第92話 到着

「あの…ゼロ兄様…帯電は解除しておいた方がいいですよ?」


「え?」


馬車の窓から顔を出して神聖タグリオンを見ようとしていたらソフィからそんなことを言われた。


「はい」


「ん?」


そしてソフィは急に氷魔法を使って氷で鏡のようなものを作ってこちらに向けてきた。器用だな…。


「え!ださっ!」


その鏡で自分のことを見てみるととても髪型がダサかった。感覚で髪の毛が逆立っているのはわかっていた。想像ではどこかの戦闘民族が黄色の髪に変化した時のようになっているような感じで逆立っていると思っていた。しかし実際は下敷きを頭に擦って持ち上げた時のようになっているだけだった。もっと帯電すれば想像していた通りになるかもしれないがそんなに帯電した状態で街中を移動する訳にはいかない。なので帯電をそっと解除した。


「おおう!」


少しは帯電の影響で髪がそのままになるかと思っていたがすんなり元通りに戻ってくれた。ちなみに今は魔力がMAXだったので帯電を解除しても雷吸収は発動しなかった。

そしてとうとう俺たちは神聖タグリオンに入国した。




「うわっ!白い!」


「でもここまで白いと目に悪そうですね」


神聖タグリオンでは建物の色が白で統一されている。知識としてはそれを知っていたが実際に目にするととても驚いてしまった。また、真っ白という訳ではなく少し黄色がかった白色だった。ちなみに対校戦が終わるまでは観光の時間などは与えられていない。対校戦が終わったらソフィとシャナと一緒に観光に行きたいな。






「おおう!!」


またもや驚いた。何に驚いたのかと言うとこの国での宿の様子だ。この国に来る前は一応貴族の子供も使うので普通の宿よりグレードは少し高い程度の宿を用意されていた。ちなみに俺は宿のグレード何てものは分からなかったが、ウォレスさんたちが教えてくれた。そして神聖タグリオンでは見るからに最高級とも言えるような宿が用意されていた。確かに他国からやってきた人達にはそういった対応になるのか…。

そして料理の味が少し薄味だったことを除けばとてもいい状況の中で首都までやってくることができた。




◇◇◇◇◇◇



「ついに明日開会式だね」


「そうですね」


「ん」


今は首都の宿の食堂で少し薄味の料理を楽しんでいる。ちなみに5日間ほど余裕を持って行動していたので首都に着いた時には開会式まで5日間時間が空いてしまった。しかしその間は神聖タグリオンが用意していた訓練場を使うことができたので久しぶりにちゃんと動けて楽しかった。


「明日の開会式で今年のサバイバル戦の形式が発表されるんだよね?」


「はい」


そして明日にとうとうサバイバル戦がどのような状況下でどのようなルールなのかが発表される。そしてサバイバル戦は今から3日後、つまり開会式から2日後に始まる。なので開会式の次の日で対策を完璧にしなければならない。


「よっぽどのことがない限り私たちの作戦は変わることはない」


「そうだね」


シャナの言う通り作戦はもう立ててある。あとは明後日でその作戦に最終調整を入れるだけだ。


「明日の開会式は頑張ろうね」


「開会式に何を頑張るんですか?」


「あっ…」


なんか気分的に明日から始まるという感じなので明日に気合を入れていた。そっか…開会式しかなかったわ…。でも各国のリーダーは選手宣誓的なものをしなければならないのでそこは頑張ろう。


「ではおやすみなさい」


「おやすみ、また明日」


「おやすみ」


そして明日のためにいつもより少し早く寝ることにした。緊張と楽しみでなかなか眠れないかと思ったがすんなり眠ることができた。波乱の開会式が始まる。

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