第11話 臨時全校集会

 翌日、急遽全校生徒が、体育館に集められた。

 無論、出っ歯共は、いない。この場に、いられよう筈もない。

 疑念と疑問と疑惑が、渦巻く静寂に満たされた空間に、場違いな男がやって来た。

 その男は、太鼓腹を高級背広で包んだ禿親父だった。設樂の狸を彷彿とさせる。

 とは言っても、校長先生に、面と向かって、そんな事を言う奴はいない。

 タ……もとい、校長先生は、太鼓腹をゆすりながら、壇上に上がる。

 流石に有名進学校。下種なイジメが存在しても大多数の生徒は、大人しく静寂を守っていた。

 まずは、教頭先生から、ご挨拶と全校集会開催の宣言だ。

「……コホン……それでは、これより全校集会を開催致します。では、校長先生宜しくお願い致します。」

 今度は、壇上のタ……もとい、校長先生が、マイクに向けて話しかける。

「皆さん、お早うございます。本日は、皆さんに残念なお知らせを、しなければなりません。心して聞いて下さい。」

 咳ばらいをマイクに入れることなく、一拍置いて本題を切り出す校長。

「昨日、本校から、逮捕者が出てしまいました。詳細な情報は、警察の捜査完了を待っての事となります。今は、取り急ぎ伝えなけばならない事を、お伝えします。」

 壇上のタ……もとい、校長先生は、涙を堪えているかの様だ。

「今、この瞬間も、本校の生徒が、警察に身柄を拘束され、取り調べを受けています。もし、事情を知っているなら、警察より前に学校、先生にお話しして下さい。お願います。」

 今度は、壇上のタ……もとい、校長先生が、額を教壇にこすりつける。土下座せんばかりだ。

 すると、突然「バッ」と顔を上げる壇上のタ……もとい、校長先生。

「しかし、私は、信じています! ここにいる皆さんは、善い子です。本校の誇りだと! 決して、警察や社会や学校に迷惑をかけるような、生徒などいない。そう、信じています。」

「知らないのか。お前が言う所の本校では、今同時進行で、6件のイジメが存在する。」

 等と言う無駄口を叩かない宗竜だった。

「それでは、皆さん、憶測や、それに基づくデマを、真に受けない様に、軽挙妄動を慎み、健やかなる学校生活に、努めて下さい。」

 最後に、教頭からの訓示と共に、全校集会は、閉会した。


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