31話 隣にいなくてもすぐに繋がれる。電話って便利

深夜0時を回りぼくは榊原にメッセージを送った。

『ねぇ榊原。田中堅って知ってる?』

既読はすぐについた。

何時まで起きてるんだ?

『知ってるぞ!だが知らん方が身の為だ!!』

そうかな。普通の先輩みたいだったけど、同姓同名の違う人のこと言ってるのかな。

『メガネかけてオールバックの、多分うちの学校の先輩なんだけど』

『二つ名は知ってるのか?』

世の中の高校生に二つ名はないよ榊原。中二病か?

『二つ名なんて知らないよ……。知り合いなら連絡先とか教えてくれない?』

榊原がちょっとしつこかったけど何とか連絡先を教えてもらい、僕はついに田中先輩に電話をかけた。

「もしもし」

聞こえてきた声は確かに田中さんの声だ。

「こんばんは。矢部総一郎です」

「ああ!こんばんは!」

優しい声だけどどこか息を切らしているように聞こえる。

「お忙しかったですか?」

「いやそんな事はないよ!少し日課をね!矢部くんこそこんな時間にどうしたんだい?」

「蘇我島さんと話したいんです」

「うん?……うん」

「でもその、そこには霧原さんたちがいるので、出来れば助けてくれないかなって」

「いいとも!私も日課だけでは物足りなくなってきていたんだ!」

あ、戦闘狂なのかなこの人。アウトローの人みたいだしそうかもしれない。

「では例の倉庫で」

「分かった。倉庫で合流しよう。ただし朝一でいいかな?」

「大丈夫です。朝の何時ごろですか?」

「目立つ時間は避けたいから5時頃にしよう。何をしたいのかは今は聞かないよ。ただ倉庫がどうなっているのかは想像がつくんだ。彼は粗暴だし短気だからね」

「……はい」

すごい。電話越しにも知性が溢れてる。榊原が言ってた二つ名についても納得してしまう。きっと探偵とかそんな感じの二つ名が付いてて、それを僕が探していたから榊原は心配したのかもしれない。

帰ったら榊原に心配させてごめんって言わなきゃな。

「あぁそうだ。すまない。少し準備が必要だから近くの公園にしよう。町場公園は分かるかい?」

「はい」

「ではそこにしよう。着いたら電話して欲しい。君が何をしようとしてるのかは分からないけど、君は私の後輩だからできるだけ協力してあげたいんだ」

僕が女だったら惚れそう。

カッコ良すぎる……。

「それじゃあまた朝に」

「はい。おやすみなさい先輩」

僕はため息をつくときた道を戻りはじめた。

結局お散歩になってしまったけど確かに寝ないと仕方ない。

あと明日葉さんの家の鍵開けっぱなしなのが今更怖くなったのもある。

明日葉さんの家のソファを借りて眠る。

流石にベッドはちょっと……女の人の部屋に入るのがまず初めてというか女の人の部屋で放置されるのも初めてなのでどこで寝るかすら悩んだけど座り込んだソファの柔らかさでここならまだ大丈夫という謎の自分への許しを得た。

そもそも親御さんはどこにいるんだろう、いないのかな……。

詮索するのは良くないか。特に今の僕は女の人の部屋に入り込んで寝る不審者と言われても仕方ないし。

よくない考えといらないかんけいばかりがめぐる。

もっとかんがえなきゃ……ないのに……。



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毒舌かわいい矢部さんは男の娘!! 明日野 望 @asunonozomi5

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