第235話 契約+別視点

「それにしてもよく俺はこの玉を剣に嵌めようと思ったな」


俺は偶然にも唯一とも言える正解である行動をとったということだ。


「それは少し違うな。玉は仮の魂だ。仮でも魂は器に収まろうとする。それが無意識にお前に影響したのだろう」


全然俺が凄いわけではなかった。これは玉に導かれた結果らしい。



「それと最後に一つ言っておくことがある」


「ん?」


獣王が尻尾を剣にトントンっと当てながら話しかけてきた。


「私達がこの中にいる状態だと良くて5割の力しか出せないだろう」


「え?」


「もちろん剣一本に対して精霊と獣など二つの種属を入れられる事は関係していない。理由はそもそもこの器は私達王と契約するという想定なんかしていないからだ」


「あー…」


確かに種族の王の力が剣に収まらないと言われたら納得する。


「なら俺は2人の力を半分までしか使えないの?」


「最後まで話を聞け。それは剣の中に宿しておいた時の話だ」


でも俺の体には既にユグとジールが入っているからどうしようもなくないか?あ、そうか。2人を外に出したら最大の力を出せるな。でも、それだと色々と使いにくい場面も多いな。



「見当違いのことを考えていそうだからちゃんと説明する。戦う時に合わせて体に宿すのを変えればいいのだ。幸運な事に剣は両方とも精霊も宿せる。だから一旦精霊を剣に移すことも可能だ」


仮の魂である玉を使って契約して、剣に宿したとしても、主は俺であるからその移動はできるというわけか。


「それと、精霊降臨は精霊をその身に宿すとは言うが、厳密には精霊を纏っている状態に近い。その状態なら私達が君の中に入れる。ついでに、精霊界にどちらかが行く場合でも体が空く。」


なるほど…つまり、ジールを精霊降臨して、ユグに精霊界から魔力を貰えば、俺は悪魔王と獣王の力を最大限使えるということか。さらに先のことだけど2人を精霊降臨しながら悪魔憑きなんて事もできるのか。



「まあ、この話は未熟な精霊王ですら満足に使えない者にする話ではないがな。今の君だと高く見積っても私達の力は3割強しか出せないからな」


「えーー……」


しかも3割強は1人に全力で集中した場合らしい。それじゃあ何のために今の話したんだよ…。俺の興奮を返せよ。というかお前はすぐに俺から出ていくつもりなんだろ?なら関係ないじゃん……。



「それで我らとの契約はどうする?そろそろ時間が無くなるぞ?」


「そうだな」


俺は剣を取りに行くためにベッドから立とうとした。すると、剣は勝手に俺の元までやってきた。お前はいつから俺の言うことを聞いてうごけるようになったの?



「ブロス、ダーキこれからよろしくな」


悪魔王にブロス、獣王にダーキと名付けた。そして俺と悪魔王と獣王の契約は成立した。



『ピコーン!』

『悪魔魔法Lv.1を取得しました』

『悪魔化Lv.1を取得しました』

『獣化Lv.1を取得しました』

『【称号】悪魔王使い を獲得しました』

『【称号】獣王使い を獲得しました』

『【称号】精霊王使い、悪魔王使い、獣王使いを統合して【称号】三属の王使い、王の支配者 を獲得しました』



予感はしていたがスキルと称号が新しく手に入った。そして新しいスキルを使うとまた称号を手に入れそうな気がする。またどの称号をセットするか考えなくてはいけないな。新しい称号は嬉しいけど、そこは面倒だな…。














◆◇◆◇◆◇◆


???視点



「…どこに行く気だ?」


私は急に立ち上がった同胞に声を掛けた。


「聞かなくてもわかってるでしょ?」


確かに聞かなくても分かっていた。なぜなら私達は同じ物を見ていたのだから。


「言い方を変える。何をしに行く気だ?」


「それもわかってるよね?ここに連れて来るの」


「ここに連れてきて何をする気だ?あいつは魔族では無いぞ?」


「魔族にすればいいんだよ」


「まだレベルも低いから進化できないだろ。それなのにどうやっ……まさか!」


私は最悪な事を考え付いてしまった。私が驚くのを見てそいつはニヤッと笑った。


「多分想像通りだよ?ここに居る魔族を全部あの子のレベル上げのための餌にすればいいんだよ。そうすればレベルもかなり上がると思うよ?それに魔族が居なくなればここに連れて来ても全く問題ないでしょ?」


「魔族にしたら契約が無くなるぞ?」


それを気にしていたはずだ。だから前は無理に連れ帰るのを止めたはずだ。それに、4つの契約が解除されたら今連れてくる理由も無くなる。それがあるから無理にでも連れてこようとしているのだろう。



「魔族にもすればいいんだよ。複数の種族が混在できるのはわかったからね。問題は次の進化で魔族が混ざるかどうかだけど、僕といっぱいヤれば称号も出るだろうし、そこは心配しなくても大丈夫だと思うよ?」


「私がそんなことさせると思うか?」


私は立ち上がって行く手を遮った。こいつを行かせてはならない。



「俺と戦う気か?誰がお前を魔王にしてやったと思ってんだ?」


「その姿を見るのは久しぶりだな」


いつものボーイッシュな女の姿からガタイのいい男の姿に変わった。ちなみに私がこいつと初めて会った時はこの姿だった。



「ふふ…なーんてね。こんな姿をあの子には絶対に見られたくないからね。もうこの姿になることも無いと思うよ。万が一見られたらショックで何をするか僕でも分からないからね。それにランク付けすらされていない魔物の僕のような雑魚魔族がSSランクの竜の魔族には勝てないよ〜。まぁ…もちろん負けることも無いけどさ」


再び女の姿に戻った。こいつの元になった魔物はスライムだ。スライムは性別なんてない。だからこいつにも性別なんて概念はない。男でもあるし、女でもある。



「ドラゴン君のおかげで魔族の生み出し方もわかったし、今のところは何もする気は無いから安心していいよ」


「………」


こいつが座り直したのを見て私も座った。いつかこいつが敵になった時に私は…いや、魔族は勝てるのだろうか…。





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