第194話 魔力供給の仕組み

「戦いも終わったみたいだから、ジールを連れてくるねっ!」


「あ…」


それだけ言ってユグは俺の中に入ってきてどっか行った。ん?俺の中に入ってどっか行った?矛盾している。どういうことだ?



「はぁ…」


というか、この2人?の悪魔置いてくなよ…。今起き出したらどうするだよ。

そしてユグがいなくなって少ししたら俺への魔力供給は止まった。




「わぶっ!」


「…おつかれ」


「ありがとう…」


いきなり何かを頭からかけられた。上を向いて確認すると、エリーラが冷たい目でこっちを見ていた。俺が1人で戦ったことが不満だったのかな?

ちなみにかけてくれたのはエリクサーのようだ。体の傷がもう元通りになった。





「ゼロくん!ただいま!」


「あ、おかえ…り?」


ユグが俺から再び現れた。ユグの後にジールが現れたのだが、いつもの悠々とした様子は全くない。逆だった髪も垂れていて、心做しか顔をげっそりしている。


「ジール…大丈夫?」


「大丈夫…だと……」


ジールはそう言いながらゆっくりと、俺の肩に手を置いた。


「誰のせいでこうなってると思ってるんだ!?」


「うぇっ!ご、ごめん!」


「お前は何してたんだ!ユグに魔力渡した後は足りない分だけ補充するだけでよかったはずが、何で常に魔力を渡し続けなければいけないんだ!?」


「ジール、どうどう。落ち着いて」


突然叫び出したジールの背中をユグがそう言いながら摩っている。今のジールは情緒不安定だ。


「とりあえず今回の魔力渡しの原理を説明するね?」


「お、おう」


ジールの背を摩りながら、ユグは今回の原理の説明を始めた。今のジールの状態を治すのは後回しなのね…。


「まず、ゼロくんの新しいスキルの精霊使いについて説明するね?」


「うん」


「精霊使いは《精霊の使いの者》っていう意味があるの」


「使いの者?」


「うん。精霊と人を繋ぐっていうこと。方法がちゃんと分かって、魔力が大量にあれば、ゼロくんは精霊樹や魔法陣なんか無くても契約していない精霊を呼び出せるよ」


つまり、もしもの話だが、俺のように産まれた瞬間から魔法スキルを取得している人がいれば、俺が精霊魔法を教えてあげられるということか。


「ちなみに精霊は精霊界っていう精霊しか入れない場所に住んでいるのね。そこは魔力が空気中でも豊富にあるの。だから人間と契約していなくても、物に触れれるし、自由に魔法も使えるの」


「そうなのか…」


逆に言うとここでは、空気中に精霊界ほど豊富な魔力が無いから契約者に魔力を貰って魔法を使っているのか。


「さっき話したように精霊使いは精霊を精霊界から連れてこれるの。これはつまり、精霊界と今いるこの世界を繋げることができるの」


「ほうほう…」


「それの応用として、精霊界から魔力を持って来ることもできるの。ただ、ゼロくんにはまだそんな高等技術出来るわけないから、ジールが代わりに魔力を持ってきたの」


「なるほど!」


確かに精霊使いを取得したばっかりなのでそんなことできるわけが無い。


「ゼロくんが精霊使いを使って精霊界の空間中の魔力を持ってくると仮定すると、その時は網で必要分な魔力を捕まえて持ってくればいいの」


「うん」


「でも、ジールがやろうとすると、まず精霊界にゼロくんを通して行く。それからゼロくんに意識を集中させて、どのくらいの魔力なら渡していいのかを見極める。そして最後に必要な分だけゼロくんに押し付けなきゃいけないの」


「それって一気に魔力をどかんっ!っていう感じに渡せないの?」


「ユグが近くにいたら、多かった分の魔力をユグが貰えばいいからそれでいいんだよ。でもユグが遠くに行っちゃうとすぐには渡せないでしょ?それなのにそうするとゼロくんの体が魔力の量に耐え切れずにバーンッ!って爆発しちゃうかもしれないの。だからといって少なく渡したらゼロくん困るよね?だから限界ギリギリを見極めなきゃいけないの」


簡単に言うと、まず戦闘の様子も見ていないのに、俺の魔力事情を完璧に把握する。それから必要な分の魔力を押し込む。という2ステップをしなければならないのだ。それなのに、俺の魔力は勢いよく無くなっていく。だからジールは常に魔力を押し込めないといけなかったのか。


「…ジールお疲れ様。ありがとうございました」


「おう…苦労がわかってもらえたなら良かったぜ」


それだけ言ってジールは俺の中へと戻って行った。



「ゼロくん?まだ説明終わってないよ?」


「あ、そっか」


魔力の渡し方の説明が終わったから終わったと思ってしまった。そういえば精霊使いだけじゃなくて種族も関係してるんだったか?


「ユグはゼロくんに渡した魔力はどこから取ったものって言った?」


「精霊界でしょ?」


「そうそう!精霊界の魔力は誰が使う用?」


「精霊達?」


「うんうん!だから精霊界から魔力を持って来たとしても、普通は精霊魔法としてしかその魔力は使えないの」


「え!じゃあ何で?」


俺は精霊魔法以外の魔法でも貰った魔力をガッツリ使っていた。


「理由は簡単だよ?ゼロくんが精霊だから」


「へ…?」


「あっ、もっと正確に言うと精霊王なのかな?」


俺の種族名は雷獣精人王だ。あ…これは精霊王が混じってるって言われても不思議じゃないわ…。


「だからユグとは腹違いの姉弟って感じかな?」


「おう…」


あ、ユグが姉なのね。実年齢的にはそうかもしれないが、見た目年齢と精神年齢的には違和感がある。

それにしても俺が精霊王か…。


「あ!でも安心して!ゼロくんは多分そこまで濃く精霊王が混じってる訳じゃないと思うよ!現に精霊王が交代してないから!あと、精霊には近親相姦っていう概念が無いから、ユグとも…その…あれができるからね?」


顔を赤らめてモジモジと照れながら可愛らしく言ってきたところ申し訳ないが、俺が気にしているのはそこでは無い。そうか…俺はとうとう本当に人間を卒業したのか…。



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