている。試しにハーフエンチャントを解除すると、それが1つになった。そして、魔力纏を解除すると、完全になくなった。
(無属性魔法ハーフエンチャントと魔力纏は別なのか?)
これは俺の予想だが、ソフィが使っている魔力を直接ぶつけていたのが無属性魔法。ベクアが身体に纏っていたのは魔力纏なのだろう。詳しくは試合が終わってから2人に聞こう。
「無属性ハーフエンチャント、魔力纏」
俺は再び2重の魔力を纏った。どうやら、俺の予想は間違っていなかったようだな。
今の俺はケモ耳と9つの尻尾に、3対の蝙蝠のような翼に、バチバチと鳴るほどの雷と黄色と桃色と透明のモヤのようなものを纏っている。色々と見た目が凄いことになってきたな。
「………」
「…っ!」
俺とエリーラはお互いに睨み合っていたが、急にエリーラがブンっと音が鳴っているのではと思うほど勢いよく横を向いた。横を向いた理由はそこに俺の魔力が大量に集まったからだろう。
「転移」
俺はその魔力を集めた場所に転移した。もちろん、これはユグとの精霊魔法だ。
「うぷっ…!」
「うっ…」
そして、俺達は至近距離で2人揃って気分が悪そうな顔をした。それはお互いに属性を操っているからだ。俺はエリーラの体を流れる電気信号を、エリーラは俺の体を流れる血液を操ろうとしているのだ。至近距離でならエリーラの操作力に劣らないほどの電気を操作することはできる。
「う…うおお!!」
「が…がが……」
俺の電気信号操作は身体の動きを遅くしたり、止めたりするが、エリーラの血液操作にはそれがない。もちろん、血流が悪くなっているのでエリーラ以上に気分は最悪だが、体を動かないようにするまでの効果はない。
まあ、血流が悪くなっているので、動かしにくくはなっているけど。
「はっ!」
「ごふっ……」
俺は身体に鞭を打ってエリーラの腹を握り拳で全力近いほどの力で殴った。ちゃんと剣は逆手に持って当たらないようにした。
しかし、俺の動きも思っていたよりも鈍っていたのか、エリーラは数mほどの転がっただけだった。
ただ、血液操作が今の攻撃で切れたのか、もう気分の悪さはほぼ無くなった。
一応、俺はまだ電気信号操作を続けている。まあ、攻撃にも集中しているので、さっきほどの威力では行ってはいないけど。
「…雷縮!」
俺は腹を抑えて咳き込みながらゆっくりと立ち上がったエリーラに雷龍を無詠唱で放った。そして、そのすぐ後に雷縮でエリーラの元へ移動した。
「しまっ…」
エリーラの身体には雷龍がすり抜けている。つまり、今は精霊化を行っている。似たような事をやっているだけで、精霊降臨と精霊化を同時に行っている訳では無いとユグが言っていた。だから、今は精霊降臨で俺の血液を操作することはできない。
「はあっ!」
「かはっ……」
俺は再び右拳をエリーラの腹に突き刺した。今度こそはそれなりの威力にできた。
そして、左手に持っている剣を投げ捨てて、くの字に曲がったことで下がってきた頭をエリーラが吹っ飛ぶ前に掴んで、下の砂に叩き付けた。そして、右手で逆手に持っていた剣をエリーラの首の横の砂に振り下ろした。
エリーラは砂に顔が埋まっているので、何も見えないし、何も言う事はできない。だが、ジャンっ!という音で剣が真横に刺さったのを理解したのか、地面をぽんぽんぽんっと手で3回タップした。
「試合終了!勝者ゼロス!」
「ごほっ…!」
俺はその宣言を聞くと同時に全強化を解除して剣を手放し、両手と両膝を砂浜に付いてドバっと血を吐いた。
どうやら、思っていたよりもさっきの血液操作が効いていたようだ。ここで仕留めきれなかったら危なかったな…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます