死神クラブ

影津

第1話 入会費は無料

 退屈な毎日には色が必要だ。イスラム教の教えを演劇のように声高に教える先生はそう言って、みんなの記憶に少しでも知識を留めようとしているようだ。しかし返って笑えない。本当、退屈で窮屈だ。待ちに待ったチャイムが先生の熱弁を遮り、欠伸をしながら帰路につく。



 「レン! お金ないって言ってたよね? いいこと教えてあげよっか?」



 突然俺に飛びついてきたのは、今どき、おさげ頭という冴えない女子のミキだった。近所に住んでいることもあり情報入手が早い。先週、授業参観を親に報告しなかったため、お小遣いが半分に減らされたことをもう知っているようだ。



 「何だよ」


 ふてくされているように威圧したが、帰ってミキは目を輝かせた。


 「ちょっと来て!」



 有無を言わさず、腕を引っ張っていかれた。冗談じゃない、このまま裏庭に連れ込まれて告白でもされたら恥ずかしくって学校に行けなくなる! ミキは誰彼構わず告白するらしいからな。



 「腕放せよ」


 俺が睨むとミキは悪気も何もなかったように目が垂れるような笑みを浮かべて謝った。


 「ここだけの話だから。人に聞かれたらまずいと思って」


 訝しく思っていると、ミキは周りに誰もいないのか何度も見渡していた。



 「クラブに行ってみない?」


 言葉を失った。学生の分際で大それたものだ。


 「意味分かってんのか?」



 念のために確認すると、ミキは笑顔で頷く。


 「でもちょっと違うの。会員制で、どっちかというとバイトみたいなもんかな。とにかく一回出席するだけでお金がもらえるの」



 お金の話は悪くなかった。俺達の学校はアルバイト禁止だ。かといって、お小遣いだけで何とかできるものでもない。校則は破ったもの勝ちだ。けれど、もう少し具体的な説明はないのか?


 「行くだけでもらえるのか? いくらなんでも上手すぎる話だ」



 「本当だよ。入会費無料だし。月に何回か、友達を紹介すればいいの」


 何だよ、違法じゃねぇか。ミキを適当にあしらったが、今度はまたとんでもないことを言い出した。

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