入れ子構造、使ってみるのもいいかもよ?

 はい、前回はサブプロットのお話をしましたね。

 複数のサブプロットを用意して組み込むと、物語が立体的になります。メインのプロットだけでは、どうしても一本調子のま直ぐなものになってしまいますからね。別のキャラたちのそれぞれの物語、同じ時間軸で結末に向かう別の道筋を持たせると、とても奥行きや深さが出てくるんですね。

 さて、そんなサブプロットとメインプロットの関係性……この両者のありかた自体が、存在するだけで読者に「やだ、エモい!」「なにこれ、もう無理! 尊過ぎる!」って思われる仕組みがあります。

 今日はそんな魔法のサブプロット術「入れ子構造」を自分なりに語ってみたいと思います。


 皆様、マトリョーシカという玩具を御存知でしょうか。

 ロシアの伝統的な玩具で、人形なんですが……上下に分割され、分離することができます。そして、外側を上下に分解すると、その中に一回り小さな「今までと全く同じ人形」が入っているんですね。で、その小さな人形もまた、上下に分割すると中にさらに小さい人形が入っている。

 こういう状態は「入れ子構造」と言うらしいです。

 IT畑の人は、プログラムのコーディングにおけるネスト、これが入れ子構造の代名詞として有名だと思います。

 要するに「法則性を持って、共通項を共有する外側と内側が連続する」というものですね。


 この入れ子構造を用いると、作品自体にとても強い魅力が付与されます。

 物語における入れ子構造「外側の中に、同じ法則性の内側があって連動している」というのは、読者の感動を換気させやすいギミックなんですね。これは使わない手はありません。オススメなので、効果的に組み込んでいきましょう。

 でも、そんなに難しく考える必要はないんです。


 例えば、自分が書いてるこの作品では、主人公のカイナは「勇者セルヴォの右腕」と呼ばれた格闘家です。しかし、親友でもあるセルヴォを庇った結果、右腕を切り落とされてしまいます。

 右腕と呼ばれた人間が、右腕を失う。

 これが、一番単純な入れ子構造の一例です。

 勇者の右腕という「外側」にまず、読者は触れる。

 そのカイナが自分の右腕を失うという、これが「内側」です。

 右腕というキーワードで繋がっていますが、そこには作品の中で二つの視点が発生して、それぞれに別の意味を持ちつつ連動しているんですね。カイナは自分の右腕を失ったことで、セルヴォの右腕としての立場も失う訳です。


 他にもあります、カイナはセルヴォによって反魔王レジスタンスを追い出された、いわゆる「追放勇者」です。同時に、一緒に追い出されたユウキもまた『追放勇者』ですね。そして、カイナの養母たるサワもまた「エルフの里から追放されたエルフ」です。この物語のテーマの一つである「自分の居場所を探す、探してなければ作る」というものに対して、主人公とヒロイン、その師匠までもが同じ共通点を持っている。これもまた、広義の意味で入れ子構造だと思います。


 入れ子構造のコツは、共通点を持つキャラやイベント、設定を用意すること。そして、絶対に作中で「セナもまたカイナと同じく、いるべき場所を追放された人間だった」みたいに書いてはいけません。他の技法もそうですが、そういうものは読者が自分で小説を読んで感じて、自分で見つけるからこそ感動するのです。

 しれっと用意して、ちらつかせて、あとは自分で気付いてもらいましょう。


 ま、このへんは必ず必要な要素でもなく、ほかにも感動を誘発させる技法は無数に存在します。そして、そうした者の大半は古典の物語の段階で出尽くしてもいます。物語の構成や記述トリック、どんでん返しの技法というのは、これは読書量を増やしていけば沢山学ぶことができます。

 ただぼんやりと読んでも、本はただの本でしかありません。

 自分の力量を上げるには、ある程度意識して読む必要がありますね。

 皆様も是非、世間で名作とされてる作品を読んでみてください。そして、ロジカルに分解した上で、その部品の一つ一つ、一字一句に気を配ってみるといいですよ!

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