第405話 旅館

「海が見えたらもうすぐ到着だからな!」


海が見えると、街までもすぐに着くようだ。


「街に着いたらまずは宿に行くぞ。本格的に遊ぶのは明日からだな」


「あ、見えてきましたよ!」


なんてこれからの予定をベクアが確認していると、キャリナには海が見えてきたらしい。ちなみに、どんなに目を凝らしても俺には見えない。恐らく、キャリナは契約しているニャオナの力を使って視力を強化したのだろう。



「あ、俺らにも本当に見えてきたぞ!」


キャリナが海を見てから数分後、俺達の視界にも綺麗な青い海が見えてきた。それとほぼ同時に街も見えてきた。



「ベクア様、キャリナ様。並びにお連れ様方。ようこそ!海の街オーシャンへ!楽しんでいってください」


門でベクアが竜車の窓からぴょこっと顔を出すと、それだけですぐに通してくれた。元々ベクア達が行くというのは伝えてあったのだろう。また、竜車になんて乗ってくる者なんて限られているから、もうその時点で誰かは分かられているのだろう。



「宿ももう予約を入れてあるから、すぐに行くぞ」


そして、街の中に入ると、すぐに宿に直行した。



「ベクア様方。お待ちしておりました」


俺達がやって来たのは、木造の大きな和風の屋敷みたいな旅館だった。


「竜車はこちらまでお願いします」


「分かった」


ウルザが仲居?に裏の方まで案内されて竜車を移動させた。



「では、ベクア様方。こちらへどうぞ。部屋までご案内します」


「ああ」


そして、俺達は女将?みたいな獣人に部屋まで案内してもらった。


「こちらでございます」


「おぉ…!」


案内された部屋には畳のようなものを敷いてあった。さらに、部屋の中までも和風にできている。また、また、部屋の広さは首都で泊まっていた宿の倍以上はあるだろう。行ったことがないので分からないが、前世の高級旅館と似たような感じかもしれない。

ちなみに、どうやら俺とベクアは同じ部屋のようだ。そして、ソフィ達は俺らよりもさらに大部屋で4人で泊まるようだ。また、ウカクは俺達とは少し離れた部屋で泊まるようだ。



「さて、まだ夜まで時間があるが、海を見に行くか、温泉に行くか、どっちにする?」


「え!?温泉があるのか!」


俺達の国には風呂というものはあるが、温泉というのは無かった。湯元はあると思うが、それに風呂に使うという週間がないのかもしれない。


「もうすぐ日も暮れそうだし、温泉に行くか」


俺とベクアは温泉に行くことにした。その際に隣の部屋にいるソフィ達にもその事を伝えると、ソフィ達も準備をしたら温泉に行くようだ。



「「あ゛〜〜〜」」


俺とベクアは体を洗ってから2人で温泉に浸かった。2人しておっさんのような声を出した。ちなみに、ここの温泉がそうなのか、異世界の温泉全部がそうなのかは分からないが、温泉特有の硫黄のようなにおいはしなかった。その代わりに、心が落ち着くようなアロマ?の匂い何かがした。

ちなみに、露天風呂は無かった。まあ、異世界の身体能力だと、露天風呂なんか作っちゃうと上から覗き放題になるからな…。

また、温浴ではなく、ちゃんと男女別れていた。




「ベクアー」


「なんだー?」


リラックスしているせいで気の抜けた声になりながらではあるが、ベクアに少し聞きたいことがあったので話しかけた。


「他の客がいないけど、理由はあったりするのか?」


ステータスが高いからか全然のぼせなくて、もう1時間弱は浸かっているが、誰もやってこない。また、旅館内でも一般客とは誰とも出会わなかった。


「それは俺がこの旅館を貸し切ったからだぞ」


「まじかよ……」


この大きな旅館を貸し切るって一体いくらかけたんだよ……。


「俺らが泊まる時はいつも貸し切っているぞ。高級宿はここ以外にもあるから大丈夫だぞ」


「いや、心配してるのは他の客じゃないから」


観光地ということもあって宿はかなりの数あるそうだ。だからここ1つを貸し切っても泊まる宿が無いということにはならないそうだ。

まあ、俺が心配しているのはそこでは無くてお金のことなんだけどな…。



「そろそろ飯の時間も近くなったし出るか」


「そうだな」


俺達は温泉を出て部屋に向かった。結局、1時間以上温泉に使っていたな。



「遅いわよ。いつまで入っているのよ」


「ごめん、温泉が気持ちよくって」


俺らが部屋に戻ると、そこには温泉からすでに上がっていたソフィ達がいた。ここの居間で6人全員で食事をとるそうだ。


それからみんなで食事を取った。ちなみに、その時に魚は出なかった。ソフィが少し残念そうにしていたが、これは海をしっかり見てからそこで取れたての魚を1番に食べた方がいいと考えたベクアが旅館に初日は魚料理を出さないように伝えていたらしい。

そして、この日は長旅という精神的疲れがあったのか、夕飯を食べてからそれぞれの部屋ですぐ眠りについた。



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