三十二話いともたやすく行われるえげつない行為
「おはよう矢部くん」
「おはようございます田中先輩」
田中先輩のオールバックはこの早朝にも関わらずしっかりと決まっている。
微笑みがこれからさらう人間の品定めみたいで怖いとは言えない。
「さて、倉庫に向かう前の準備が必要だと言ったね。少し着替えてくるから待っていてくれるかい?霧原武会相手には仕方ないとはいえ流石にあまり外で見せるとまずい。おまわりさんに見つかるのもね」
僕が頷くと田中先輩はトイレに入っていった。
仕込み武器でも使うのかな。
あ、野良猫だ。かわいい。
野良猫を目で追っていたらトイレの扉が開いた。
「本当に公衆トイレは臭いが酷いものだ!全く気が滅入ってしまうね。一張羅だと言うのに臭いがついてしまう」
格好にこだわるタイプなんだ。
猫を眺めていた視線をトイレに向けた。
「お待たせ」
榊原に関わらない方がいいとまで言われた理由が分かった。
それと同時に僕は一瞬だけ、本当に一瞬だけ脳内で葛藤した。
僕とこの人の格好は果たしてどれくらいの違いがあるのか?いや絶対違う絶対違うけど僕がこの人の格好を否定できる自信がなかった。
僕が見たのは『人の手を結んだ伝説のアイテム』を装備した田中先輩。
直に見るとあまりにもおぞましかった。
「それじゃああまり時間もないし行こうか」
一緒に歩きたくない……。
「その……。その格好はなんなんですか……?」
当たり前みたいに行こうとするのを黙って受け入れる事に耐えられなかった。
「?ああ。これはね。私が一年生の頃から少しずつ改良を重ねて作った完成品。『グローブビキニ』だよ」
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