第148話 午後の狩り

「あまりキョロキョロするなよ」


「あ、ごめん」


午後になったので、昼食を食べてから城の外に出て魔物を狩りに向かっている。エルフだから草食という訳ではなく、普通に食べ物は肉が出てきた。そして、里の家等も木材だけでは建ててるのでは無く、コンクリートに似た何らかの物を使っていた。ちなみに外に出た瞬間にキョロキョロしてしまった理由は周りの家だけではない。


「精霊が多いな…」


だいたいのエルフは、どのエルフも精霊を出しているのだ。ただ、その精霊達は光る玉だったり、小さな生き物だったりしている。ちなみに小さな生き物に似た精霊達は、鳥に似た精霊や蜥蜴のような精霊まで種類は様々だ。そして、たまに5cmくらいの小さな人型の精霊もいる。エミリーさんの話によると、光る玉が下位精霊で、小さな生き物が中位精霊らしい。そして人型の様な精霊は上位精霊らしい。その上位精霊からは言葉による意思疎通を図れるらしい。


「女王様、こんにちは」


「こんにちは」


そしてたまにエルフの女王様であるエミリーがエルフ達から挨拶をされている。ちなみに、挨拶しているのは上位精霊と一緒にいるエルフだ。通常時は女王様に挨拶できるのは上位精霊以上の精霊と契約しているエルフだけらしい。ちなみに今の俺はジュディーさんが肌の色を隠すために使っているスキルを俺にも使ってもらっている。そのため、俺の見た目は普通のエルフに見えているらしい。しかし、エミリーさんとティヤさんとジュディーさんと一緒にいるこいつは何だ?みたいな目では見られている。



「ここからは魔物が出てくるから注意しろよ」


「はい」


城から出てから3時間ほど歩いた時にジュディーさんにそう言われた。今日は道を覚えるために歩いて向かったが、明日からは走って向かうらしい。


「最低でもいるのはDランクの魔物だから気をつけろよ」


「はい」


そして魔物が現れるまで歩いた。しかし、すぐに魔物を見つけることができた。いや…見つけてしまったと言うべきだ。


「やはり最初の魔物はこいつか」


「…きもい」


出てきたのは2m程の芋虫のような魔物だった。こいつはDランクではあるが、正面の口から吐き出される糸にさえ気をつければ子供でも倒せるらしい。それなのになぜDランクの魔物なのかはちゃんと理由がある。


「この魔物は進化するととても厄介になるから、見つけたら緊急事態以外は討伐を義務付けている」


「厄介?」


「ああ。最終的は10mほどの蛾になる。そうすると、飛びながら毒を撒き散らす。何より精霊樹の樹液を吸ってしまう」


「精霊樹??」


エルフの里には100m以上の巨大な樹が存在しているらしい。俺はそんな樹はどこにも見えなかったが、エルフ以外には見えないようにしているらしい。なぜなら精霊樹の葉や枝は様々な素材として利用出来るので、倒そうとする者が大昔からいたらしい。ちなみにエリクサーは精霊樹から落ちた葉から作られているらしい。そのため、エルフ以外には見えないように結界を大昔から張っているらしい。俺にも精霊樹を見せるために結界を改造できないか試しているところだけど難しいらしい。結界を切ることも本気で考えていたから止めた。

あと、エルフが精霊と契約するためには精霊樹の前で祈りを捧げる必要があるらしい。俺は魔法陣のようなものでやったと話すと、それは1度しかできない裏技みたいなものらしい。もちろんエルフにも1度の祈りで精霊が現れないことの方が多いらしい。そのエルフは来年再び精霊樹に祈りを捧げるらしい。そして契約できるまで何度でも祈りを捧げるらしい。そのため、精霊樹が無くなると、ほとんどのエルフが精霊と契約できなくなってしまうかもしれないということだ。だから樹液を大量に吸って精霊樹を枯れさせる危険性がある蛾になる前に確実に殺すらしい。ちなみに蛾はSランクの魔物らしい。



「はぁ…」


そんな話をしている間に芋虫は少しづつ近付いてきている。気持ち悪いが討伐しよう。


「縮地」


最近はあまり出番がなかった縮地を使って、一瞬で芋虫の横に移動して真っ二つにした。縮地は便利だが、強敵と戦っている時に使っている余裕が無いんだよな…。だって直線移動しか出来ないから、もし読まれていて使った場所に合わせて何かされたら躱せないからな。俺の最大の武器である高速反射とあまり相性が良くない。

ちなみに折れた剣の代わりの予備の剣がマジックリングにあったが、マジックリングは俺の食いちぎられた右手に着いていた。俺が起きてからそれを聞いて、エミリーが止める暇も無いほど急いで取りに行った。しかしその場に俺のマジックリングは疎か俺の手も無かったらしい。ものすごい勢いで謝られたが、別に大事なものはお金くらいで、替えのきかない物は特に無かったので問題は無い。そして代わりとして2本の剣を貸してもらっている。あげると言い張っているが、どう考えても俺が元々使っていた剣よりも何十倍も高価なのでエルフの里を出る時には返す予定だ。だって今もめちゃくちゃ斬れ味が良かった。芋虫を斬った時に、ぶよぶよとしたあの気持ち悪いボディの感触なんて全くなかったぞ。


「では次に行きましょう」


「はい」


一応この芋虫ことキャタピラーから採取できる糸は服などにも使えるので、ジュディーさんがマジックリングに入れていた。後で誰かに解体させるらしい。そして俺は暗くなるまで魔物を狩り続けた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る