第10話 パパ活とは活きのいいパパイヤの刺身のことです
商業施設から出て、僕は先輩達の後ろをついて回っていた。
多分、嫌がったら帰らせてくれたのかもしれないけど、僕はしれっと先輩が会計している時の服の値段が万を超えているのを見てしまった。
とはいえバイトもしてない僕にそんな額は払えない。
どうしよう。そう思っていたら先輩は提案してきた。
「では、その服とこれからかかるものは全て、我々と今日行動する事で0円という事にしましょう。付き合わなかったとしても同じ事ですが、心労は減るでしょう。違いますか?」
ここまでしてもらってさらに気を遣われて、その上帰るなんて言い出したら相当わがままなんじゃないか。
今日一日の我慢だと思えば。
そもそもこのお金を出した人は何を考えて僕にお金を出すと決めたんだろう。
その人の話も聞きたい。
「パパ活みたいでありますな!」
笑顔でそう言われるとそうかもしれない気がしてきた。
「明石ちゃーん、どっからそう言う言葉覚えてきちゃったのかなぁ?」
明日葉さんが怖い顔してる。
「ひぇっ……」
先輩を盾にする明石さん。
「……はぁ。ま、いっか。とりあえずどこ行く?パフェとかどうよ」
甘いもの。パフェとか全然食べないな。男がパフェってどうなんだろうと思って中学入ったくらいから注文しなくなった気がする。
「それで行きましょう。近くのファミレスを探します」
スマホの音声案内みたいな口調で先輩がスマホで検索してるのAIの擬人化に見えてくる。
「近場だとやはり戻ることになりますか。喫茶店なら少し外れたところに人気のところがあるようですね」
「んじゃ、そこにしよ」
今さらだけど、この3人の中に僕が混ざってるの大分目立ってる気がする。
明石さんも明日葉さんも先輩も確実に目立つタイプの美人だ。
特に先輩は銀髪なのでなおさら。
そんな中に女の格好をした男がいるのかなりヤバいのでは?
男四人組がちょうど進行方向にたむろしていた。
先輩達に気づくとわらわらとこちらへと向かってくる。
見た感じチャラついた感じの、いかにもナンパしに街に出てきましたって感じの人たち。
「ねぇ、君たちどこ行くの?」
日焼けしすぎた肌の金髪アニキが先輩に声をかけた。
「喫茶店です」
「へぇ、どこか気になる店ある感じ?」
「……いえ」
「俺らいい店知ってるから案内するよ。紅茶派?コーヒー派?」
慣れてる……。露骨に嫌そうな顔をしてる先輩にも動じてない。
「行き先はすでに決まっていますから」
「なぁんだそうなんだ。いいじゃんいいじゃん、俺らも疲れてたからさ。一緒に行っていいよね?」
「いい店があるのでは?」
「お?そっちに行ってみちゃう?俺らはどっちでもいいけど」
どうあっても一緒に行くっていう意思が強い。めんどくさそう。
そもそも先輩達がナンパされて困ってるのに僕は後ろにいていいのか?
男ならそういう時は。
「やめてください!」
声を上げた。ちゃんと出来た。
先輩達をかばって前に出れた。
ちょっと声が上がったけど、気にしない。
「ちょっ……そんな大声出さないでよー!俺らちょっとお話ししたかっただけじゃん」
そう言って、手を伸ばしてくるチャラ男。
しかしその手は先輩に掴まれて止まった。
「お?怖い顔しないでよー。なに?俺らがこの子に何かしようとしてたように見えた?」
チャラ男はヘラヘラしてる。
先輩の顔は後ろにいて見えない。
「一回だけじゃん。ちょっと話したらさ、誤解も解けると思うんだよ。俺ら別に嫌がらせしたいってわけじゃないんだってマジで。てかお姉さん達だってナンパ待ちじゃないの?」
「それこそが誤解です。私達は貴方達と別行動としたいので。それでは」
そう言って、掴んだ手を払う先輩。
「行きましょう矢部様」
僕を男達から庇うようにして通り過ぎようとして、今度は男達に手を掴まれたらしい。
「……しつこいですよ」
「いや、なんかさ。俺ら話したいだけって言ってんのにさ。その反応はありえねぇって。一応言っとくけど俺らちょっと鍛えてるわけよ。言ってること分かる?」
実力行使しようとしてる?今度は先輩が僕を手で抑えてて前にも出られない。
このままじゃまずい。先輩達が僕のせいで。
「誰か!!」
大声上げることしかできない。
「ちょっと黙れって!!」
ついにチャラ男がキレた。
「明日葉!明石!」
先輩が呼んだ瞬間に二人は動いた。
「「イエスマム!!」」
今まで動いてなかった男達も動き始める。
先輩達は強かった。全部いなしてる?
いなしてる上で一歩も進ませてない。護身術みたいに見えるけど、反撃を少しもしてない。
「おい!キョロ!そいつ捕まえろ!」
チャラ男に言われてあたふたしていた一番後ろの男が、回り込んで僕を捕まえようとする。これは走って逃げた方がいいんだろうか。でも、走ったら先輩達を置いていっちゃうし……。
「お、お嬢ちゃんごめんね……」
目の前で揉み合ってる男達と違って何かこう、すごい弱そう。手を伸ばしてきたのを払っただけでビクッとしてる。
「ティファニーさん!」
明石さんが僕を助けようとして振り返る。もちろん、そんなことをすれば男に捕まる。
そう思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます