第143話 現状確認

「そうだったんだ…」


「うん…」


俺はユグから昔から仲も良く強かった自然の最上位精霊と、その精霊と契約しているエルフの女王に助けを求めたと伝えられた。その結果、俺は生きてエルフの里に来たらしい。ならまず俺が言わなければならないことは決まっているだろう。


「ユグ、ありがとう」


「…ぇ?」


「ユグが助けを呼んでくれなかったら俺は死んでたよ。ユグのおかげで助かった。本当にありがとう」


ユグは俺がお礼を言うとあれ?という顔をした。ユグは俺がエルフに精霊王であるユグと契約しているのをバレたくないというのを知っていた。だからきっと、バラしたことを怒られるとでも思っていたのだろう。そんなことするわけないのに。


「ぶじでよがっだよ゛〜〜」


「ごめん、心配かけたね」


ユグは俺が怒っていないと分かると泣きながら飛び付いてきた。俺がまだユグと精霊魔法を使えないので、何もできないことをずっと気にしてたのだろう。俺が不甲斐ないだけなのに申し訳ない。そんな俺たちの様子をジール以外は涙ぐみながら見ている。


「感動の場面を邪魔して申し訳ありませんが、私からも話したいことがあります」


「ど、どうぞ…」


俺は泣いているユグを撫でながら女王の話を聞いた。内容は大雑把に分けると、俺が戦った人型ドラゴンは魔族で、そいつは生きている。そしてそいつらは逃げて行ったので街には被害はない。それとほぼ同時に王都にドラゴンが襲った。それを仕留めたのはソフィで、死亡者はいなかった。そして、俺は留学生として暫くの間は、このエルフの里に滞在することになっている。ということだった。つい、何度か口を挟んでしまった。そのせいで余分の時間を使わせてしまった。とりあえずソフィ達が無事で良かった…。もちろんドラゴンと魔族では強さは魔族の方が上だが、しっかり倒したソフィと少し傷を付けられた俺とでは比べてしまう。



「エルフの女王様、失礼ながらお願いがあります」


俺は自分の中の様々な感情を整理してからそう話し始めた。ちなみに一応考えもあって、できるだけ堅苦しい言葉で話した。


「ゼ、ゼロス様!そんな畏まらないでください!」


「女王様が畏まるのをおやめになりましたら、私もやめようと思います」


「むー………」


一応俺も貴族ではあるので畏まられるのは慣れてはいる。しかし、エルフの女王から畏まられてしまっては、本当にエルフの王になってしまいそうだ。まあ…俺が女王に畏まらない時点でまずいのだが、それは俺が無礼な奴だということで通せる。通せるよね?


「……わかったよ。それでお願いって何?」


畏まられるのと、畏まらないのを比べた結果、畏まらない方がいいという結論になったらしい。


「もし良かったらでいいので、誰か精霊魔法を教えてくれない?」


本当は絶対にエルフの中で位が高いであろうこの3人に言うことでは無いのだろう。しかし、ユグと契約しているということで了承を貰える可能性はある。俺はもう腕の中にいるユグに責任を感じて欲しくない。俺が弱くて俺が負けるのは…まあいい。だけど俺が負けた時に、ユグが強過ぎて一緒に精霊魔法を使えないということなんかでユグを苦しませたくない。そんなことをさせない為にユグと精霊魔法を使えるようになりたい。


「なら私が教えましょう」

「なら私が教える」

「なら私が教えよう」


「「「む?」」」


俺がそう言った瞬間に3人が一斉に私が教えると言い出した。そして今度は3人で睨み合っている。少しの間睨み合っていると女王がため息を吐いてから話し始めた。


「…3人で教えましょう」


「うん。その方がゼロス様のためになる」


「もし間違った教え方をしてもその場で訂正できるしな」



「…えっと…ありがとうございます」


まさか3人全員で教えてくれるとは思わなかった。ユグという存在を甘く見ていたかもしれない。ユグと契約できたのは今世の中でも、上位に君臨するほどの幸運かもしれない。ユグと契約してなかったらこんなことにはなっていない。今更だけど、女王のことは分かるけど他の2人は誰なんだろう?


「あ、改めて自己紹介をしますね」


俺の目線で何を言いたいかわかってくれたようだ。と思ったけど、俺は2人を見て首を傾げていたので、これなら誰でもわかるだろう。


「自然の最上位精霊であるネイと契約しているエルフの女王で、ハイ・エルフのエミリー・ジャネットですよ!」


「影の最上位精霊のアーテルと契約してる女王側近で、ホビット・エルフのティヤ・コンシニ」


「重力の最上位精霊のグランと契約してる女王側近で、ダーク・エルフのジュディー・ヴェイユだ!」


「精霊王であるユグと、雷の最上位精霊であるジールと契約している人間のゼロス・アドルフォで…え!?」


俺も3人に続いて自己紹介をしようとしたのに途中で止めてしまった。ここにいる3人は普通のエルフじゃなかったの!?もしかして俺で言う人間をやめたと同じように、エルフをやめているのか?というかジュディーさんはダークエルフって言ってるのに肌は普通の色だよ?どこがダークなの?一体どうなっているんだ?


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