第43話 お風呂

「お風呂入りたいんだけど・・」

 食事が終わると、愛美が上目使いに蒼乃の反応を伺うように見た。

「うん、沸かすわ」

 蒼乃は、すぐに気持ちよく聞き入れ、お風呂の用意を始めた。

「沸いたよ」

 お風呂が沸くと蒼乃が愛美の下に行った。

「ありがとう。あの・・」

「何?」

「着替え貸してほしいんだけど・・」

 愛美は、何も持っていなかった。まさに着の身着のままだった。

「ああ、私のでいい?多分、サイズ同じくらいだと思うんだけど」

 蒼乃と愛美は背格好は同じくらいだった。蒼乃はここに来てから買った、まだ新しい自分のタンクトップと短パンを貸してあげた。


「ふぅ~、気持ちよかったわ」

 愛美がお風呂から上がって来た。だいぶ、長湯だった。愛美はお風呂が好きらしい。

「ありがとう」

 愛美が夕食の後かたづけをしていた蒼乃のところに来て言った。

「うん」

 蒼乃が愛美を見る。風呂上がりに上気し、火照った愛美は、さらなる妖艶さを増していた。

「・・・」

 蒼乃は、そんな愛美の姿態を魅入られたように見つめてしまった。それはただ顔形がいいとかそういう単純なことではなかった。女という体の内面から湧き出すように放たれるフェロモンのような魅力が、これでもかと溢れ出していた。

「すごいお風呂ね」

 愛美は蒼乃にすぐ横まで来て言った。お風呂上がりのいい香りが、愛美の全身を包んでいる。

「う、うん」

 蒼乃はそんな愛美に、なんだかやっぱりどぎまぎしてしまう。

「びっくりしちゃった」

 愛美の厚い上気して真っ赤になった唇が、蒼乃のすぐ横で怪しくうごめく。

「う、うん」

 蒼乃の顔は自分でも分かるほど真っ赤になっていた。

「同性なのに、何してるんだろう」

 そんな自分に蒼乃は、なんだか訳が分からなかった。

「・・・」

 そして、すぐ横にある、タンクトップから覗く、その年に似合わないその下の大きな胸の膨らみに・・、目が行ってしまう・・。

「・・・」

 下着はつけていなかった。愛美の胸は、真新しい白のタンクトップを引き破らんばかりに引き延ばすように大きく膨らんでいる。

「どうしたの?」

 愛美が蒼乃を至近距離から覗き込む。

「えっ、ううん」

 蒼乃は慌てて顔をさらに真っ赤にして目を反らす。

「ふふふっ」

 愛美はそんな蒼乃の内心を見透かしたかのように、怪しく微笑んだ。

「ちょっとビール買ってくるわ。お金貸してくれない」

 愛美が言った。

「えっ、う、うん」

 蒼乃は、お金の入った籠のところに行き、そこから一万円札を一枚取ると、それを愛美に渡した。

「ありがとう」

 愛美は笑顔で受け取ると、蒼乃に背を向けた。

「えっ、ていうかその格好で行くの」

「うん」

 愛美は気にせず、上はタンクトップ、下はショートパンツといった、かなり露出度の高いそのままの格好で外に行ってしまった。しかも、多分、下も下着はつけていない。

「・・・」

 大丈夫だろうか。町が町だけに余計に心配だった。

「ちひろ、お風呂湧いてるよ」

 蒼乃は、愛美がお風呂から上がったので、ちひろのところに行った。

「いい」

 しかし、ちひろはテレビから目を離そうとすらしない。

「たまには入ったら」

「いい」

 即答だった。

「もう」

 ちひろは、やはりなかなかお風呂に入りたがらなかった。仕方なく蒼乃は自分が入るべく、お風呂場に向かった。

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