第229話 対校戦の変化

「クラウディアの予想通り対校戦が行われるみたいですね」


「そうだね」


今日に正式に対校戦が例年通りに行われるという発表があった。今は家の俺の部屋で2人っきりでソフィとその話をしている。



「表向きには特にこちらに不利な条件は無いようですが……」


「表向きはね…」


留学生が集まって居るのにも関わらず、特にこちらに不利な条件は追加されなかった。ただ、神聖タグリオンからは聖女と勇者も対校戦に参加するというお達しはあった。



「ですが、例年と大きく違う点もありますね」


「そこが問題なんだよね」


一見全く問題ないのだが、不自然に少しルールが変わっている。

それは、最初に代表戦を3日間で行って、2日の休憩を挟んでから最後にサバイバル戦を行うというところだ。



「つまり、今回の順位が大きく決まるメインはサバイバル戦ということになりますね」


そこが去年と違うのだ。去年までは代表戦がメインだった。しかし、今年はサバイバル戦がメインになった。つまり、対校戦の勝敗がサバイバル戦によって左右されることになる。



「…可能性として有り得るのが、サバイバル戦が私達対その他の国々になるという事ですかね」


「それはどうかな?」


でも、ベクアやエリーラのような留学生も追加される去年の優勝チームに周りが手を組んだくらいで勝てると思っているのだろうか?その場限りの即席チームで連携なんて取れないだろう。



「俺的には勇者と聖女を組み合わせたかったように思えるな」


前世でのフィクションの物語などでは、勇者と聖女は共に戦うことが多かった。もしかしたら一緒に戦うことで何かあるのではないかと疑ってしまう。



「それと、気になるのがサバイバル戦のルールですね」


そして今回は既にサバイバル戦のルールは発表されている。そのルールはこうなっている。


今回のサバイバル戦ルール

・朝の9時から各国の10人チームで始める

・勝利条件は自国以外のチームを全て退場させる

・夜の9時まで複数の国が生き残っていた場合は、残っている人数の数で勝敗を分ける。

・夜の9時になって残っているチームの人数が同じだった場合は個人戦の成績で勝敗を分ける。

・舞台の広さは1辺1kmの正方形とする。




「驚くほどシンプルですよね」


「馬鹿でも分かるようなルールだね」


ちなみに今回も致命傷を与えると自動で退場となるシステムみたいだ。



「ですが、今回は何かを守る必要は特に無いので、私達からしてもやりやすいですね」


「確かにそうかもね」


今回は多くの敵を倒せばいいだけだ。シンプル故にこちらもやりやすい。



「父様や母様や兄様も見に来ると言ってたから情けない姿は見せられないね」


「そうですね」


ちなみに母様と次男のジャドソン兄様は園内戦も見に来るそうだ。

それと、父様達はみんな元気に街の復興に取り掛かっていると連絡があった。父様の怪我を貰ったハイエリクサーで治そうとしたのだが、断られた。何でも、息子から施しはあまり受けたくないそうだ。それに、まだエリクサーくらいならいいが、ハイエリクサーは第一宝物庫クラスなので、使ってしまうとどこで手に入れたかの説明が面倒だから嫌だとの事だった。




「サバイバル戦をどのような作戦でいくか考えなくてはなりませんね」


「あれ?ソフィはもう対校戦に出場できるつもりなの?もしかしたら園内戦の初戦の相手が俺になって、何も出来ず無様に負けて外れることになるかもよ?」


これは冗談だ。ソフィがメンバーに外れるわけは無いと思う。というか、俺がソフィを無様に負けさせれるほどの力の差はない。



「お兄ちゃん…たった1回私に勝ったからって少し調子に乗ってますね…?前の園内戦で負けたのを忘れたのですか?それに知っての通り私は悪魔憑きの練習をしていますよ?」


俺が魔力供給の練習をしているように、ソフィも悪魔魔法を上手く扱うための練習をしている。



「悪魔魔法さえ使えれば私はもうお兄ちゃんには負けませんよ。お兄ちゃんは大人しく私の後ろで私に守られてください」


「ソフィこそ、可愛くお兄ちゃん助けて…って俺の後ろで甘えてきてもいいんだよ?」


「私はそんな守られるだけの妹は目指してませんので結構です」


お互いに冗談だと言っているのが分かるからこんな会話も楽しく思える。2人で一緒にふざけあっているのがわかるからだ。



「今度の園内戦も私が勝ちますから」


「去年みたいに最後に油断もしないし、俺が勝つから」


去年は最後の瞬間に分身を前に置かれたせいで上手く俺の攻撃が当てられずに負けた。今度はそんな油断は絶対にしない。



「ならまたなんでも聞くというのを賭けますか?」


「いや…止めとかない?」


今は俺に対する好意も隠していないので、ソフィの何でもはやばい気がする。


「あれ?お兄ちゃんは妹のソフィに負けるのが怖いの?」


「分かったよ…受けてやるよ!」


やはり俺は煽り耐性が低い。あんな言い方をされると兄として受けざるを得ない。



「ちなみに私が勝ったらお兄ちゃんからのキスをご所望しますからね?」


「はあ!?」


「ちなみにみんなの前でするなら唇が触れるだけの軽いキスで許しますが、2人っきりでの場合はディープキスでお願いしますね」


「お前……」


安易に賭けに乗ったことを後悔し始めた。その条件だと、どっちにしても責任問題が発生してしまう。



「お兄ちゃんが勝てばいいだけですよ?」


「そうだな、俺が勝つからソフィの希望は叶わないな」


「まあ、私が勝ちますけど」


「俺が勝つよ」


「ふふふ……」


「ははは……」



精霊達を助けるという事情はあるが、園内戦は楽しみになった。もしかしたらソフィはここ最近思い詰めていた俺に気を使ってくれたのかな?さて、俺が勝った時にソフィに何を聞いてもらおうかな。考えておかないとな。



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